【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

903話 フレンダの記憶復元?

 フレンダや月に加護(小)を付与してから、数日が経過した。
 西の森の狩りは順調だ。
 連日のように狩りを行っている。
 俺はたまに顔を出す程度だが、雪月花やトミー、アランはほぼ皆勤だ。
 今日も元気に森に入っていることだろう。

「さて……。準備はいいな? フレンダ」

 俺は、ハイブリッジ男爵邸の第二リビングでそう呟いた。
 ここは大型クラン『ビリオンズ』の活動拠点でもある。
 仲間と何かする際は、ここを使うことが多い。
 今は、フレンダ、アイリス、サリエがこの場にいる。

「あは~。なんだかドキドキしてきたよ。本当に大丈夫なのかな?」

「成功するとは限らない。だが、もし失敗しても悪影響はほとんどないはずだ」

 俺たちが何をしようとしているのか?
 それは、フレンダの記憶の復元である。
 治療魔法には、記憶喪失を治す魔法があるのだ。
 ナーティアやパームスの記憶喪失を治療した実績もある。

 もちろん、高度な技術を必要とする魔法なので、100パーセント成功するとは限らない。
 だが、試す価値はあるだろう。

「じゃあ、始めるぞ。サリエ、アイリス。準備はいいか?」

「はい」

「オッケー」

 俺たち3人は魔力の波長を合わせていく。
 合同魔法の出番だ。

 ミリオンズには本来、他にも治療魔法の使い手がいる。
 マリアとリーゼロッテだ。
 合同治療魔法の出力だけを追求するならば、彼女たちも含めて5人で挑戦するのがいい。
 1か月ほど前に、ノノンの父である”岩塊”のニッケスの手足を治療した際には、5人での合同魔法『リザレクション・ヒール』を使用した。
 だが、今回は5人ではなく3人で挑戦する。

 決して手を抜いているのではない。
 なにせ記憶喪失――つまり脳に関する治療なので、とても繊細なコントロールが必要となる。
 失敗したときのリスクは小さいとはいえ、無理は禁物だ。
 難易度の高い5人での合同魔法ではなく、3人で挑戦する方が無難だろう。

「じゃあ、行くぞ」

「はい」

「うん!」

 3人の魔力を1つに合わせる。
 長い詠唱のあと、ついに魔法が発動する。

「「「【オールヒール】!」」」

 部屋の中が優しい光に包まれた。
 そして……

「あ! 頭が……」

「どうだ? 思い出せたか?」

「う~ん。ちょっと待って」

 フレンダが目を瞑りながら必死に思い出そうとしている。

「……。ダメみたい。自分がどこから来たのか、思い出せないや」

「そうか……」

 残念だが、こればかりは仕方がない。
 成功確率が低いことは承知していた。
 やはり5人での合同魔法の方が良かったか?
 だが、人数が増えれば出力が増す代わりに、失敗するリスクも増す。
 ニッケスのように手足の治療ぐらいならまだしも、脳へ治療魔法を掛けるのは慎重に行いたい。

「そう言えば、フレンダって完全な記憶喪失ではないよな?」

「え?」

「だってそうだろ? 自分の名前が分かっているんだから」

 彼女はフレンダ=ハートフィールドだ。
 完全な記憶喪失なら、名前すら思い出せないだろう。

「あっ。そのことだけどね……よく分からないんだけど、本当の名前は違うかもしれないの」

「どういうことだ?」

「私は森で倒れていたらしいんだけどね? その時に、こんなものを握りしめていたみたいなの」

 そう言って彼女が見せてきたのは、小さなキーホルダーだった。

「これは……」

「多分、飾りか何かなのかな? 文字がいくつか書いてあって、その中の一部だけ読めたの」

 俺はキーホルダーをよく見る。
 そこには、2行の文字があった。
 上の行には、フレンダ=ハートフィールドと書いてある。
 ただし、言語はこの世界のものではない。
 これは――

「カタカナじゃないか! どうしてこの文字が!?」

 この世界の言語は、地球のものとは異なる。
 日本語でも英語でもない。
 俺が普通に話したり読み書きできているのは、チートスキル『異世界言語』のおかげである。
 この世界でカタカナを見たのは初めてだ。

「ダーリンもこの文字が読めるの? 他の人にはなんて書いているか分からなかったけど」

「ああ……。俺はこれを読めるぞ。しかも、それだけじゃない」

「え?」

「その上に書かれている文字も読めるぞ」

「本当!? 教えて!」

 俺は、キーホルダーの上の方に書かれている文字に視線を向ける。
 それは、この世界ではヤマト連邦にしかないはずの『漢字』だった。
 フレンダは、カタカナは読めても漢字は読めなかったようだ。

「『しんの ちせ』と書かれているぞ」

 俺は漢字の読みを答える。
 漢字のままで言えば、『心野 友世』だな。
 たぶん人名だ。
 心野が名字で、知世が名前だろうか?
 両方とも、なかなかに珍しいように思える。

 まぁ、『東雲』や『神宮寺』という名字も珍しいし、『蓮華』『雪』『月』『花』という名前もあまり聞いたことがない。
 この世界のヤマト連邦は、地球における日本とはややネーミングセンスが違うようだな。

「シンノチセ?」

「ああ、そうだ。聞き覚えはないか?」

「うーん、あるようなないような……」

 フレンダは首を傾げている。
 だが、この名前にどこか引っ掛かりがあるようだ。

「……ん? いや、待てよ……?」

「どうしたの?」

「漢字には、いくつかの読み方があるんだ。『しんの ちせ』ではないのかもしれない」

 俺はそう思い当たった。
 例えば、蓮華の名字は『東雲』だ。
 これは『しののめ』と読む。
 だが、他にも『ひがしぐも』や『とううん』という読み方もできる。

 雪月花の『神宮寺』も似たようなものだな。
 こちらは『じんぐうじ』が正解だが、『かみみやでら』と読めなくもない。

 フレンダのキーホルダーに書かれていた、『心野 友世』という漢字。
 これの本来の読み方は――

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