【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
898話 満月を探して
タカシ、そしてフレンダの取り巻き二人は無事にその場から撤退した。
残されたのは、フレンダとブラックタイガーのみである。
『好き放題してくれたね……』
フレンダが母国語でそう呟く。
彼女自身、これがどこの国の言葉なのか理解していない。
彼女は記憶喪失の迷い人なのだ。
もはやこの場には彼女とブラックタイガーしかいないので、謎の言語に違和感を覚える者はいない。
だが、ブラックタイガーはフレンダの雰囲気が変わったことを明確に感じ取っていた。
明らかに、先ほどまでよりも強くなっていると。
ブラックタイガーは警戒を強める。
「グルルル……」
『痛みを返すよ』
フレンダは、両手を握りしめながらそう宣言する。
その瞬間、フレンダの体中に青白い魔力のようなものが浮かび上がった。
「グルッ!?」
ブラックタイガーはその様子に驚く。
しかし、すぐにフレンダの攻撃に備えようと身構える。
『聖光に変えて!』
フレンダが叫ぶと同時に、青白い魔力のようなものが上空へと上っていく。
ブラックタイガーはフレンダの動きを警戒していたのだが、その予想外の行動に一瞬だけ反応が遅れてしまった。
『【満月を探して】(セイクリッド・フルムーン)!!』
そして、ブラックタイガーの視界が真っ白に染まる。
「――――ッ!!??」
次の瞬間、ブラックタイガーは全身に強い衝撃を受けて地に伏していた。
強力な聖光によって襲われているのだ。
「――――!!!!」
『痛い? 重い? それが君への罰だよ』
ブラックタイガーは、地面に這いつくばりながらも、必死にフレンダの姿を探そうとする。
しかし、その目にフレンダの姿を見つけることはできなかった。
既に視力が失われているのだ。
『逃げてもいいよ? まともに動けるならね。ほら、自慢の硬い体でどうにかしてみれば?』
フレンダの言葉は通じていない。
それでも嘲笑の意味だけは伝わったのだろうか。
ブラックタイガーは、渾身の力をふりしぼって立ち上がろうとする。
――が、それは無駄なあがきだった。
『アーッハッハッハァ!!』
天から降り注ぐ聖光の前に、ブラックタイガーは立ち上がることすらできない。
そして、そのまま意識を失い、永久に目覚めることはなかった。
やがて、フレンダの魔法が解除された。
「……もう終わりか。光も少し弱めだったし……。もっとフレンダちゃんにダメージを与えていれば、楽に天に召されたのにね~」
興奮状態から覚めたフレンダは、いつも通りに戻る。
「まぁ、これでタカシちゃんからフレンダちゃんへの評価もうなぎのぼりだよね~」
彼女は、もはやタカシにメロメロであった。
ラスターレイン伯爵領で最初に見掛けたときには、さして興味を持てなかった。
そこそこ有望な新人らしいという程度の認識だ。
選別試験で、タカシのパーティメンバーであるアイリスに瞬殺されてしまってから、少し意識するようになった。
アヴァロン迷宮では、自分を含むBランク冒険者やラスターレイン伯爵家の面々を差し置いて、獅子奮迅の大活躍を見せたとも聞いている。
帰りの船では、リトルクラーケンとの戦いであられもない姿を晒してしまった。
そこで大きく意識するようになった。
「ダメ元で来てみて、正解だったよね~」
彼女は魅了魔法の使い手だ。
それと同時に、恋に恋する乙女でもある。
外見や戦闘能力だけなら、彼女のお眼鏡に叶う者は何人かいた。
しかし、『いざとなれば魅了魔法を使ってどうとでもなる』と考えてしまうと、途端に彼らへの興味を失ってしまうのだ。
もちろん魅了魔法の効力は永遠ではないし、そもそもフレンダが魅了魔法を日常生活では封印すればいいだけの話ではある。
だが、こういうのは気持ちの問題だ。
フレンダは、自分の魅了魔法が通じない相手を探していた。
彼女の第一目的は、魅了魔法が効かない素敵な男を探すこと。
そして第二の目的は、記憶を取り戻すことである。
自分がどこの国から来たのか、自分の家族がどこにいるのか、知りたい。
さらに言えば、どうやって魅了魔法やその他の戦闘技法を手に入れたかも思い出したいと思っている。
「あは~。あの子たちも、付き合わせちゃって悪かったかな~」
