【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
978話 旅立ち
「いい天気だ。絶好の旅立ち日和だな」
俺は青空を眺めながら呟く。
空は快晴で雲一つなく、風もほとんど吹いていないため実に快適だ。
気温も高いのだが、今日は湿度が低いようでそれほど不快感もない。
これなら長時間馬車に揺られても疲れにくいだろう。
いや、むしろ気持ちいいくらいかもしれない。
俺はいそいそと馬車に乗り込む。
「そうだね。オルフェス――いや、とりあえずはゾルフ砦か。それまでの道中に雨とか降らなきゃいいけど」
そう言いながら右隣の席に座ったのは、妻のモニカだ。
彼女もまた空を眺めており、その表情には若干の不安が見える。
今回の旅の最終目的地は、鎖国国家ヤマト連邦だ。
しかしそれには海を渡る必要がある上、異国船打払令への警戒もある。
そのため、馬車による移動においてはオルフェスが最終目的地になるのだ。
オルフェスは、ラーグから見て東の方向にあり、サザリアナ王国全体から見れば南東部に位置する。
途中でゾルフ砦には寄る予定だが、基本的にはひたすらに東方向に向かうだけの旅路となるだろう。
「え、えへへ……。わたしは楽しみです。タカシさ……いえ、兄さんと長くいっしょにいれるのは久しぶりですし……」
俺の左隣りに座るのは、同じく俺の妻であるニムだ。
今回のオルフェス行きに際して、俺と同行するのはこの2人だけである。
ヤマト連邦への潜入は極秘任務であるため、たとえ一般人相手だろうと情報が漏れることは避けたい。
そのため、移動は最小限の人数で行うのだ。
オルフェスに到着して機密性の高い部屋を確保できれば、俺の空間魔法でみんなを連れてこれる。
その部屋から隠密小型船までコッソリと移動すれば、誰かに勘付かれるリスクを最小限にすることができるだろう。
「久しぶりにゆっくりできそうだ。ここ最近はずっと忙しかったからなぁ」
俺はそう呟く。
王都でもそれなりに忙しかったし、ラーグに帰還した後も忙しくしていた。
ヤマト連邦に向かう前に、できる限りの諸用を済ませてしまいたかったからだ。
聖女リッカとの激戦後にはリンドウ温泉旅館でゆっくりしたとはいえ、あれはわずか1日だけの話だしな。
「ねぇ、たっちゃん。知ってる?」
「ん?」
突然モニカに話しかけられたので彼女の方を見ると、彼女はジト目でこちらを睨んでいた。
なんだ?
何か機嫌を損ねるようなことをしただろうか……?
心当たりが全くないぞ……!?
俺が戸惑っていると、モニカは言葉を続ける。
「兎獣人って、寂しがり屋で甘えん坊なんだよ? 放っておかれると寂しくて死んじゃうかも!」
「え? それは偏見と迷信じゃ――いえ、何でもありません……」
思わず反論しかけたが、モニカの視線を受けてすぐに撤回する。
彼女が寂しかったのは本当なのだろう。
俺の妻は、今や8人も存在する。
愛人を含めれば20人を超える勢いなのだ。
必然的に、1人あたりにかける時間というものが少なくなってくる。
俺には冒険者としての稼ぎと男爵としての収入があるので、彼女や子どもらを養うことに関しては何の問題もない。
ただ、それでも寂しい思いをさせていることに変わりはないのだろう。
「……そうだな。ごめんよ、マイハニー」
「ふふっ。わかればいいの」
そう言って、嬉しそうに笑うモニカ。
やはり彼女には笑顔が似合う。
そんなやり取りをしていると、左隣からも声がかかる。
「あ、あの! わ、わたしも構ってほしい……です……!」
ニムがもじもじしながら言う。
その姿はとても可愛らしい。
彼女も、立場としてはモニカと同じだからな。
1人だけ除け者にされるのは嫌なんだろう。
違いがあるとすれば、モニカは兎獣人で、ニムは犬獣人という点か。
「よしよし。お前も可愛いな、マイシスターよ」
俺はニムの頭を優しく撫でる。
すると、彼女は気持ち良さそうに目を細めた。
「えへへへ……」
そんな彼女の様子を微笑ましく眺めていると、今度は前方の御者席から声をかけられた。
「おいおい、兄ちゃん! ずいぶんと見せつけてくれるじゃねぇかよ! この色男めっ!!」
「そんなんじゃありませんよ。妻と妹、どちらも大切な存在なんです」
俺は苦笑しながら答える。
ラーグを出発した馬車を操る御者の男性。
彼は、俺の配下でもなければ知人でもない。
一般人に極秘作戦を気取られないために、無関係の者に御者を依頼したのだ。
