【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1003話 愛の告白

「俺の女は……誰一人……! 死んでも、やらん!!!」

 俺はついそんなことを叫んでしまった。
 自分のことだけなら我慢できるが、女性が傷付けられそうになるのは見過ごせない。
 それが俺の偽らざる本音だった。

「な、なんだコイツ……!?」

「頭おかしいんじゃねえのか……!?」

「ま、まるでアンデッドみたいだぜ……」

 チンピラたちは完全に引いている。
 ちょっとマズかったかな……。
 魔法で一網打尽にしたり治療魔法で傷を完全に癒やしたりするよりはマシだが……。
 こうして傷だらけで何度も立ち上がるだけでも、それなりに目立ってしまう。

「お、お前……。無理したら死ぬぞ? 死が怖くねぇのか?」

「当然……! 俺の女に手を出されることに比べれば、怖いものなどありません……!」

 俺は真剣な口調で答えた。
 実際、この傷のまま戦闘を継続してボコボコにされれば、命に関わってくるだろう。
 だが俺に恐怖心はない。
 何も、俺が特別に勇敢なわけではない。

(いざとなれば治療魔法や闘気があるからな……)

 本当にヤバいとなったら、治療魔法や闘気を活用すれば死ぬことはない。
 言ってみれば、現代日本におけるフルマラソンやサウナ、スカイダイビングのような感覚だ。

 フルマラソン大会で足が動かなくなれば、リタイアして何らかの救済措置を受ければいい。
 サウナで体が温まり過ぎたら、部屋から出て水を飲めばいい。
 スカイダイビングで地面が近づいてきたら、パラシュートを開けばいい。

 俺にとって、格下のチンピラからボコボコにされるというイベントは、昼下がりのコーヒーブレイクと何ら変わらない平穏なものだ。
 ……というのは言い過ぎにしても、大げさに怖がるようなものでもない。

「は、はは……。こいつ、イカれてやがる……」

「普通じゃない……。ヤバいぜ……」

 チンピラたちが顔を見合わせてヒソヒソ話をしている。
 このまま乗り切れそうか……?
 少し余裕ができた俺は、サーニャちゃんに視線を向ける。

「……」

 彼女は地面にペタンと座り込み、呆然とこちらを見ていた。
 チンピラたちに殴られたり蹴られたりしていた俺が、突然意味不明なことを叫びながら立ち上がったのだ。
 驚くのも当然かもしれない。
 そして、俺と目が合った。

「あ、あの……にゃぁは……うぅ……」

「どうされましたか?」

「にゃぁは……お客様の恋人になった覚えなんてにゃいのですにゃぁ……」

 …………あぁっ!!
 そういえば、そうだった。
 サーニャちゃんと俺は、特に深い仲ではない。
 むしろ浅いと言っていいだろう。

 昨日、彼女が営む『猫のゆりかご亭』に泊まらせてもらっただけの間柄だ。
 出会ってからまだ2日目である。
 まぁ、いろいろあって俺のマグナムを見られたこともあるし、ある意味では深い仲と言えなくもないが……。
 少なくとも、『俺の女』と表現するのは時期尚早だった。

「すみません。でも、それが俺の気持ちですから。さっちゃんさんのことは、絶対に守ります」

「にゃ、にゃぁは別に……。ただの宿屋の娘なのにゃぁ……。お客様に守ってもらう義理はないですにゃぁ……」

 サーニャちゃんは遠慮がちに言う。
 しかし、その瞳には期待の色が見て取れた。

「いえ、俺は男ですから」

「ええっと……?」

「男たる者、愛する女を守るために全力を尽くすのは当たり前のことなんです」

「にゃ、にゃにゃ……。それほどにゃぁのことを……?」

「はい。俺はあなたのことが好きです」

 俺はド直球で告げた。
 ここで下手な小細工をしても仕方がない。

「にゃぁ……。にゃぁは……」

 サーニャちゃんは顔を真っ赤にしながら俯いてしまう。
 彼女の心の天秤が大きく揺れ動いているのが分かった。
 よしっ!
 もうひと押しだ!

「さっちゃんさん!」

 俺は彼女の名を呼んで、しっかりと目を合わせる。

「はっ! はいですにゃっ!!」

「俺はあなたを愛しています! どうか、俺と付き合ってください!!」

「つ、つきあう……!? で、でも……にゃぁには借金が……」

「俺が払います!」

 俺は即座にそう答える。
 サーニャちゃんと付き合えるなら、多少の金など問題ではない。
 形式上、女性を金で買うようになってしまうのは申し訳ないが……。
 実態は異なるので大丈夫だ。

 たまたま好きになった女性に借金があった。
 それだけのことである。
 そして、好きになった女性の借金を肩代わりするのは、男として当然のことだ。
 何も問題ない。

 ――ん?
 いや、問題ないのか?
 何か大切なことを忘れているような……。

「おうおうっ! 俺たちを前に、随分と舐めた真似してくれるじゃねぇか!!」

「ふざけやがって! 死ぬまでボコボコにされてぇか!!」

「借金を肩代わりだと!? 払えるもんなら払ってみやがれってんだ!!」

 チンピラたちが凄んでくる。
 そうだ、彼らのことを忘れていた。
 俺のゾンビっぷりに怯んでいた彼らだが、俺とサーニャちゃんのやり取りを見て怒りが再燃しているようだ。
 どうしたらここを上手く乗り切れるだろうか――?

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