【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

925話 謎の聖気

 リンドウの古代遺跡の入口で、アダマンタイトの巨石を粉砕しようとしているところだ。
 この場にいるのは俺、ミティ、アイリス、ジェイネフェリア、ブギー頭領、ジョー副頭領の6人である。

「ふぅー……」

 ジェイネフェリアが目を閉じ、集中力を高める。
 そしてアダマンタイト粉砕機を慎重に操作し、起動させた。

 グイィィンッ!!
 鈍い音が響き渡ると同時に、アダマンタイト粉砕機が動き出す。
 俺が注ぎ込んだ魔力によって無事に動いているようだ。

「ちゃんと起動したんだよ。これなら、あとは……」

 粉砕機の先端ドリルが回転を始める。
 すると、徐々にアダマンタイトの巨石が削られ始めた。

「ハッハ! いい感じに削れてるな!」

「はい、あれほど硬いアダマンタイトが……!」

「さすがネフィだ!」

 ブギー頭領、ジョー副頭領、俺がそれぞれの反応を見せる。
 アダマンタイト粉砕機の威力は凄まじく、瞬く間にアダマンタイトの巨石が削り取られていく。
 これなら無事に穴をあけられそうだ。

 いくつかの穴をあければ、そこを基点にして砕くことも可能なはず。
 そうなれば、あとは簡単だ。

「――ん?」

 俺は違和感を覚えた。
 どこからともなく流れてきた謎のオーラが、アダマンタイトの巨石に流れ込んだように感じられたのだ。

「なぁ、アイリス」

「うん。さっきのは聖気……それもとびきり強いやつだよ。限界まで凝縮して、目立たないように偽装されていたけど」

 俺がアイリスに話を振ると、彼女はそう答えてくれた。
 腕力で頼りになるのはミティだが、気配察知や聖魔法関係のことならばアイリスが頼りになる。

「聖気か……」

 一流の魔法使いであっても、聖魔法を使えるとは限らない。
 単純な力量や適性のみならず、本人の精神的な資質が大きく影響するからだ。

 信心深い者は聖なるオーラ――つまり聖気を扱うことができる。
 それは魔力や闘気と組み合わせることで、より強力なものへと姿を変える。
 ざっくり言えば、魔力と聖気を組み合わせたものが聖魔法、闘気と聖気を組み合わせたものが聖闘気だ。

 俺とアイリスは、それぞれ聖魔法も聖闘気も使うことができる。
 聖気の出力が増せば、それ単体でも戦えるレベルになるらしい。

「どう思う? タカシ」

「うーむ……。何か嫌な雰囲気を感じるな」

「ボクもだよ。こんなところにあれほどの聖気の使い手がいるとは思えない」

「そうなると、考えられるのは……」

 俺とアイリスが話し合っている間にも、アダマンタイト粉砕機による作業は進んでいた。
 ガリゴリと音を立てて、アダマンタイトの巨石を削っていく。

「おかしいんだよ。切削速度が落ちているんだよ」

「どういうことだ? 粉砕機自体の動作不良か?」

「違うんだよ。明らかにアダマンタイトの硬度が上がっているんだよ。……あ」

 ジェイネフェリアがそこまで言ったところで、アダマンタイト粉砕機に変化が現れた。
 鈍い音とともに、粉砕機が止まったのだ。

「うーん……一度動力を切ってメンテナンスをするんだよ。男爵さん、粉砕機をこっちに運んでほしいんだよ」

「ああ」

 俺はアイテムルームを利用して、粉砕機をアダマンタイトの巨石から離したところに運んだ。
 ジェイネフェリアは首を傾げながら、粉砕機を調べ始める。
 残された他の面々は、先ほどまで削られていたアダマンタイトの巨石に視線を向ける。

「ハッハ! 途中までは順調だったんだがなぁ!」

「ここまで削れただけでも素晴らしい魔道具だったと言えます。ただ、これではやはり先へは進めませんね」

 ブギー頭領とジョー副頭領が巨石の加工跡を見ている。
 超硬度を誇るアダマンタイトを削れたのは、さすがジェイネフェリアが作り出した魔道具といったところだ。
 ただ、それでもアダマンタイトの巨石は健在である。
 このままでは、先には進めない。

「うーん……。やっぱり聖気が影響してるみたいだね」

 アイリスがアダマンタイトに手のひらを当てて、内部の様子を探っている。

「そうだな。これは相当な出力だぞ」

 俺は同意を示す。
 彼女が指摘した通り、アダマンタイト巨石には何者かの聖気が纏わりついており、それがアダマンタイトの巨石を硬くしているようだ。

 しかし、これはいったい何者の仕業なのだろうか?
 ラーグ周辺に聖気の使い手はほとんどいないはず。
 それなりのレベルにあるのは俺とアイリスだが、もちろん俺たちが犯人ではない。
 というか、俺とアイリスでさえ、聖気単体でこれほどの効果を発揮することはできないし。

(……諦めるです。君たちはまだ、そこへ行くべきではないです。先にヤマト連邦に向かうです……)

「ん? なんだ?」

 俺の脳内に声が響いた。
 幼女くらいの声質ではあるが、どこか威厳を感じさせる不思議な響きがあった。

「どうされましたか? タカシ様」

「いや、今誰かが話しかけてきたような……」

 俺がそう言うと、他のメンバーが周囲を見回し始める。

「……誰もいねぇな」

「はい。ここには俺たちしかおりませんが……」

 ブギー頭領とジョー副頭領が言う。
 確かに周囲には人影はない。
 俺たちの他にあるのは、アダマンタイトの巨石や粉砕機だけだ。

「ボクも何も聞こえなかったよ。タカシの勘違いじゃないのかな」

「うーん……。確かに聞こえたんだがなぁ……」

 俺はアイリスの言葉を聞いて、考え込む。
 先ほどの声の主が誰かは分からない。
 だが、言っていることにも一理はある。
 アダマンタイトの巨石をどうにかできない以上、古代遺跡を先へ進むことはできない。
 粉砕機を改良して再チャレンジする時間もない。

 巨石をどうにかできれば、その先は当然まだ見ぬ景色が広がっていたはず。
 古代遺跡の謎を解き明かしたり、アーティファクトを手に入れたり、実は出口が山脈の向こう側に通じていたり、その先の地域に住む部族と交流を深めたり……。
 そんなイベントが発生する可能性があったのだが……。

「ヤマト連邦の件があるので、どちらにせよ深入りはできない。しかし、一目ぐらいは見ておきたかったな……」

 俺は残念に思う。
 まぁ、ヤマト連邦の件を片付けてから、ゆっくり取り組めばいいか。
 今日のところは撤収することにしようかな。
 俺がそんなことを考えているときだった。
 とある人物の提案により、膠着した状況に変化が訪れることになるのだった。

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