【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

983話 猫のゆりかご亭

 オルフェスに到着した俺、モニカ、ニムの3人は、街の様子を見ながら今後について相談していた。

「まずは宿の確保かな。それから夕ご飯でも食べて、今日はゆっくりしよう」

「了解」

「わ、分かりました!」

 俺の言葉に、モニカとニムがそれぞれ頷く。
 特に反対はないようだ。
 俺たちは夕暮れ時の街を歩き、良さそうな宿屋を探す。

「どこがいいだろう? 大通りのしっかりしていそうな宿屋にするか、もしくは裏通りにある寂れたところか……」

「うーん、どっちもどっちな気がするなぁ……」

「悩みどころですね……」

 これがお忍びでなければ、迷わず高級な宿屋を選ぶところである。
 せっかく粗末な服装をしているのに、高級宿屋に泊まってしまうと変に目立ってしまうリスクがあるからだ。

 だが、裏通りにある宿屋は、治安面で不安が残る。
 チンピラに襲われるかもしれない。
 普段ならば適当に撃退するだけだが、粗末な服装をしている3人組が高い戦闘能力を示せば目立ってしまうだろう。

(金払いが良いことで目立つか、戦闘で目立つか。どっちがマシなんだろうな……)

 3人でああでもないこうでもないと言い合いながら歩く。
 そのときだった。

「あ! たっちゃん! あそこに良さげなお店があるよ!!」

 唐突に声を上げたモニカが指差したのは、古い木造の建物だった。
 看板には『猫のゆりかご亭』と書かれている。

「へぇ……。悪くないんじゃないか?」

 俺は頷きつつ言う。
 パッと見た限り、怪しい雰囲気はない。
 立地は大通りから少し離れているものの、建物の作りや掃除などはしっかりと行き届いている様子だ。
 高級宿と安宿の中間といったところか。
 これなら安心して泊まれそうだ。

「ここにするか」

「そ、そうですね……」

 ニムも同意してくれる。
 こうして、俺たちの最初の宿泊先は決まった。
 宿屋『猫のゆりかご亭』に歩いていく。

「いらっしゃいませですにゃ!」

 建物に入ると、愛想の良い女の子の声が出迎えてくれた。
 13歳くらいに見える少女だ。
 猫獣人らしく、頭に耳がついている。
 可愛らしい容姿をしており、将来はかなり美人になりそうな子だ。
 彼女はこちらを見て一瞬驚いたような表情を浮かべたあと、すぐに営業スマイルに切り替える。
 そして元気よく言った。

「お客さん! お泊まりですかにゃ!?」

 うん……。
 丁寧な接客だが、語尾のせいで台無しだな。
 まぁ、これはこれで可愛いのだが。

 それにしても、こんな子が1人で切り盛りしているのか?
 それとも親御さんが経営していて、お手伝い的なことをさせているのだろうか?
 なんにせよ、やや古めかしいが悪くなさそうなお店だな……。

「……えっと、3人なんだけど、部屋は空いていますか?」

 13歳ぐらいの子どもが相手なので、いつもの口調に戻すか少しだけ悩んだ。
 しかし、ここは敢えて丁寧な口調のままにしておいた。
 一度戻すと、他の人相手にも普段の口調が出そうだからな。
 ずっと丁寧な口調を維持することで、少しでもボロが出る可能性を下げておきたい。

「もちろんですにゃ! 1名様1部屋、1泊銀貨1枚になりますにゃん」

 安いな……。
 いやしかし、1人あたり1部屋が標準なのか?
 ビジネスホテルみたいな感じだ。
 あるいは、もっと高い価格帯の宿屋もあるのかもしれない。

「もっと大きい部屋はありますか? できるだけ同じ部屋に泊まりたいのですが」

 俺がそう言うと、少女は首を傾げたあとにハッとした様子で尋ねてくる。

「もしかして、新婚さんですにゃ!? だから家族向けの部屋をご希望ですかにゃ??」

 なるほど。
 そういう発想になるのか。
 確かに結婚した夫婦であれば、同室に泊まることのが普通だろう。

「まぁ、そんなところです」

「分かりましたにゃ! 2人用の部屋を1つと、1人用の部屋を1つ用意できますにゃ!」

 猫少女が元気よくそう言う。
 ふむ……。
 さっきの1人1部屋よりは希望に近づいているのだが、まだ少し足りないな。

「えっと……」

「まだ何かありますのにゃ?」

「3人で同じ部屋を使いたいんだけど、大丈夫ですか?」

 俺はダメ元で尋ねてみる。
 猫少女は首を傾げていたが、やがてハッと気づいたように頷いた。

「は、ハーレムってやつですにゃ!? え、エッチぃのですにゃあ~~!!!」

 顔を真っ赤にしながら叫ぶ少女。
 予想外の反応だ。
 とても可愛いのだが、客商売としてそれは大丈夫なのか……?
 そんな心配をよそに、少女の叫び声を聞いた他の客たちが集まってくる。

「おい聞いたか? あの男、あの子たちでハーレムを作ってるんだってよ!」

「おお! なんて羨ましい野郎だ……!」

「俺もあんな美少女たちにモテてみたいぜ!」

 彼らは口々にそう言って騒いでいた。
 どうやら、モニカとニムの美少女っぷりはこの街でも通用するらしい。
 元々は、ラーグの街に住んでいたただの平民である。
 当時から磨けば光る素養は持っていたものの、一目見ただけの者から美少女認定される程ではなかった。

 だが、今は違う。
 適度な冒険者活動、栄養満点の食事、俺やサリエなどによる万全の治療魔法、リンドウ温泉の効能などなどによって、彼女たちの魅力はどんどん増しているのだ。

「参ったな……。とりあえず、3人部屋に案内してもらえますか?」

 思わぬ注目を浴びてしまった俺は、苦笑しつつそう言ったのだった。

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