【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

962話 特別マッサージモード

 トイレから吹き上がる水流を、自身の尻で必死に受け止めているリッカ。
 ジェイネフェリアの指示を受けてボタンを押すが、うっかり違うボタンを押してしまった。
 強烈な水流が、聖女様のケツを襲う。

「くぅっ……! こ、この程度で僕様ちゃんが負けるなんてことは――」

 ヴィィィィィン……!!

「ふおぉぉっ!?」

 水流が不意に若干強くなり、思わず声が出てしまうリッカ。
 なんとか体勢を立て直そうとするが、一度崩れたものは簡単には立て直せない。

「くぅ……。こんな……こんなことで……僕様ちゃんが……」

 徐々に弱っていくリッカ。
 もはや正常な判断能力も失われつつあるようだ。
 彼女は手当たり次第にボタンを弄り始めた。
 しかしどれもこれもハズレであるらしく、状況に変化はない。
 そんな時だった――

『ピーッ! 隠しコマンドにより、特別マッサージモードに移行します』

 突如、機械音声が流れてきたかと思うと、同時に水流が弱まった。

「……このまま止まるです?」

 ホッと一息つくリッカ。
 その額には汗が浮かんでいる。
 ウォシュレットによる激しい尻穴攻撃で、かなり消耗しているようだ。

「ふう……。よく分からんが、無事に停止しつつあるようだな。ネフィ、『特別マッサージモード』ってのは何だ?」

 タカシに個室内の様子は見えていない。
 しかし、物音などから何となく察したようである。
 彼は、聞き覚えのないモードについて製作者のジェイネフェリアに尋ねた。

「ええっと……その……」

 尋ねられた当のジェイネフェリアはというと、何やら口籠っている様子だ。
 心なしか、顔が少し赤くなっているようにも見える。
 まるで何かを隠しているかのような反応だ。
 そんな様子を不審に思ったのか、タカシは続けて言った。

「どうした? まさか、変なことをしているんじゃないだろうな? 座った者を抹殺するとか、そういう機能がついているんじゃないよな?」

「……!? いやいやいやいや! そんな機能はつけてないんだよ!」

 慌てた様子で否定するジェイネフェリア。
 その慌てっぷりには、さすがに怪しさを感じるタカシ。
 彼はさらに追及を続けることにした。

「じゃあ何なんだ? 抹殺は言い過ぎにしても、座った者を痛めつける機能とか……」

「違うんだよ! 痛めつけるどころか、むしろ逆なんだよ!!」

「……逆だと? ああ、確かに『特別マッサージモード』って名前だしな……」

「そ、そうなんだよ」

「ならば安心だな。しかし、どうしてマッサージ機能をトイレに付けたんだ? 俺が依頼していたのは、湯上がりに快適にマッサージを受けるためのゆったりとした椅子だぞ?」

 タカシがそう指摘する。
 彼はこの温泉旅館の開業準備を進めていくにあたり、ジェイネフェリアに様々な魔道具の開発を依頼していた。
 この『ウォシュレット付きトイレ』の他、『マッサージチェア』などのアイディアを提供している。
 だが、それは別々に開発してもらおうと考えていたのだ。
 二つの機能を併せ持つ魔道具の開発を依頼したつもりはなかった。

「ええっと……その……」

「歯切れが悪いな。なぜ二つの機能を一つの魔道具に合わせたんだ?」

「……か、開発の都合上なんだよ。一部の機能には共通している回路があって、トイレの開発に併せてマッサージ機能をテストする必要があったから、一緒に作っちゃったんだよ」

「……なるほどな」

 どうやらそういうことらしい。
 それならば仕方がないだろう。
 タカシとしても、別に問い詰めたいわけではないのだ。
 ただ単に、疑問を解消したかっただけに過ぎないのである。
 だから、これ以上深く詮索するつもりもない。

「確かに、『隠しコマンド』って言っていたもんな。普通の利用者が間違って起動させないようにしていたわけか」

「そ、そうなんだよ! 決して、自分だけがこっそり堪能するためのものじゃなかったんだよ! 本当なんだよ! 信じてほしいんだよ!!」

 早口で捲し立てるように言い訳をするジェイネフェリア。
 その姿はどこか必死なものを感じさせる。
 それほどまでに、知られたくない秘密があるということなのだろうか?

(まぁいいか……)

 今はあまり気にしなくてもいいだろう。
 そう思ったタカシは、注目先を変えることにした。

「ところで、リッカの方はどうなっているんだ? 電源を停止させるつもりが、実際には『特別マッサージモード』とやらを起動したわけだが……」

「そ、それは……」

 ジェイネフェリアは言葉を詰まらせる。
 その様子からは、何かを誤魔化したがっているように見受けられた。
 タカシはジェイネフェリアから聞き出すのを諦め、リッカに直接尋ねることにする。

「おい、リッカ。そっちの調子はどうだ? 妙に静かだが……」

「……ふぅっ! んんぅっ……!」

 返事の代わりに聞こえてくるのは、荒い吐息のみだ。
 よほど苦しいのだろうか?

「リッカ! 返事をしろ!! 大丈夫か!?」

 心配になったタカシは、声を張り上げて呼び掛ける。
 ドンドン!
 ドンドンドン!!
 彼は併せて、扉を激しくノックし始めた。

「だ、大丈夫です……! 絶対に入ってくるなです……!!」

 リッカは相変わらず苦しそうな声を上げている。
 その声を聞いて、タカシはさらに心配をつのらせるのだった。

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