【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

941話 ななな……!?

 リッカに敗北したタカシは、彼が所有する温泉旅館で目が覚めた。
 傷を癒やすため、温泉にダッシュで向かうタカシ。
 そして、ミティとアイリスが彼を必死に追う。

「タカシ様ったら、もう……!」

「タカシっ! 止まってよー!」

「いいじゃないか! 二人も一緒に入ろうぜ!! 温泉は何度入ってもいいもんだろ!?」

 そんな叫びを残しつつ、疾走するタカシ。
 あっという間に、彼は脱衣場に辿り着こうとしている。

「ふはははっ! 秘技! 『瞬間脱衣』発動だぁ!!」

 もちろんそんな魔法はない。
 彼の優れた身体能力により、服を脱ぐ速度も常人より少し速いというだけの話である。
 馬鹿なことを叫びながら、全裸になったタカシ。
 腰には申し訳程度のタオルを巻いている。

 少し遅れて、ミティとアイリスが脱衣場に辿り着く。
 彼女たちの脱衣速度もまた尋常ではなかった。
 が、タカシには追いつけない。

「待ってください、タカシさまぁ~!!」

「マズイんだってば! 先客がいるんだよー!!」

 2人が叫ぶが、タカシの耳には届かない。
 もはや彼を止めることは誰にもできないのだ。

「ふははははは! 俺はタカシ=ハイブリッジ男爵だぞ! 先客がケフィだろうと一般領民だろうと、身分や金の力で有耶無耶にしてくれるわ!!」

 そんな最低の叫びと共に、タカシはついに温泉へと続く扉を開けた。
 その瞬間――

「え……?」

 タカシの動きが止まる。
 その視線の先では、今まさに湯船に入ろうとしている人物がいた。
 その人物は……。

「なっ! ななな……!? た、タカシ=ハイブリッジ……!? どうしてここに……」

 そこにいたのは、なんと聖女リッカだった。
 彼女は驚愕の表情を浮かべ、大きめのタオルで素早く体を隠した。

「それはこっちのセリフだ。なんでお前がここに……?」

 タカシは呆然と呟く。
 何を隠そう、彼はリッカに惨敗したばかりなのである。
 彼女に敗北し、命を失いそうになった際の恐怖はしっかりと覚えている。
 そんな相手が目の前にいるのだから、驚くのも無理はないだろう。

(俺を撃破したあと、帰ったんじゃなかったのか? いや、そんなことよりも……)

 問題はこの状況をどうするかである。
 リッカは、タカシから見て格上の相手と言わざるを得ない。

 温泉にて異性と全裸でバッタリ遭遇――。
 普段からいい雰囲気の者同士であれば、そこから関係が発展する可能性がなくもない。
 そういった特別な関係性を持っていなかった場合は、女性側が悲鳴を上げて男は退場させられる。
 あるいは、タカシが突入した先で入浴中の者がただの領民だったのであれば、権力、戦闘能力、金銭などを駆使して隠蔽することも可能だっただろう。
 だが、聖女リッカだけはマズイ。

(どうにか、どうにかしないと……!)

 このままでは間違いなく殺される。
 何か打開策を考えなくては……!
 そう思いつつも、なかなかいい考えが浮かばないタカシ。
 そんな彼を見て、リッカが口を開く。

「……ふっ。せっかく拾った命を捨てに来たですか。いい度胸です。僕様ちゃんが、今度こそ引導を渡してやるです!」

 そう言って構えるリッカ。
 大きめのタオルを体に巻いているため、彼女の裸体がタカシに見えることはない。

 彼女は聖ミリアリア統一教会の聖女として、特殊な処理を体に施している。
 それにより戦闘能力や浄化能力が上がる一方で、体の成長はほとんど望めなくなっている。
 彼女の外見年齢は10歳前後。
 一方の実年齢はそれよりも遥かに上。
 つまるところ、彼女は合法ロリなのだ。

 タカシも、何となくそのような事実を察している。
 リッカから発せられる殺気や威圧感というのは、それほどまでに強大だからだ。

(くっ……どうする? 考えろ……考えるんだ……)

 タカシは必死で頭を働かせる。
 そんなとき、彼は一つの事実に気がついた。

「リッカ……」

「なんです? 命乞いなら聞かないです」

「お前、とても可愛いな……」

「へ……?」

 唐突に発せられたタカシの言葉に、思わず間の抜けた声を出すリッカ。

「あどけなくて可愛らしい顔立ちに、透き通るような白い肌……」

「えっ? あぅ……えっと……」

 戸惑うリッカをよそに、タカシはさらに言葉を続ける。

「それに……胸も小さいな……」

「うぐっ!?」

 胸にコンプレックスのあるリッカにとって、その言葉はかなりクリティカルだったようだ。

「だが、その小ささが良い……。貧乳はステータスだ。希少価値だ。……そして、この小さな体で俺を圧倒するほどの力を持っているとは……ますます素晴らしい……」

「あうぅ……」

 さらに畳みかけるように褒めちぎられてしまい、赤面して俯いてしまうリッカ。
 そんな彼女に向けて、タカシが続ける。

「ああ……お前は本当に美しいよ……。まさに美の化身だ……」

「そ、そんなに褒めるなです……!」

 顔を真っ赤に染め上げながらも、満更でもないといった様子のリッカ。
 そんな彼女を余所に、タカシはなおも続ける。

「お前の肌を見ていると、俺の中の何かが目覚めそうになるんだ……。もっと見たい、もっと触れたい、もっともっと――」

 そこで言葉を切ると、タカシはおもむろに腰のタオルを取った。
 完全に裸になると、改めてリッカに向き直る。

「俺から一つ言いたいことがある。聞いてくれ」

「い、一体何なのです……?」

 リッカは動揺を隠しきれないまま、そう答えたのだった。

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