【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

956話 バスター

 一同はリンドウ温泉旅館で卓球を楽しんでいる。
 タカシvsミティ&アイリス。
 1対2の戦いではあるが、まずはタカシの必殺技により先取点を取った形だ。
 次の攻撃で、また得点が入ることだろう。

「ふふふ。愛する妻が相手とはいえ、手加減はしないぞ」

 不敵な笑みを浮かべるタカシ。
 そんな彼の視線の先にいるミティは――

(やっぱりカッコいいです……)

 うっとりとした表情を見せている。
 彼女にとって、今のタカシの姿はまさに理想の男性像そのものなのである。
 客観的に見れば、遊びで行っている卓球に全力を出すヤバい男なのだが、そんな些細なことは気にしないようだ。
 一方のアイリスも負けていられないと思ったのだろう。
 真剣な表情になると、早速反撃を開始する。

「……いくよ! はぁっ!!」

 そう言って放つ彼女の打球は鋭い角度で曲がり、サービスラインギリギリのところに突き刺さった。
 いわゆるカットショットと呼ばれるものだ。
 この攻撃をまともに受ければ、かなり厳しい展開になるだろうことは想像に難くない。

「むっ……!」

 タカシもその危険性を察知したのか、瞬時に対応する。
 アイリスの打ったボールに対し、即座に反応する彼だったが――

(まずい!)

 ここで誤算が生じた。
 アイリスの放った強烈なスピンがかかったボールに対して、わずかにタイミングがズレてしまったのだ。

「くっ……」

 どうにか打ち返すことには成功するが、球は浮いてしまっている。

「ぬうううぅ……!」

 そこに、ミティが闘気を開放して構えていた。
 どうやら、ここで強烈なスマッシュを打つつもりのようだ。

(これはマズイな……)

 内心で焦るタカシ。
 このままでは失点してしまうだろう。
 いや、それだけではない。
 彼女の『ミティ・ホームラン』から放たれる強烈な打球を受ければ、一撃で試合続行が不可能となる可能性すらあるだろう。
 実際、先ほどのリッカはまともに受けて壁に磔状態にされてしまっていた。

「ふぅー……」

 大きく息を吐くタカシ。
 そして――

「【聖闘気・守護の型】!!」

 叫ぶと同時に聖なる闘気を解放する彼。
 それにより、タカシの身体が淡く輝くオーラに包まれた。
 これでもう大丈夫。
 いくら強力な打球が来ようとも、肉体が大ダメージを受けることはない。
 彼は集中して、ミティの打球に備える。
 しかし――

「【ミティ・バント】」

 ミティが意表を突くように緩い球を打った。
 闘気を開放した状態から、それを使わずにネット際にボールを落としたのだ。

「しまった……!」

 彼は体勢を崩しながらも、かろうじてボールを拾う。
 だが、ボールはまたしても浮いてしまっている。
 そんな隙を見逃すはずもなく、アイリスが素早い動きで前に出てくると――

「いっけぇえええ!!! 【六光一閃】!!!!」

 裂帛の気合いとともに、渾身の力で打ち込んだ。
 バシィッ!!!
 そんな音を響かせて、アイリスの打球はタカシの脇をすり抜けていく。

 常人ならば、もう追いつけない。
 アイリスたちの得点となる。
 だが――

「まだだ! 【クロック・アップ】!!」

 叫びと共に時間を加速させたタカシは、一瞬で態勢を立て直す。
 落下中のボールに追いつき、そのまま返球することに成功した。

「粘りますね、タカシ様!」

「ああ! 愛する妻たちに不甲斐ない姿は見せられないからな!」

 そう答えるタカシの顔には笑みが浮かぶ。
 実に楽しそうだ。
 そんな彼らの試合を見て、フレンダとリッカは戦慄している。

「な、なにあれ……? タカシちゃんのは時魔法……? それにミティちゃんも、パワーだけじゃなくてあんなに器用だったなんて……」

「ふ、ふざけるなです……! タカシ=ハイブリッジが聖闘気を使えるなんて情報はなかったはず……。しかも、アイリス=シルヴェスタが『六光一閃』を使えるなんて……ありえないです……! これはもう、助祭とかいうレベルではないです……!!」

 彼女たちが驚くのも無理はないことだ。
 タカシの時魔法や聖闘気、ミティの腕力や器用さ、アイリスの聖闘気……。
 それらは、タカシの『ステータス操作』の恩恵を多大に受けている。
 一般的には強者に属するフレンダやリッカから見ても、改めて感嘆するほど凄まじい実力なのだ。
 彼女たちが驚いている間にも、ラリーは続いている。

「時魔法がある限り、俺に負けはない! ふはははは!!」

「うぅ~。ちょっとズルくない!?」

「いえ、全てはタカシ様のお力……! それを正面から打ち破らせていただきます!!」

 互いに一歩も譲らない戦いが続く中――ついに決着がつく瞬間が訪れる。
 それは、アイリスが放ったやや甘い打球だった。
 時魔法『クロック・アップ』を使用している今、わずかなスキであっても強打に繋げることができる。
 このラリー勝負は自分がもらった。
 そう思ったタカシであったが――

「むっ!? 時魔法が……? しまった!!」

 彼のMPは膨大だ。
 しかし、時魔法自体の練度はそれほど高くなく、長時間の使用には耐えられない。
 そのため、定期的に使用を中断して回復させなければならないのだが……。

(つい調子に乗って使い過ぎてしまったか……)

 そんなことを考えながら、慌てて魔法を解除するタカシ。
 彼の視界に映るのは――

「これで終わりです!!」

 会心の笑みを浮かべるミティであった。
 彼女はここぞとばかりに、全力を込めようとしている。

「くっ……!! だが、時魔法は切れても聖闘気はまだ使えるぞ!!」

 彼は『ミティ・ホームラン』に備え、やや後方に下がる。
 彼女の闘気を込めた腕が振り抜かれる――ように見せかけて、途中で減速した。

「ふははっ! また『ミティ・バント』か? 読んでいたぞっ!!」

 タカシが前に詰めてくる。
 この状態で緩いボールを放ってしまえば、タカシは容赦なく決めてしまうだろう。
 絶体絶命かと思われたが――

「【ミティ・バスター】!!!」

「ぐほぉっ!?」

 突如放たれた衝撃に吹き飛ばされるタカシ。
 ミティはスマッシュを打つと見せかけ、やはり緩い球を打つと見せかけ、やっぱり強い打球を放ったのだ。
 彼女の作戦勝ち。
 こうして、タカシは失点してしまい不利な状況に陥ってしまうのだった。

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