そして当然、俺たちの名前や身分、関係性も偽っている。
俺とモニカが平民の夫婦であり、ニムは俺の妹という設定だ。
俺はモニカを”マイハニー”と呼び、ニムを”マイシスター”と呼ぶ。
モニカは俺のことを”たっちゃん”と呼び、ニムは俺のことを”兄さん”と呼ぶ。
さらには、剣や防具類を取り外し、ごくごく標準的な服を着用している。
同時に帽子やフード、メガネなども活用しているため、領主としての俺や領主夫人としてのモニカたちを知っている者でも気づけないだろう。
パッと見では、ただの旅人にしか見えないはずだ。
「ったくよぉ! 羨ましい限りだぜ! 俺なんて嫁さんの尻に敷かれてばっかだからなぁ!」
「ははっ。ご愁傷様ですね」
俺は苦笑しつつ男性の言葉に応じる。
男性の妻がどのような女性なのかは気になるところだが、あえて尋ねないことにした。
下手に興味を持ってしまうことで藪蛇になっても困るからな。
(それにしても、改めて俺たちの平民っぷりには感嘆させられるな……)
俺、モニカ、ニム。
ラーグからオルフェスに向かうにあたり、最も無難に偽装できるのは間違いなくこの3人だ。
ミティ、ユナ、マリアは、種族的にこのあたりではやや珍しい。
アイリスは中央大陸の出身で、よく見れば顔立ちの雰囲気が少しだけ異なる。
サリエとリーゼロッテは生まれながらの貴族であり、隠しきれない品がある。
蓮華はもってのほかだな。
金髪碧眼のエルフであり、同時に和服を着た侍でもある彼女は立っているだけでとても目立つ。
強いて言えば、レインも候補には残っていたか。
だが、彼女は空間魔法使いだ。
いざというときに、ラーグの留守番組と俺たち3人を繋ぐ要となり得る。
そういうわけで、ラーグからオルフェスまでの馬車旅はこのメンバーを選出したわけだ。
「実にいい天気だ。素晴らしい未来が俺たちを待っている!」
「ふふ。私はこの時間がずっと続けばいいと思うけどね」
「は、はい! 兄さんや姉さんといっしょなら、どんな場所でも楽しいですよ!」
「おっと。それもそうだな! 旅路を満喫しよう!」
俺たちは笑い合う。
こうして、俺たちは他愛のない雑談などを交えながら馬車に揺られていくのだった。
俺は青空を眺めながら呟く。
空は快晴で雲一つなく、風もほとんど吹いていないため実に快適だ。
気温も高いのだが、今日は湿度が低いようでそれほど不快感もない。
これなら長時間馬車に揺られても疲れにくいだろう。
いや、むしろ気持ちいいくらいかもしれない。
俺はいそいそと馬車に乗り込む。
「そうだね。オルフェス――いや、とりあえずはゾルフ砦か。それまでの道中に雨とか降らなきゃいいけど」
そう言いながら右隣の席に座ったのは、妻のモニカだ。
彼女もまた空を眺めており、その表情には若干の不安が見える。
今回の旅の最終目的地は、鎖国国家ヤマト連邦だ。
しかしそれには海を渡る必要がある上、異国船打払令への警戒もある。
そのため、馬車による移動においてはオルフェスが最終目的地になるのだ。
オルフェスは、ラーグから見て東の方向にあり、サザリアナ王国全体から見れば南東部に位置する。
途中でゾルフ砦には寄る予定だが、基本的にはひたすらに東方向に向かうだけの旅路となるだろう。
「え、えへへ……。わたしは楽しみです。タカシさ……いえ、兄さんと長くいっしょにいれるのは久しぶりですし……」
俺の左隣りに座るのは、同じく俺の妻であるニムだ。
今回のオルフェス行きに際して、俺と同行するのはこの2人だけである。
ヤマト連邦への潜入は極秘任務であるため、たとえ一般人相手だろうと情報が漏れることは避けたい。
そのため、移動は最小限の人数で行うのだ。
オルフェスに到着して機密性の高い部屋を確保できれば、俺の空間魔法でみんなを連れてこれる。
その部屋から隠密小型船までコッソリと移動すれば、誰かに勘付かれるリスクを最小限にすることができるだろう。
「久しぶりにゆっくりできそうだ。ここ最近はずっと忙しかったからなぁ」
俺はそう呟く。
王都でもそれなりに忙しかったし、ラーグに帰還した後も忙しくしていた。
ヤマト連邦に向かう前に、できる限りの諸用を済ませてしまいたかったからだ。
聖女リッカとの激戦後にはリンドウ温泉旅館でゆっくりしたとはいえ、あれはわずか1日だけの話だしな。
「ねぇ、たっちゃん。知ってる?」
「ん?」
突然モニカに話しかけられたので彼女の方を見ると、彼女はジト目でこちらを睨んでいた。
なんだ?
