【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

929話 参級炎精ノ加護

 古代遺跡のホール型の大部屋。
 俺はそこで、試練とやらに挑戦している。
 第一陣のザコを殲滅して少し油断していたところ、第二陣から投石をくらってしまった。

「新手は……ゴブリンジェネラル、そしてミドルベアか。結構な強敵じゃないだな」

 単体のゴブリンなら、素人でも数人がかりで囲めばケガなしで討伐可能だ。
 単体のリトルベアなら、素人でも10人以上で囲んだ上で慎重に戦えば死者や重傷者を出すことなく倒すことができる。
 しかし、ゴブリンジェネラルやミドルベアといった上位種はそう簡単にはいかない。
 特にミドルベアは、かつてのミリオンズでさえ激闘の末にかろうじて倒せたぐらいの難敵である。

「タカシ様! 大丈夫ですか!?」

 少し離れたところから、ミティが心配そうに声を掛けてくる。

「問題ないさ、ミティ。まだ手出しは不要だぞ?」

「しかし、腕から血が……」

「大丈夫だ。俺は常時『リジェネレーション』を使っているからな。この程度の傷は、すぐに治るんだ」

「あ、なるほど……。そうでしたね」

 俺を相手に、チマチマした持久戦は通じない。
 サリエの協力の元で開発したオリジナル治療魔法『リジェネレーション』が傷を治療するからだ。

 ならばMP切れを狙ったらどうか?
 そう考えるかもしれないが、それも現実的ではない。
 俺には『MP強化レベル4』『MP消費量減少レベル4』『MP回復速度強化レベル2』があるからだ。
 よほどの大呪文を連発でもしない限り、一度の戦闘で俺がMP切れを起こすことはない。
 ついでに『体力強化レベル2』も持っているし、持久戦は俺の得意分野だ。

「でもさー。油断しすぎじゃない? もっと多くの闘気を纏っていれば、ダメージ自体を防げたでしょ?」

「それはそうだが……。ゴブリンジェネラルの投石を防げるレベルの闘気量となると、結構大変だからなぁ……」

 俺は『ステータス操作』のチートにより、様々な方面の能力を伸ばしている。
 魔法系スキル、近接戦闘系スキル、身体能力強化系のスキル、サポート系スキルなどだ。
 しかしその中でも多少の偏りはある。

 現状の俺は、近接戦闘系よりも魔法系寄りだ。
 そのため、常時『リジェネレーション』を使うぐらいの余裕はあっても、常時たくさんの闘気を纏うことは難しい。

 普段纏っている闘気がまったくのゼロというわけではない。
 そこらのゴブリンの投石であれば防げるだろう。
 だが、ゴブリンジェネラル級となれば厳しいわけだ。

「ダメージを受けても回復するんだから、問題ないんじゃないか?」

「ボクは心配なんだ……。ボクやアイリーンを残して、タカシが死んじゃったりしないかって」

 アイリスが悲しげな表情を浮かべる。

「アイリス……」

「私はタカシ様を信じていますが……。それでも、アイリスさんの気持ちもわかります。どうしても心配してしてしまいます」

「二人ともありがとう。心配させてすまなかったな」

 俺は彼女たちに感謝しつつ、改めて気を引き締める。
 『やられても回復すればいい』という考えは、一旦やめにしよう。
 ここは――

「はああああぁ……っ!」

 俺は魔力を解放する。
 土魔法の詠唱を進めていく。

「――装着っ! 【絶対無敵装甲】!!!」

 魔力によって生み出された土の鎧が、俺の全身を覆っていく。
 防御力上昇の効果がある、攻防一体の魔法だ。
 俺の土魔法はレベル3なので、独力ではオリジナル魔法を開発できない。
 これはニムから伝授してもらった、彼女の技である。

「ははははは! おらおらぁっ!!!」

 俺は一方的にゴブリンジェネラルとミドルベアをボコボコにしていく。
 頑強な岩の鎧を装備した『硬化状態』の俺に、奴らの攻撃は一切通じない。
 まさに無敵である。

 ――その後も、魔法陣から次々に出てくる全ての魔物を殲滅していった。

「ふぅ……。こんなところかな」

 もう魔法陣から新たに魔物は出てこないようだ。
 俺は『絶対無敵装甲』を解除する。
 頑強な岩を維持するためにMPを多く消費するので、少しだけ疲れた。

「お疲れ様です。タカシ様」

「おつかれー」

 ミティとアイリスが労ってくれた。

「おう。二人が注意してくれたおかげで、途中からは安全な戦法に切り替えることができたよ。ありがとう」

「いえ、そんな……」

「いいのいいの。それより、これで無事に器を示せたってことなのかな?」

「そうだと思うが……」

 俺たちは魔法陣に注目する。
 そして――

『器ヲ確認シタ……。強キ魂ヲ持ツ者ヨ、プドロナスノ名ニオイテ、汝ヘ参級炎精ノ加護ヲ授ケル』

 魔法陣から、響くような声が聞こえてきた。
 そして、小さくも強い魔力を感じる炎が現れる。
 それは俺の肩あたりに来ると、小さな炎の精霊の姿となった。

「わっ! 可愛い!」

「本当ですね」

「へぇ……。これが炎の精霊か」

 精霊とは意思を持った魔素のようなものだと聞いている。
 人によっては姿が見える者と見えない者がおり、その力にも差異がある。
 確かユナの赤狼族も、火属性の精霊との相性が良かったはずだ。
 それでも、こうして一個人に精霊が宿ることは極めて稀だと思うが。

『時ヲ待チ、器ヲ広ゲ、又来ルガ良イ……。我ラハ強キ者ヲ待ッテイル……』

 魔法陣から響く声は最後にそう言い残す。
 そして、魔法陣の光は消えた。

「えっと……。結局、今のはなんだったんでしょうか?」

「う~む……。どうやら試練とやらに合格して、加護としてこの精霊を授けてくれたみたいだぞ?」

「そうなんですね。でも、何のために……」

 ミティは首を傾げている。
 俺だって、この展開には戸惑っているさ。

「さあな? この古代遺跡の存在理由にもかかわってくるだろうし、確かなことは分からない。だが、さっきの口ぶりでは次もあるらしいし、また来る機会もあるだろう」

「その件ですが……。私が今この場で挑戦してもよろしいでしょうか?」

 ミティがそんなことを言い出したのだった。

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