【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

993話 ダークガーデン

 俺は影魔法『影潜り』を使用し、倉庫への潜入に成功した。
 だが、自分から名乗り出る前に、影に潜んでいる俺の存在に気付いた者がいたのだ。

『そこに何者かが隠れていやがるぜ。おそらくは影魔法だろう。相当な練度だが、俺の目は誤魔化せねぇ』

 リーダー格の男がそう言う。
 俺の見立てが確かであれば、ここはネルエラ陛下の命を受けた秘密造船所だ。
 造船作業者や事務員、現場監督などに加えて、警備兵も配置されているのだろう。
 その警備兵のリーダー格ともなれば、俺の影魔法を見抜けるわけか。

『誰だ!? そこに隠れているのは!?』

『おい、出てこい!』

『姿を見せろ!』

 倉庫内が一気に騒がしくなる。
 リーダー格の男を合わせて、警備兵は10人といったところか。
 普通に考えて、多勢に無勢だな。

 だが、俺も無策というわけではない。
 こういう時に備えて、事前に考えておいたセリフがあるのだ。
 俺はゆっくりと影から姿を現す。
 倉庫内にどよめきが起こる。

「なっ……何だこいつは……!?」

「黒い服……? いや、マントか……?」

「怪しい仮面を付けやがって……。こいつ……もしかして暗殺者か……?」

 影から出たことにより、彼らの声がよりはっきりと聞こえるようになった。
 俺が現れたのは、彼らのちょうど真ん中あたりの位置だ。
 影魔法と相性のいい装備をあらかじめ着ておいたのだが、それが少し怪しまれてしまっているようだな。
 まぁ、全身黒ずくめで仮面まで付けているのだから仕方ないか。
 全員の視線が集中する中、俺は堂々と宣言する。

「我らはダークガーデン。闇に潜み――闇を狩る者」

 決まった――そう思った瞬間、倉庫内の空気が凍り付くのが分かった。
 どうやらスベってしまったようだ……。

「……ぷっ!」

 誰かが吹き出したことで、場が少し和む。

「おいおい! どんな侵入者かと思えば、ただのバカかよ!」

「一人しかいねぇのに『我ら』だってよ! 面白れぇじゃねぇか! なぁ?」

 ゲラゲラと笑う男の言葉に同調するように、周りの者たちも笑う。
 そんな中、一人だけ冷静な男が口を開いた。

「ふむ……お前、何者だ? それほどの影魔法の使い手なら国中に名を轟かせていても不思議じゃねぇが……。俺はお前の正体に心当たりがねぇ」

 先ほどのリーダー格の男だ。
 彼の鋭い眼光に射貫かれると、俺ですら緊張してしまう。
 まぁ、ここで気圧されるわけにもいかない。
 俺は仮面の下でポーカーフェイスを保ちつつ、落ち着いた声で答える。

「ふっ……。我の名は、まだ世に知られていないだけのこと……。いずれは世界最強に至る者……」

「ほう? 言うじゃねぇか。だが、それなら余計に俺たちのことを知られてただで帰すわけにはいかねぇな。ボコボコにしてやるから、1か月ぐらい牢屋で眠っときな!」

 リーダー格がそう言って、警棒のような武器を構える。
 それに合わせて、周りの連中も一斉に戦闘態勢に入った。

 一見すると、喧嘩っ早くてチンピラ風の集団に見えるかもしれない。
 だが、彼らは決して雑魚ではないし、頭に血が上っているわけでもなさそうだ。
 彼らは秘密の造船所を守るために雇われたプロであり、こうして目撃者の口を封じる役目を担っているのだ。

 しかし一方で、問答無用で殺したりはしない。
 口封じという意味では殺すのが最も確実なのだが、それをしないのは何故か?
 それはもちろん、この造船所がサザリアナ王国の事業として稼働しているからに他ならない。
 善政を敷いているネルエラ陛下は、国家事業のために民を無闇に殺したりはしないのだ。
 まぁ、ボコボコにして1か月勾留するぐらいはするつもりのようだが……。

 俺がヤマト連邦に潜入して指令を達成すれば、サザリアナ王国の安定した未来に繋がる。
 そのためには、『侵入者をボコボコにして1か月勾留する』ぐらいのことは許容範囲内なのだろう。
 1か月が経過する頃には、俺はすでにヤマト連邦に向けて旅立っているはず。
 そのタイミングになれば、別に造船所のことは秘密でも何でもなくなるというわけだ。

「己の器を知らぬ者たちよ……。かかってくるがいい……!」

 俺はそう言って拳を構える。
 ここはもう倉庫の内部だ。
 マフィアの目が届かないので、このタイミングで名乗ってもいい。
 俺がハイブリッジ男爵だということを伝えれば、彼らの態度も変わることだろう。

 そうすれば、無駄な戦いを避けることができるはずだ。
 しかし、ここで一つ彼らの実力を確かめたいという気持ちもあった。

「行くぞ! お前ら!」

「「おおおおぉっ!!」」

 リーダー格の男が号令をかけると、部下たちが一斉に襲いかかってきた。
 こうして、『タカシvs造船所の警備兵10人』の戦いが始まったのだった。

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