【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

968話 深夜の森【リッカ視点】

 深夜――。
 タカシ=ハイブリッジたちが寝静まった頃、僕様ちゃんは静かに布団を抜け出しました。
 そしてこっそりと宿を出て、そのまま『西の森』へと向かいます。
 ……まぁ、このリンドウという街から見たら東に位置するので、この名称はどうかと思うのですが。

「ふぅ……」

 少し肌寒い夜の風を浴びながら、深呼吸します。

「無事に神託通りの働きができたです」

 そんな独り言を漏らします。
 僕様ちゃんがこんな新大陸の最果てまでやってきた理由は、ひとえにこの神託のためでした。

「フレンダ=ハートフィールド、アイリス=シルヴェスタ、そしてタカシ=ハイブリッジ……」

 彼らの名を、順番に呟きます。

「なかなかに癖の強い人たちだったです」

 とはいえ、彼ら3人とも悪い人ではなさそうです。
 むしろ、好感が持てるくらいです。
 まぁ、タカシ=ハイブリッジのムチャクチャさは想像以上だったですが。

「……ふふっ」

 思わず笑みがこぼれてしまいます。
 僕様ちゃんは、これまでの人生の中で様々な人を見てきました。
 一見すると我が強そうな人でも、僕様ちゃんの聖女という肩書きを見ると態度が変わるものです。
 ところが彼は、聖女である僕にまったく媚びようとしません。

(いや、ある意味では媚びようとしていたですか……)

 僕様ちゃんは、聖女の呪いによって体の成長が止まっています。
 外見年齢は10歳ほどである一方、実年齢はそのはるか上という歪な存在。
 しかも、聖女という肩書き付き。

 そんな僕様ちゃんに、タカシ=ハイブリッジはなんと『結婚しよう』などと言ってきたわけです。
 あまりにも想定外すぎて、思わず笑ってしまったです。
 しかも冗談ですらなく、本気の様子。
 正直言って意味が分かりません。

(女好きにも程があるのですよ)

 ただ……不思議と嫌な気分にはなりませんでした。
 それどころか、なんだかドキドキしてしまいました。
 生まれて初めての経験です。
 もしかするとこれが、恋というものなのでしょうか?

「……って、何を馬鹿なことを考えているのですか!」

 僕様ちゃんは首をブンブンと振り、邪念を追い出します。
 しかし、下腹部のあたりが妙にキュンとなる感じが消えません。

「うぅ……。聖紋がこんなところに刻まれたせいなのです……」

 聖ミリアリア統一教において、重大な意味を持つ『誓いの儀式』。
 男性が女性の右手の甲にキスすることで成立する儀式のことです。
 本来なら、キスをした右手の甲に聖紋が刻まれるはずだったのですが……。

 タカシ=ハイブリッジの奴は、あろうことか僕様ちゃんの下腹部にキスをしたため、ここに聖紋が刻まれてしまったわけなのですよ!
 そのせいで、夜になると聖紋が強く疼くようになってしまいました。
 まるでそこに心臓があるかのようで、ドクンドクンという鼓動を感じるたびに変な気持ちになってしまうのです。

(それもこれも全部あの変態男のせいなのです!)

 もう一度ボコボコにしてやりたいところですが、残念ながら奴は枢機卿のお気に入りです。
 これ以上干渉すると色々面倒そうです。
 それになにより、奴を必要以上に傷つけることは、世界にとって大きな損失になるでしょうからね。

「あぁもうっ! 本当にムラムラ――じゃなくて、イライラしてきたです!!」

 僕様ちゃんは頭をガシガシとかきむしります。
 そして、再び深呼吸をしました。

「……よし、落ち着いたのです」

 とりあえず気持ちを切り替えましょう。
 今はとにかくやるべきことがありますから。
 僕様ちゃんはアイテムバッグから、『ウォシュレット付きトイレ』を取り出します。
 タカシ=ハイブリッジやジェイネフェリア=ミザリィにもらったもので、魔石さえあればどこでも使えるようになっている便利な代物です。

 それに何より、”あの機能”が付いている点が素晴らしいですね。
 聖女として不純な行為は禁じられているですが、”こちら”ならば問題ありません。
 そんなわけで早速使ってみましょう!
 まずは服を脱いで全裸になります。

(タカシ=ハイブリッジは、『トイレで全裸になるなんておかしい』とか言っていましたね)

 そんなわけないです。
 僕様ちゃんは生まれてから今まで、ずっとこうして生きてきたのですから。

(ふふ……。森の中で全裸……。とても開放感があって気持ちいいのですよ)

 僕様ちゃんの実力なら、魔物に襲われても簡単に撃退できます。
 そもそも、僕様ちゃんが無意識レベルに放っているオーラがあれば、そんじょそこらの魔物や一般人は近寄ってこなくなるです。

(さて、それではさっそく始めましょうか……)

 僕はまず便座に座り、ウォシュレットを起動させます。

「ふふふ……」

 お尻に当たる温水が心地良いです。
 ひとしきり堪能したあと、満を持して『特別マッサージモード』を選択!

(いよいよ始まるです……!)

 僕の胸の高鳴りはますます高まっていきます。
 次の瞬間――――!!

「深夜の森で、何をしているの?」

「あ、怪しい人ですね……」

「ふふん。とりあえず事情聴取ね」

「お館様の安否も心配ですけど……。不審者を放置しておくわけにもいきません」

 突然、暗がりの中から声を掛けられました。
 1、2、3……。
 気配は全部で8つありますね。

(いいところで邪魔を……。適当に蹴散らしてやるです)

 僕様ちゃんはそう考え、ウォシュレット付きトイレから立ち上がったのでした。

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