【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

934話 『勇者候補』タカシvs『聖女』リッカ

 聖女リッカと敵対している。
 アイリスはリッカの威圧感に呑まれて動けない。
 ミティは殴り飛ばされて戦闘不能。
 二人は心配そうにこちらを見ている。
 ここは、俺が何とかしなければならない。

「――【ファイアーウォール】!」

 俺は、聖女リッカを炎の壁で囲む。

「さぁ、これで逃げ場はないぜ? 覚悟しろ」

「君は本当にバカですね。この程度では、僕様ちゃんを倒すことなどできないです」

「どうかな? 俺は魔法に自信があるんだよ。この程度じゃ終わらせないさ」

「……」

 リッカは無言で、両手を前に突き出した。
 また結界でも張る気だろうか?
 だが、今度はそう簡単にいかない。

「くらえっ! 【ジャッジメント・レイン】」

「――っ!?」

 俺が放った魔法は、先ほどまでの火魔法とは属性が違う。
 真逆の水魔法だ。

 最初期から使い続けている火魔法の方が得意意識はある。
 ただ、スキルレベルとしては水魔法と火魔法は同じレベル5だ。
 俺は水魔法使いとしても一流と言っていいだろう。
 捌きの雨が上空より降り注ぐ。

「おぉ、これは凄まじい魔力です。まさか上級水魔法まで使えるとは……。火魔法用に準備していた聖結界では防ぎきれないです」

「ふはははは! まさに、それが狙いだからな!!」

「ですが、それでも無駄です」

「なにぃっ!?」

 リッカは降り注ぐ雨粒を、華麗なステップで避けていく。
 そして、そのまま走り抜けてきた。
 俺はその動きに驚きを隠せない。

「くっ……【レインレーザー】!」

 俺は慌てて水の光線を放つ。
 しかし、リッカはその攻撃を読んでいたようだ。
 ひらりとかわしてしまう。

「速いっ!」

「君が遅いのです」

「がはっ!?」

 リッカの拳が、俺の腹に突き刺さる。
 その衝撃で吹っ飛ばされてしまった。

「さぁ、どうしますか? このまま大人しく帰るなら、見逃してあげます」

「ぐっ……」

 俺は地面に手をついて起き上がる。
 ダメージはそれほどでもない。
 だが、精神的にはかなり追い詰められている。
 俺は魔法に絶対の自信を持っていた。
 それがこんなにもあっさりと破られるなんて……。

「タカシ……」

「タカシ様……」

 アイリスとミティも心配そうだ。
 くそっ、俺がしっかりしないといけない場面なのに。
 気をしっかり持つんだ。

「……」

 俺は大きく息を吸うと、リッカを見据えた。

「おい、リッカ。お前は俺のことを弱いと言ったな?」

「はい、言ったです」

「ならば、証明しようじゃないか。俺がお前よりも強いということを」

「……」

 俺はゆっくりと立ち上がる。
 そして、リッカに向かって歩き出した。

「はぁあああっ!!」

「ふっ!」

「うぐっ……」

 俺はリッカに斬りかかるが、軽くあしらわれてしまう。
 反撃にカウンターを喰らい、また吹っ飛んでしまった。

「今の攻撃は少しだけ予想外です。どうしてまだそんなに動けるです? 十分なダメージを与えたはずですが……」

「あぁ、確かにかなり効いているよ。でも、俺はこのくらいじゃ倒れない」

 俺は常時『リジェネレーション』の治療魔法を自身に掛けている。
 多少のダメージ程度なら、攻防している時間で回復が可能だ。

 俺は再びリッカへと向かっていく。
 リッカは俺の攻撃をいなしながら、質問を投げかけてくる。

「なぜそこまで頑張るですか? 大人しくここを去るだけでいいですのに」

「愛する妻たちの前で、無様を晒すわけにはいかないからな」

「愛する妻? それはミティ=バーヘイルとアイリス=シルヴェスタのことです? ……君には他にもたくさんの妻がいると聞いているです。1人や2人から失望されようが、どうでもいいことではないです?」

「違うな。みんなかけがえのない、俺の大切な妻だ。人数など問題ではない」

「……君は頭がおかしいです。ここまで好色とは、想定外です」

「何とでも言え」

 俺の頭の中には、リッカに対する怒りが渦巻いていた。
 こいつはアイリスを威圧した。
 彼女は恐怖で震えている。
 そして、ミティを殴った。
 彼女に大ケガはないようだが、痛い思いをしたはずだ。
 断じて許せるものではない。

「――【ファイアーボール】!」

 俺はファイアーボールを放つ。
 最初級の火魔法だが、その分使い勝手は良い。
 こうした近接戦闘の際には、まだまだ出番がある。

「ムダなことをするです。僕様ちゃんには通用しないです」

 リッカはレイピアでファイアーボールを切り裂く。
 そのまま俺の方へ駆け寄り、レイピアを突き出してくる。

「――【硬化】」

「なにっ!? ……です」

 俺は土魔法を発動し、レイピアを防いだ。
 リッカは一瞬驚いた様子を見せたものの、冷静に対処してきた。
 彼女がバックステップで距離を取る。

「君は本当に多彩ですね。まさか土魔法まで使えるとは……。得意魔法は火だと聞いていましたが、魔法全般のスペシャリストといった方が良さそうです」

「まぁな。俺は魔力にだけは自信があってね。聖女様が相手でも負けないぜ?」

「言ってくれるです。それでは、少しギアを上げるですよ?」

「望むところだ。来いよ」

「後悔するです! ――【神罰執行・神の雷鳴】!!」

「なんだそりゃ……?」

 聞いたことのない戦闘技法だ。
 聖女リッカの聖気・魔力・闘気。
 その全てが高まっていく。
 これはヤバそうだ。

「――【ハイ・リジェネレーション】」

 俺はより効果の高い常時治療魔法を自身に掛けておく。
 24時間発動している『リジェネレーション』よりもMPの消費が激しい。
 しかしその分、効果も高い。
 即死以外なら、なんとかなる。
 ミティやアイリスの無念を晴らすため、そして聖女リッカに舐められないためにも、ここが踏ん張りどころだ。

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