【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

953話 温泉卓球

「ふぅ~。昼飯も美味かったな」

 食事を終えたタカシたちが次に向かったのは、旅館内にある遊戯場だ。
 彼らはそこで卓球を楽しむことにした。
 メンバーはタカシ、リッカ、フレンダ、ミティ、アイリス。
 タカシがルールを解説していく。

「いいか、これは卓球というスポーツで……」

「へー。タカシの故郷じゃ、こういう遊びがあったんだね」

 興味津々といった様子のアイリス。
 彼女の視線は、タカシの持つボールやラケットへと向けられていた。
 タカシの監督の元、卓球台、ピンポン玉、ラケットなどはある程度再現されている。
 だが、もちろん完璧ではない。
 言わばなんちゃって卓球ではあるのだが、軽く楽しむだけならばこれで問題ない。

「ボク、さっそくやってみようかな」

「なら、フレンダちゃんが相手するよ~」

 まずはフレンダがサーブを行った。
 それは見事なフォームから繰り出された高速サーブである。

「えっ? 速っ!!」

 かろうじて打ち返すアイリスだったが、それはネットに当たってしまった。

「はい、1点ね~」

 フレンダは笑顔で言う。
 どうやら、彼女には手加減という概念はないらしい。

(まぁ、彼女も地球出身っぽいしなぁ……)

 卓球という競技においては、タカシとフレンダがやや有利だ。
 なにせ、アイリスたちには卓球の経験がないのだから。
 ……と思われたのだが――

「あ、あれれ~?」

 コンコン!
 カンカンカン!!
 激しいラリーが続く。
 いつの間にか、いい勝負になっている。
 これには驚くしかないタカシであった。

「アイリスちゃん~!? 順応が早すぎるよ~!!」

 フレンダの驚きの声。
 そう、アイリスはすぐにコツを掴んだのだ。
 武闘家として元々運動神経がいいこともあり、すぐに要領をつかんだようである。
 タカシのチートスキル『ステータス操作』によって、視力強化や器用強化のスキルを取得していることも大きいだろう。

「ふっふーん! 簡単には負けられないよ!!」

 得意げに胸を張るアイリス。
 彼女はさらにギアを上げていく。
 そして――

「いっけぇーっ! 【五光一閃】!!」

 バシィッ!
 強烈なスマッシュが決まった。
 これにより、フレンダvsアイリスの勝負は決した。

「やった!!」

「ふぇ~ん。負けちゃったよぉ……」

 喜ぶアイリスとは対照的に、悔しそうなフレンダ。
 そんな彼女たちに声をかけるタカシ。

「二人とも、なかなかやるじゃないか」

「えへへ」

 照れ笑いを浮かべるアイリス。
 対して、フレンダの表情は暗いままだ。
 そんな彼女の肩に手を置きながら、タカシは言った。

「落ち込むことはないさ。フレンダも十分強かったぞ?」

「……本当?」

「ああ、本当だとも」

「……そっか」

 納得したのか、笑顔を見せるフレンダ。
 そうこうしている内に、次の試合が始まったようだ。
 今度はミティとリッカの戦いである。

(さて、どうなることやら……)

 二人の試合を見守るタカシたち。
 最初に仕掛けたのはリッカだった。

「――【神霊纏装・アーティルドラ】!」

 彼女が発動させたのは、自らの体に神霊の力を宿す武技だ。
 聖なるオーラを纏ったリッカは、一気に攻勢に出た。

「速いっ……! それに――単純に眩しいっ!!」

 思わず目をつむるミティ。

「くっ……目潰しとは卑怯な……」

 呟くミティだが、そもそもこの戦いにおける明確なルールは定まっていない。
 ざっくりとしたルール説明はタカシが行ったのだが、細かい部分は敢えて教えていない。
 つまり、この場において反則行為など存在しないのである。

「ふっふっふ。聖女である僕様ちゃん相手に、そんな隙を晒すなんて甘いですよっ!」

「ぐぬぅ……!」

 リッカの攻撃に押され気味になるミティ。
 次々に得点を決められていく。
 圧倒的な点差が開き、このままでは敗北するのも時間の問題かと思われたが――

「まだです! タカシ様をボコボコにされた恨みは、まだ忘れてませんから!!!」

 次の瞬間、ミティから燃える炎のような闘気が溢れ出す。
 そして――

「【剛拳流・侵掠すること火の如し】!!」

「なっ!? ば、馬鹿な……です! そんなふざけた闘気の量……あり得ないですっ!!」

 リッカは驚愕する。
 まさか、これほどの闘気を持つ者がいるとは思わなかったからだ。

「昨日戦ったときには、こんな力は感じなかったはずなのです! なんで急にここまで強くなっているです!? 昨日は手を抜いていたとでも言うですか!?」

 動揺するリッカ。
 そんな彼女に対して、ミティは言う。

「教えてあげましょう。それは――」

「そ、それは……?」

「昨日は疲れていたのです。午前は普通に働いて、午後はアダマンタイトの巨石を運びましたから。本当に疲れていました」

「……えぇ……?」

 あまりにも予想外の回答だったようで、唖然とするリッカ。
 そんな彼女に対して、ミティはさらに続ける。

「ですが、今は違います! 昨晩と今朝に温泉を堪能し、体力を回復しましたからね! 今の私はフルパワーです!!」

「くっ……。で、ですが意味はないです! この卓球とかいう遊戯では、パワーが強すぎると逆に不利になります! 僕様ちゃんの勝ちは変わらないのです!!」

「……なるほど」

 確かにその通りだと納得するミティ。
 だが――

「……ですが、問題はありません!  こうすればいいだけです! 必殺サーブで終わらせます! はあああぁ……!!」

 そう言ってミティはボールを宙に放り投げた。
 そして、ラケットを力強く振りかぶる。

「え……? あ、あの……」

 戸惑うリッカを無視して、そのまま振り抜く彼女。

「【ミティ・ホームラン】!!」

 そのスイングスピードたるや凄まじく、ボールはまるで弾丸のように放たれた。

「ぐぽぉっ!?」

 見事に命中して吹き飛ばされるリッカ。
 彼女の体はピンポン玉のように弾んでいく。
 そして――ガンッ!!
 凄まじい音を立てて壁に激突し、磔状態となった。

「十字架を背負って生きなさい……」

 まさに逆転ホームラン。
 圧倒的な点差を一撃でひっくり返す。
 磔状態から復活しないリッカを見て、ミティは満足げに微笑むのだった。

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