【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
959話 魔法の絨毯
タカシたちは、昼食後に散歩している。
芝生の上で、リッカに対してマッサージを施したところだ。
「ひぃ、ひぃ……。酷い目にあったです……」
息も絶え絶えといった様子で呟くリッカ。
そんな彼女に、タカシは言う。
「すごい凝りようだったぞ。疲れが溜まっているんじゃないか?」
「僕様ちゃんは聖女です。体力の続く限り頑張るのは当然です」
「でもさ、自分に治療魔法を掛ければ……」
「慢性的な疲労に対して、治療魔法の効果は微々たるものです。そもそも、自分に掛けている余裕があるなら、無辜の民のために使うべきです」
「……なるほどねぇ」
なかなか立派な心構えだと感心するタカシ。
だが、その一方で心配にもなる。
(もう少し自分を大切にしてほしいものだ。ふむ、しかしあと少しで……)
タカシが何かを思案していると、リッカが立ち上がった。
「さて……と。僕様ちゃんはそろそろ行くです」
そう言って、彼女はどこかへ歩き出そうとする。
だが、その手をタカシが掴んだ。
「待ってくれ。もう少しゆっくりしていけよ」
「僕様ちゃんは聖女です。それ相応に忙しいです。こうしている間にも、無辜の民が苦しんでいるかもしれないのですよ」
「まぁその通りだろうが……。さすがにそんなこと言い出したら、キリがないだろ」
タカシも、人の不幸は見逃せないタイプではある。
だが、基本的には『視界に入る範囲、手が届く範囲で助ける』というスタンスに留めている。
体力や精神力の続く限り人を助けて回るというのは、比較的優しいタカシの価値観からしてもやりすぎのように思えた。
「とにかく、僕様ちゃんはもう行くですよ。離せです」
手を解こうとするリッカに対し、タカシは言った。
「まぁ待てって。ここの温泉には、疲労回復の効果があるんだ。お前の疲労をちゃんと取っておいた方がいい。そうすれば、結果的により多くの民を助けられるだろ?」
「……むむっ!?」
その言葉を聞いた瞬間――
リッカの目がクワっと見開かれた。
まるで獲物を見つけた肉食獣のような目つきである。
「それは本当なんです? そう言われてみれば、確かに昨日の入浴後から少し調子がいいような……」
「そうだろう? 疲労回復の効果は本当だとも。ぜひお前にオススメしたい。疲労困憊の状態で長時間働くよりも、万全の状態で無理なく働いた方がいいに決まっているからな」
地球でも似たような概念はある。
いわゆる『木こりのジレンマ』というやつだ。
錆びた斧で必死に木を切っている木こり。
ちゃんと斧を研いでから使った方が、効率は上がる。
だが、あまりにも忙しい場合、そんなことを言っている場合ではなくなる。
目の前の仕事を優先して研ぐのを後回しにし、結果的に効率の悪い状態のまま作業を続けることになるのだ。
「ふ、ふーん……」
どこかソワソワし始めるリッカ。
そんな彼女に向けて、タカシは告げる。
「だから、ここで休んでいこうぜ?」
「わ、分かったです……。しかし、今日だけにするです」
そう言うと、彼女は再びその場に腰を下ろした。
「今日だけか……。どうしてそんなに急ぐ? 体力は万全にした方がいいぞ?」
「それは分かったですが……。僕様ちゃんにも予定があるです。本国への帰還が遅れると、枢機卿がうるさいです」
「……そっか」
リッカの言葉に納得するタカシ。
聖女は教会の象徴でもあるため、その存在価値は高い。
彼女を遊ばせておくつもりはないのだろう。
「なら、帰り道の日程を短縮できればいいんじゃないか? リッカはここまでどうやって来たんだ?」
「徒歩です」
「と、徒歩!? 馬車は使わなかったのか?」
「僕様ちゃんの身体能力なら、馬車も徒歩も大して変わらないです」
「……まぁ、それもそうか」
確かに彼女の身体能力なら、馬よりも早く移動できるだろう。
それなら徒歩での移動も不思議ではない。
「しかし、そういうことならば俺も力になれそうだぞ?」
「どういう意味です?」
「それは……ほら、これさ」
タカシはアイテムルームからとある物を取り出す。
そしてそれをリッカへと差し出した。
「これは……?」
「魔法の絨毯だよ」
「魔法の絨毯……? 乗り物系の魔道具ですか?」
「そうそう。乗ってみれば分かると思うぜ」
「……ふんっ! そんな子供騙しには騙されないです! こんな布が大して役に立つはずないです!」
鼻で笑うリッカ。
しかし数分後――
「すごい! すごいです! 速い! 速すぎるぅ!!」
空飛ぶ魔法の絨毯の上に乗ってはしゃぎまくる彼女の姿があった。
「魔石のおかげで自分のMPを消費することもない! タカシ=ハイブリッジ! こんな素晴らしいものをどこで手に入れたですか!!」
「俺のお抱えの魔導技師――ここにいるネフィが作ってくれたんだよ」
