【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

973話 ドラちゃん

 僕様ちゃんはミリオンズの下っ端どもと戦っているです。
 纏装術を発動したおかげで、赤髪の女性との剣戟では優位に戦えました。
 このまま押し切ってやろうと思った矢先、上空に謎の生物が出現したです。
 それはまるで空飛ぶクジラのようでしたが――威圧感が桁違いでした。

「ゴアァァアアアッ!!」

 耳をつんざくような咆哮を放ちます。
 ビリビリとした衝撃が周囲に走ります。
 その衝撃で吹き飛ばされそうになった僕様ちゃんですが、なんとか踏ん張って耐えきります。
 そして、改めてその怪物を見やります。

「こ、これはまさか……ドラゴン……!?」

 僕様ちゃんは驚愕しました。
 空を飛ぶ巨大生物といえば、真っ先に思い浮かぶのが『竜』なのです。
 もっとも、その存在は非常にレア。
 一般民衆からすれば、空想上の存在に等しいでしょう。

 聖女たる僕様ちゃんですら、目撃したのは数度……。
 実際に戦った経験は皆無です。
 その巨体から放たれる圧倒的な存在感と迫力は、まさに伝説の通りです。

「ふふん。さすがは聖女リッカね? ドラゴンを見ても腰を抜かさないなんて驚いたわ」

 僕の背後では、赤髪の女性が笑っています。
 彼女の口ぶりや態度からして、この事態は想定外ではないようです。
 つまりは計画的犯行ということでしょうか?
 このタイミングで出現することも計算のうちだったのでしょうか?

 ……いいえ、そんなわけないです。
 ドラゴンの行動を人が予測するなんて、不可能に近いのです。
 ウェンティア王国のテイマーやファルテ帝国の竜騎士でも、このような芸当はできないはず。

「いったいどういうことなのです……? なんでこんなところにドラゴンがいるですか?」

「さぁ? どうしてかしらねぇ?」

 ニヤニヤと笑う赤髪の女。
 こんなやり取りをしている間に、ドラゴンは高度を下げています。
 このままでは危険です。

「おい、お前たち! ここは休戦するです!」

「はぁ? 突然何を言い出すのよ?」

「いいから早く逃げるですよ! あんなものに襲われたら一巻の終わりです!」

「ああ……。それなら、私たちは心配ないわね」

 赤髪の女が余裕たっぷりに言います。
 どういうことかと問おうとしたとき――
 タッ!
 彼女が軽快に跳躍し、ドラゴンの背へと飛び乗りました。

「ちょっと! 何をしているですか!? 気難しいドラゴンにそんなことをしたら……」

 慌てて叫ぶ僕様ちゃん。
 しかし彼女はこちらを一瞥した後――

「ふふん。問題ないわ。このファイアードラゴンの『ドラちゃん』は、私たちの仲間なんだから!」

 そう言いながら、笑顔で手を振ってくるのでした。

「な、なんですとぉぉおおおお!?」

 僕様ちゃんは思わず絶叫します。
 彼女から『ドラちゃん』と呼ばれたドラゴンが、こちらに向けて口を開きます。

「ちょっ……!」

 さすがにヤバいと思った僕様ちゃんは、急いでその場から離脱しようとしますが――

「ゴアアアァッ!!!」

 ドガァアアアン!!
 ドラゴンの放った火炎ブレスが地面に直撃し、爆発を引き起こします。
 その爆風によって、僕様ちゃんは吹き飛んでしまいます。
 ゴロゴロと地面を転がり、やがて止まる頃には全身傷だらけになっていました。

「くっ……! 信じがたいですが、確かにドラゴンを手懐けているようですね。しかし、ブレスの威力は大したことなかったです!」

 僕様ちゃんはそう叫びます。
 半分は強がりですが、半分は真実でもあります。
 ドラゴンのブレスといえば、一流の魔法使い何人分もの破壊力があるはずです。
 それを考えれば、この程度の威力は大したことないと言ってもいいでしょう。

 まぁ、人族の魔法と比べれば今のでも十分すぎるほど強かったですけど……。
 僕様ちゃんの鋭い指摘を受けた女は、心外だと言わんばかりに眉をひそめます。

「あら? 今のは小手調べみたいなものよ? 本番はこれから……」

「へっ。どーだか、です」

「本当よ? だってドラちゃんが本気を出したら、森林火災になっちゃうもの」

「むっ……」

 そこで僕様ちゃんは周囲に視線を送ります。
 先ほどまで青々と茂っていた木々の葉が、ところどころ燃えていました。
 しかし、青髪の女が水魔法で消火作業を行っています。
 あの赤髪の女も、得意げな顔で腕を組んでいるので、本当に手加減していたのでしょう。

「なるほど……。お前たちのリーダーであるタカシ=ハイブリッジは、ここら一帯の領主でしたね。森の保全のために、被害を最小限に抑えたというわけですか」

「ええ、そうよ。森を焼くのは、私たちにとってご法度だから」

「ならば、やはりこちらが有利です。お前らが本気を出せない状況下で、僕様ちゃんから一方的に魔法を打ち込んでやるです。――【神の雷槌】」

 バチチチッ!
 僕様ちゃんは右手を掲げ、手のひらに稲妻を纏わせました。
 それを見た赤髪の女は、ニヤリと笑います。

「ふふん。そう上手くいくかしら? 私たちの奥義を見せてあげる。いくわよっ、ドラちゃん!」

「ゴアアアァ!!」

 掛け声と共に、一人と一匹の魔力が膨れ上がっていきます。
 またブレスを?
 いえ、先ほどの口ぶりではそれはなさそうです。

(いったい何をする気なんです……?)

 僕様ちゃんは警戒を強めつつ、彼女たちの様子を伺うことにしたのでした。

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