【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

914話 ニッケスへの加護(小)付与

 数日が経過した。
 旅立ちの準備は着々と進んでいる。
 王都から連れ帰ってきた者たちについては、ほぼ全員の配属先が決まっている。
 これならば、俺たちミリオンズが長期間ラーグを離れてもなんとかなるだろう。

 料理人ゼラとハーピィの少女レネと交流する機会を持てなかったのは残念だが……。
 ヤマト連邦から帰ってきてからでも遅くはないか。
 あとは、メイドのクルミナやオリビア、冒険者ギルド専属受付嬢のネリーあたりと親交を深められなかったのも非常に心残りである。
 彼女たちとは、これからも頻繁に会う機会はあると思うので、焦らずにいくことにしよう。

 そんな中、以前から用件が一つ片付きそうだという知らせが入った。

「来たか……ネフィ」

 俺はビリオンズの拠点で魔導技師ジェイネフェリアを出迎える。
 少女ノノンやその父ニッケスも同席している。
 彼はかつて”岩塊”の二つ名を持つCランク冒険者だったが、事故により右足と左足を欠損したため引退状態である。

「うん。急ピッチで作ったんだよ」

 俺の言葉を受け、ジェイネフェリアがとある魔道具を取り出す。
 それは、いわゆる義足だった。

「こ、これは……?」

 ニッケスが驚いている。
 無理もない。
 目の前にあるのは、まるで生身の右足そのままのような代物なのだから。

「すごいだろ? 我がハイブリッジ男爵家の御用達魔導技師のネフィに作成を依頼していたんだ」

「す、素晴らしい技術だ……。まさかこんな……」

「いや、まだ完成じゃないんだよ。男爵さんが急げっていうから、間に合わせで作っただけなんだよ」

 ジェイネフェリアはそう言いながら、義足の装着部を外す。
 そこには、複雑な紋様が描かれていた。

「ほう……。この紋様に秘密があるのか?」

「そうだよ! この紋様こそが肝なんだよ。これを刻んだ場所と反対の脚に装着すると……」

「「おおっ!」」

 俺たちは感嘆の声を上げる。
 パチっという音と共に、ニッケスの右足に義足が嵌まる。
 そして、彼は立ち上がり、一歩踏み出した。

「う、動くぞっ!」

「大丈夫だよ。僕が作ったんだから。ちゃんと機能するはずなんだよ」

「凄いな……この義足」

「うん。この紋様は魔力回路なんだよ。だから、それを刻んだ場所に魔力を流し込むと……それで……だから……であって……」

 ジェイネフェリアの熱弁が続く。
 彼は自分の作ったものに絶対の自信を持っているようだ。

「このような素晴らしいものを作っていただいて、本当に感謝しております」

「いいんだよ。僕はただ頼まれて仕事をしただけなんだよ。お礼なら男爵さんに言うんだよ」

 ニッケスがジェイネフェリアに感謝の意を示す。
 すると、ジェイネフェリアは照れくさくなったようで、そっぽを向いてしまった。

「ハイブリッジ様。娘のノノンに目をかけてくださっているのみならず、俺にまで……」

「お安い御用さ。元Cランク冒険者のニッケスが復帰すれば、ハイブリッジ男爵家にとっても大きなプラスになるからな」

 俺はそう言って笑みを浮かべる。
 繰り返しになるが、彼は右足と左足を欠損している。
 俺たちミリオンズによる合同魔法で、少しずつ肉が盛り上がるようにして回復してきているところだ。
 しかし、やはり部位欠損を治療するのはなかなかに大変である。

 ミリオンズがヤマト連邦を訪れている間、彼を放ったらかしにするのはもったいない。
 義足があれば、多少は動けるようになるはずだ。
 近頃冒険者活動に精を出しているノノンの監督をしてもらってもいい。

「あ、ありがとうございます。本当に何とお礼を申し上げればいいか……」

「気にするな。今後もよろしく頼むぞ。娘のノノンと共に、末永くハイブリッジ男爵家に貢献してくれればいい」

「は、はいっ! 娘ともども、誠心誠意尽くさせていただきます!」

 ニッケスは涙を流しながら頭を下げている。
 そして、俺はとある朗報に気がついた。
 彼が加護(小)の条件を満たしたのだ。


レベル?、ニッケス=シルファ
種族:ヒューマン
身分:平民
役割:元冒険者
職業:重戦士
ランク:C

HP:??
MP:??
腕力:高め
脚力:??
体力:??
器用:低め
魔力:??

残りスキルポイント:???
スキル:
斧術レベル4(3+1)
闘気術レベル3(2+1)
土魔法レベル1
??


 元Cランク冒険者ということもあり、ステータス上はかなり強い。
 ただ、ステータスに表示されていないデバフとして部位欠損がある。
 義足を装着したとはいえ、完璧ではない。
 その点を加味すれば、現在の適性ランクはDぐらいかな。

 まぁ、いずれ義手ができたり、より高性能の義足ができたり、あるいは治療魔法により完全回復したりすれば、全盛期の力を取り戻していくことも可能なはずだ。
 気長に行こう。

「あの……さっそく慣らしてみたいのですが……よろしいでしょうか?」

「ああ、構わないぞ。最初はハイブリッジ邸の敷地内を好きに歩いてみるといい。慣れてきたら、奥さんやノノンを連れて街に出てみるといいだろう」

「はい。ありがとうございます!」

 ニッケスが嬉しそうな顔で答える。
 そして、娘のノノンと共にこの場から出ていった。

「ネフィ……ご苦労だったな」

「まだまだこんなものじゃないんだよ。男爵さんにもらった潤沢な資金があれば、僕の魔導技術はさらに発展するんだよ」

「そうか。楽しみにしているよ」

 俺はジェイネフェリアの頭を撫でる。
 彼は気持ち良さそうに目を細めた。
 そして――
 パタリ。
 ジェイネフェリアが突然倒れた。

「お、おい、どうしたんだ!?」

 慌てて抱きかかえる。
 彼の顔は赤らんでおり、呼吸が荒かった。

「も、問題ないんだよ。ちょっと無理しすぎただけなんだよ。適当に寝れば回復するんだよ」

「寝不足か……よし、俺に任せておけ」

 治療魔法やポーションは、種類によって様々な効力を持つ。
 ただ、主に外傷や病気を癒すために使われるものだ。
 寝不足や疲労に対しては効きがイマイチである。
 とはいえ、全くの無意味というわけではない。

「ふふふ……。実は、とっておきの薬を開発していたんだ」

「え……? な、なんだか嫌な予感がするんだよ……」

 ジェイネフェリアの不安げな声をスルーしつつ、俺は準備を始めるのだった。

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