何か機嫌を損ねるようなことをしただろうか……?
心当たりが全くないぞ……!?
俺が戸惑っていると、モニカは言葉を続ける。
「兎獣人って、寂しがり屋で甘えん坊なんだよ? 放っておかれると寂しくて死んじゃうかも!」
「え? それは偏見と迷信じゃ――いえ、何でもありません……」
思わず反論しかけたが、モニカの視線を受けてすぐに撤回する。
彼女が寂しかったのは本当なのだろう。
俺の妻は、今や8人も存在する。
愛人を含めれば20人を超える勢いなのだ。
必然的に、1人あたりにかける時間というものが少なくなってくる。
俺には冒険者としての稼ぎと男爵としての収入があるので、彼女や子どもらを養うことに関しては何の問題もない。
ただ、それでも寂しい思いをさせていることに変わりはないのだろう。
「……そうだな。ごめんよ、マイハニー」
「ふふっ。わかればいいの」
そう言って、嬉しそうに笑うモニカ。
やはり彼女には笑顔が似合う。
そんなやり取りをしていると、左隣からも声がかかる。
「あ、あの! わ、わたしも構ってほしい……です……!」
ニムがもじもじしながら言う。
その姿はとても可愛らしい。
彼女も、立場としてはモニカと同じだからな。
1人だけ除け者にされるのは嫌なんだろう。
違いがあるとすれば、モニカは兎獣人で、ニムは犬獣人という点か。
「よしよし。お前も可愛いな、マイシスターよ」
俺はニムの頭を優しく撫でる。
すると、彼女は気持ち良さそうに目を細めた。
「えへへへ……」
そんな彼女の様子を微笑ましく眺めていると、今度は前方の御者席から声をかけられた。
「おいおい、兄ちゃん! ずいぶんと見せつけてくれるじゃねぇかよ! この色男めっ!!」
「そんなんじゃありませんよ。妻と妹、どちらも大切な存在なんです」
俺は苦笑しながら答える。
ラーグを出発した馬車を操る御者の男性。
彼は、俺の配下でもなければ知人でもない。
一般人に極秘作戦を気取られないために、無関係の者に御者を依頼したのだ。
そして当然、俺たちの名前や身分、関係性も偽っている。
俺とモニカが平民の夫婦であり、ニムは俺の妹という設定だ。
俺はモニカを”マイハニー”と呼び、ニムを”マイシスター”と呼ぶ。
モニカは俺のことを”たっちゃん”と呼び、ニムは俺のことを”兄さん”と呼ぶ。
さらには、剣や防具類を取り外し、ごくごく標準的な服を着用している。
同時に帽子やフード、メガネなども活用しているため、領主としての俺や領主夫人としてのモニカたちを知っている者でも気づけないだろう。
パッと見では、ただの旅人にしか見えないはずだ。
「ったくよぉ! 羨ましい限りだぜ! 俺なんて嫁さんの尻に敷かれてばっかだからなぁ!」
「ははっ。ご愁傷様ですね」
俺は苦笑しつつ男性の言葉に応じる。
男性の妻がどのような女性なのかは気になるところだが、あえて尋ねないことにした。
下手に興味を持ってしまうことで藪蛇になっても困るからな。
(それにしても、改めて俺たちの平民っぷりには感嘆させられるな……)
俺、モニカ、ニム。
ラーグからオルフェスに向かうにあたり、最も無難に偽装できるのは間違いなくこの3人だ。
ミティ、ユナ、マリアは、種族的にこのあたりではやや珍しい。
アイリスは中央大陸の出身で、よく見れば顔立ちの雰囲気が少しだけ異なる。
サリエとリーゼロッテは生まれながらの貴族であり、隠しきれない品がある。
蓮華はもってのほかだな。
金髪碧眼のエルフであり、同時に和服を着た侍でもある彼女は立っているだけでとても目立つ。
強いて言えば、レインも候補には残っていたか。
だが、彼女は空間魔法使いだ。
いざというときに、ラーグの留守番組と俺たち3人を繋ぐ要となり得る。
そういうわけで、ラーグからオルフェスまでの馬車旅はこのメンバーを選出したわけだ。
「実にいい天気だ。素晴らしい未来が俺たちを待っている!」
「ふふ。私はこの時間がずっと続けばいいと思うけどね」
「は、はい! 兄さんや姉さんといっしょなら、どんな場所でも楽しいですよ!」
「おっと。それもそうだな! 旅路を満喫しよう!」
俺たちは笑い合う。
こうして、俺たちは他愛のない雑談などを交えながら馬車に揺られていくのだった。
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