タカシは、隣に立つジェイネフェリアを指差しながら言う。
彼女はこれまでに数々の魔道具を作ってきた。
魔法の絨毯もその一つであり、合同結婚式を開いた際には来賓へのプレゼントとして配布したりもした。
今回作ったものは、その時の試作品より性能が高い。
「ふふっ! あははっ!!」
(いい調子だ……。もう少しで例の条件を満たす……。温泉、誓いの儀式、和食もどきの朝食、卓球交流、散歩、マッサージ、魔法の絨毯のプレゼント……。いろいろと尽くしてきた甲斐があった。しかし、他に提供できそうなものは何かあったかな……)
空ではしゃぐリッカを眺めながら、タカシは思考を巡らせる。
だが、不意にリッカが高度を下げて近づいてきた。
「ん?」
何事かと思い身構えるタカシであったが――
「ううぅ……。お腹が痛いです……」
「ああ、空は寒いからな。魔力や闘気で風を遮断してなかったらそうなる」
タカシやリッカなどの強者は、魔力・闘気・聖気を使って身体能力等を強化している。
そのため、不意に高所から落ちても大ケガはしないし、寒暖差によって体調を崩すことも少ない。
だが、今後を見据えて魔力などを節約していた場合は、常人のように体調を崩すこともある。
「はい……。そんなことより、まずはトイレに……」
リッカはお腹を押さえながら苦しんでいる。
そんな彼女に対して、タカシが提案する。
「ちょうどいい。ここのトイレの一部には、最新機能が付いているんだ。ぜひ利用してみてくれ」
「はいです……」
こうして、リッカはタカシに案内され最新機能付きのトイレに向かうのだった。
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連載中のウェブトゥーン版ですが、私もスマホアプリ「ホンコミ」で順次読み進めています。
縦読み形式には個人的に馴染みがありませんでしたが、数話ほど読めば慣れてくるものですね。
ミティやモニカの出番はまだ少ないのですが、ユナとリーゼロッテの出番はガッツリあります。
フルカラーで可愛いです。
スレンダーな勝ち気美少女、スタイル抜群のほんわかお姉様というそれぞれの雰囲気が出ています。
ウェブトゥーン版の7話は、原作(本作)における15話に相当し、ホワイトタイガーと戦います。
フルカラーで表現されるタカシの「ファイアートルネード」やリーゼロッテの「アイスレイン」が迫力満点でした。
一見の価値はあると思います。
芝生の上で、リッカに対してマッサージを施したところだ。
「ひぃ、ひぃ……。酷い目にあったです……」
息も絶え絶えといった様子で呟くリッカ。
そんな彼女に、タカシは言う。
「すごい凝りようだったぞ。疲れが溜まっているんじゃないか?」
「僕様ちゃんは聖女です。体力の続く限り頑張るのは当然です」
「でもさ、自分に治療魔法を掛ければ……」
「慢性的な疲労に対して、治療魔法の効果は微々たるものです。そもそも、自分に掛けている余裕があるなら、無辜の民のために使うべきです」
「……なるほどねぇ」
なかなか立派な心構えだと感心するタカシ。
だが、その一方で心配にもなる。
(もう少し自分を大切にしてほしいものだ。ふむ、しかしあと少しで……)
タカシが何かを思案していると、リッカが立ち上がった。
「さて……と。僕様ちゃんはそろそろ行くです」
そう言って、彼女はどこかへ歩き出そうとする。
だが、その手をタカシが掴んだ。
「待ってくれ。もう少しゆっくりしていけよ」
「僕様ちゃんは聖女です。それ相応に忙しいです。こうしている間にも、無辜の民が苦しんでいるかもしれないのですよ」
「まぁその通りだろうが……。さすがにそんなこと言い出したら、キリがないだろ」
タカシも、人の不幸は見逃せないタイプではある。
だが、基本的には『視界に入る範囲、手が届く範囲で助ける』というスタンスに留めている。
体力や精神力の続く限り人を助けて回るというのは、比較的優しいタカシの価値観からしてもやりすぎのように思えた。
「とにかく、僕様ちゃんはもう行くですよ。離せです」
手を解こうとするリッカに対し、タカシは言った。
「まぁ待てって。ここの温泉には、疲労回復の効果があるんだ。お前の疲労をちゃんと取っておいた方がいい。そうすれば、結果的により多くの民を助けられるだろ?」
「……むむっ!?」
その言葉を聞いた瞬間――
リッカの目がクワっと見開かれた。
まるで獲物を見つけた肉食獣のような目つきである。
「それは本当なんです? そう言われてみれば、確かに昨日の入浴後から少し調子がいいような……」
「そうだろう? 疲労回復の効果は本当だとも。ぜひお前にオススメしたい。疲労困憊の状態で長時間働くよりも、万全の状態で無理なく働いた方がいいに決まっているからな」
地球でも似たような概念はある。
いわゆる『木こりのジレンマ』というやつだ。
