【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

976話 逃亡するリッカ

 僕様ちゃんは、赤髪女の大魔法をまともに受けてしまったです。

(くっ……! 凄まじい熱量です!!)

 聖気をフル出力にしてなんとか防ぎます。
 ギリギリでしのぎきれたものの、勢いまでは殺せませんでした。
 僕様ちゃんは森の上空を吹き飛んでいきます。
 その間に状況を整理していくです。

「ちっ! メイド剣士は空間魔法使いだったですか。どおりで……」

 剣術同士で戦っていたときから違和感はあったです。
 単純な速さとはまた違った鋭さがあったですし、剣を弾き飛ばしたはずなのにすぐまた別の剣を持っていたりしたです。
 それぞれ何らかの空間魔法を使っていたと考えれば納得できるです。
 しかし――

「『ワープ』は空間魔法の中でも上級クラス……。それを戦闘中に、しかも何度も使えるなんて規格外すぎるです……!」

 剣術自体は上の下ぐらいだったので舐めていたですが、本業が空間魔法使いであるならば話は別です。
 あんなの、国家のお抱えになれるレベルです。
 なのに、ミリオンズの4番手以下に甘んじているなんて……。

 彼女が4番手なら、ギリギリあり得るです?
 いや、彼女は赤髪女のことを『ユナ様』と呼んでいたですし、他のメンバーにも一歩引いたような態度を見せていたです。
 しかも、着ているのはメイド服でした。
 それらから考えると――

「もしかしてあの女……ミリオンズの中で最も新入りだったりするですかね?」

 考えるだけでも恐ろしいことですが、彼女の態度や口ぶりから察するに可能性は高いです。
 それに、他のメンバーも彼女に負けず劣らず凄まじい実力でした。

 和服剣士の神速剣技。
 金髪女の雷速からの雷撃。
 犬耳少女の土魔法。
 無邪気な子どもの重力魔法。
 青髪女の水魔法。
 大人しそうな貴族女の治療魔法。
 そして、赤髪女のドラゴン系の纏装術……。

「あんな奴ら、相手してられるかです。そもそも、僕様ちゃんはこんな国にもう用はなかったのです」

 僕様ちゃんは上空を吹き飛ばされながら、そう呟きます。
 これは決して負け惜しみじゃないですよ?
 タカシ=ハイブリッジを主とする諸々の神託内容は達成済みですし、本当に用はないです。

「攻撃の余波でこうして吹き飛ばされていることも、ある意味では都合が良かったです。最初の熱さえ防げば、僕様ちゃんにとっては便利な移動術みたいなもんです。聖気を使えば、着地時のダメージも問題ありません。――ん? ああ、しかしちょうど”これ”があったですね」

 僕様ちゃんはアイテムバッグからあるものを取り出します。
 それは、タカシ=ハイブリッジからプレゼントされた『魔法の絨毯』です。
 魔石を使えば、自分の魔力を消費せずに空中を移動できる優れものです。

「よっと。ふふ、このまま空を飛んで帰ることにするです」

 魔法の絨毯を広げて乗り込みます。
 僕様ちゃんの身体能力をもってすれば、吹き飛ばされた体勢からでもこの程度は造作もないことなのですよ!
 そうして意気揚々と移動を続けます。

「ふん……! ミリオンズの下っ端どもめ……。いつかギャフンと言わしてやるですから覚悟しておくといいです!」

 誰に言うでもなく大声で叫んでやるです。
 大魔法で吹き飛ばされた上、魔法の絨毯で移動中の僕様ちゃんを捕捉できる者などいるはずないです。
 そう安心して、油断していたのがマズかったです。

「えへへっ! マリアのこと、呼んだ?」

 突然の声に驚き振り向くと、そこには一人の少女がいました。
 その少女は無邪気にニッコリと笑っています。

「聞き捨てならないことを言ったね……。やっぱりちゃんと捕まえないとダメみたいかな?」

 さらに、金髪雷女まで現れました。
 こっちも微笑んでいますが、目は笑っていません。

「なっ!? ハーピィ……? それにこっちは『虚空飛翔』!?」

 僕様ちゃんは戦慄します。
 ハーピィという種族の存在自体は知っていましたが、実際に目にしたのは初めてだったからです。
 というか、普通はこんなところにいないはずです。

 それに、『虚空飛翔』の使い手だって珍しいです。
 いや、聖女たる僕様ちゃんには使い手の知り合いだっているですが……。
 あの場から吹き飛んでいった僕様ちゃんに追いつけるほどの使い手なんて、さすがにほとんどいないはずです
 そんな僕の動揺をよそに、二人は微笑み続けます。

「ふふっ。ちゃんと反省してもらわないとね?」

「えへへっ! はんせーが終わったらマリアと遊んでねっ!」

 そう言って、二人は僕様ちゃんに近づいてきます。
 ヤバい。
 これはヤバいです。
 僕様ちゃんの本能が全力で警鐘を鳴らしているです。

「ひ、ひいぃっ! こうなったら、僕様ちゃんの魔力も使うです! スピードアップぅうう!!」

 瞬間――世界が加速しました。
 魔法の絨毯に組み込まれた魔石に加えて、僕様ちゃん自身の魔力も使ったです。
 こうすれば、いかにあの二人であろうと追いつけないはずです!

「ふ、ふふふっ! あばよっ! です!!」

 僕様ちゃんはグイグイと加速し、その場を去ります。
 そしてそのままの勢いでハイブリッジ領から抜け出し――ミネア聖国への帰途についたのでした。

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