錆びた斧で必死に木を切っている木こり。
ちゃんと斧を研いでから使った方が、効率は上がる。
だが、あまりにも忙しい場合、そんなことを言っている場合ではなくなる。
目の前の仕事を優先して研ぐのを後回しにし、結果的に効率の悪い状態のまま作業を続けることになるのだ。
「ふ、ふーん……」
どこかソワソワし始めるリッカ。
そんな彼女に向けて、タカシは告げる。
「だから、ここで休んでいこうぜ?」
「わ、分かったです……。しかし、今日だけにするです」
そう言うと、彼女は再びその場に腰を下ろした。
「今日だけか……。どうしてそんなに急ぐ? 体力は万全にした方がいいぞ?」
「それは分かったですが……。僕様ちゃんにも予定があるです。本国への帰還が遅れると、枢機卿がうるさいです」
「……そっか」
リッカの言葉に納得するタカシ。
聖女は教会の象徴でもあるため、その存在価値は高い。
彼女を遊ばせておくつもりはないのだろう。
「なら、帰り道の日程を短縮できればいいんじゃないか? リッカはここまでどうやって来たんだ?」
「徒歩です」
「と、徒歩!? 馬車は使わなかったのか?」
「僕様ちゃんの身体能力なら、馬車も徒歩も大して変わらないです」
「……まぁ、それもそうか」
確かに彼女の身体能力なら、馬よりも早く移動できるだろう。
それなら徒歩での移動も不思議ではない。
「しかし、そういうことならば俺も力になれそうだぞ?」
「どういう意味です?」
「それは……ほら、これさ」
タカシはアイテムルームからとある物を取り出す。
そしてそれをリッカへと差し出した。
「これは……?」
「魔法の絨毯だよ」
「魔法の絨毯……? 乗り物系の魔道具ですか?」
「そうそう。乗ってみれば分かると思うぜ」
「……ふんっ! そんな子供騙しには騙されないです! こんな布が大して役に立つはずないです!」
鼻で笑うリッカ。
しかし数分後――
「すごい! すごいです! 速い! 速すぎるぅ!!」
空飛ぶ魔法の絨毯の上に乗ってはしゃぎまくる彼女の姿があった。
「魔石のおかげで自分のMPを消費することもない! タカシ=ハイブリッジ! こんな素晴らしいものをどこで手に入れたですか!!」
「俺のお抱えの魔導技師――ここにいるネフィが作ってくれたんだよ」
タカシは、隣に立つジェイネフェリアを指差しながら言う。
彼女はこれまでに数々の魔道具を作ってきた。
魔法の絨毯もその一つであり、合同結婚式を開いた際には来賓へのプレゼントとして配布したりもした。
今回作ったものは、その時の試作品より性能が高い。
「ふふっ! あははっ!!」
(いい調子だ……。もう少しで例の条件を満たす……。温泉、誓いの儀式、和食もどきの朝食、卓球交流、散歩、マッサージ、魔法の絨毯のプレゼント……。いろいろと尽くしてきた甲斐があった。しかし、他に提供できそうなものは何かあったかな……)
空ではしゃぐリッカを眺めながら、タカシは思考を巡らせる。
だが、不意にリッカが高度を下げて近づいてきた。
「ん?」
何事かと思い身構えるタカシであったが――
「ううぅ……。お腹が痛いです……」
「ああ、空は寒いからな。魔力や闘気で風を遮断してなかったらそうなる」
タカシやリッカなどの強者は、魔力・闘気・聖気を使って身体能力等を強化している。
そのため、不意に高所から落ちても大ケガはしないし、寒暖差によって体調を崩すことも少ない。
だが、今後を見据えて魔力などを節約していた場合は、常人のように体調を崩すこともある。
「はい……。そんなことより、まずはトイレに……」
リッカはお腹を押さえながら苦しんでいる。
そんな彼女に対して、タカシが提案する。
「ちょうどいい。ここのトイレの一部には、最新機能が付いているんだ。ぜひ利用してみてくれ」
「はいです……」
こうして、リッカはタカシに案内され最新機能付きのトイレに向かうのだった。
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連載中のウェブトゥーン版ですが、私もスマホアプリ「ホンコミ」で順次読み進めています。
縦読み形式には個人的に馴染みがありませんでしたが、数話ほど読めば慣れてくるものですね。
ミティやモニカの出番はまだ少ないのですが、ユナとリーゼロッテの出番はガッツリあります。
フルカラーで可愛いです。
スレンダーな勝ち気美少女、スタイル抜群のほんわかお姉様というそれぞれの雰囲気が出ています。
ウェブトゥーン版の7話は、原作(本作)における15話に相当し、ホワイトタイガーと戦います。
フルカラーで表現されるタカシの「ファイアートルネード」やリーゼロッテの「アイスレイン」が迫力満点でした。
一見の価値はあると思います。
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