フレンダのパーティメンバーは二人いる。
Bランクのフレンダに対して、Cランクの二人だ。
ランクの高いリーダーがパーティを引っ張っていくのはよくあることである。
傍目には”取り巻き”にも見える。
実際、タカシも彼女たちのことを内心でそう呼んでいた。
しかし実態は、少しだけ異なる。
「フレンダちゃんの恩人だもんね~。これまでのお礼に、良い人を探してあげよっかな。タカシちゃん以外でだけど~」
フレンダの取り巻き二人。
その正体は、フレンダの恩人だ。
とある場所で倒れていたフレンダを、彼女たちが介抱してくれたのである。
当時の二人はDランク冒険者で、フレンダは行き倒れの無職。
親切な二人はフレンダの職を探したが、ひょんなことからフレンダに戦闘の才能があることが発覚。
そこからは三人でパーティを組むようになり、順調にランクを上げる。
そして、フレンダだけがBランクに昇格したこともあり、彼女がリーダーを務めるようになった。
元々年齢的にはフレンダが最年長だったため、特に問題なくこれまでやって来れた。
あとは、フレンダ以外の二人にも良い人が見つかれば、三人共がハイブリッジ男爵領に定住しても問題なさそうだ。
「あは~。とりあえず、ブラックタイガーをアイテムバッグに収納して~。タカシちゃん、驚いてくれるかな~?」
彼女は愛しのダーリンが喜ぶ顔を想像しながら、森の中を歩き始める。
左腕は折れているのだが、高ランク冒険者の彼女にとっては我慢できる程度の痛みでもある。
そんな彼女の様子を、物陰から伺っている怪しい者がいた。
(”魅了”のフレンダか……。やはり噂は真実……。我ら信徒でもないのに、どうやってあれほどの聖光を……?)
白ずくめの装束に全身を包んだ謎の人物が、訝しげな表情を浮かべる。
(新大陸の野蛮人どもめ……。神の御業を乱用する不届者に天誅を下したいところだが……。最優先事項を片付けてからだな。”勇者候補”タカシ……か)
その者は誰にも気付かれることなく、その場から消えたのであった。
残されたのは、フレンダとブラックタイガーのみである。
『好き放題してくれたね……』
フレンダが母国語でそう呟く。
彼女自身、これがどこの国の言葉なのか理解していない。
彼女は記憶喪失の迷い人なのだ。
もはやこの場には彼女とブラックタイガーしかいないので、謎の言語に違和感を覚える者はいない。
だが、ブラックタイガーはフレンダの雰囲気が変わったことを明確に感じ取っていた。
明らかに、先ほどまでよりも強くなっていると。
ブラックタイガーは警戒を強める。
「グルルル……」
『痛みを返すよ』
フレンダは、両手を握りしめながらそう宣言する。
その瞬間、フレンダの体中に青白い魔力のようなものが浮かび上がった。
「グルッ!?」
ブラックタイガーはその様子に驚く。
しかし、すぐにフレンダの攻撃に備えようと身構える。
『聖光に変えて!』
フレンダが叫ぶと同時に、青白い魔力のようなものが上空へと上っていく。
ブラックタイガーはフレンダの動きを警戒していたのだが、その予想外の行動に一瞬だけ反応が遅れてしまった。
『【満月を探して】(セイクリッド・フルムーン)!!』
そして、ブラックタイガーの視界が真っ白に染まる。
「――――ッ!!??」
次の瞬間、ブラックタイガーは全身に強い衝撃を受けて地に伏していた。
強力な聖光によって襲われているのだ。
「――――!!!!」
『痛い? 重い? それが君への罰だよ』
ブラックタイガーは、地面に這いつくばりながらも、必死にフレンダの姿を探そうとする。
しかし、その目にフレンダの姿を見つけることはできなかった。
既に視力が失われているのだ。
『逃げてもいいよ? まともに動けるならね。ほら、自慢の硬い体でどうにかしてみれば?』
フレンダの言葉は通じていない。
それでも嘲笑の意味だけは伝わったのだろうか。
ブラックタイガーは、渾身の力をふりしぼって立ち上がろうとする。
――が、それは無駄なあがきだった。
『アーッハッハッハァ!!』
天から降り注ぐ聖光の前に、ブラックタイガーは立ち上がることすらできない。
そして、そのまま意識を失い、永久に目覚めることはなかった。
やがて、フレンダの魔法が解除された。
「……もう終わりか。光も少し弱めだったし……。もっとフレンダちゃんにダメージを与えていれば、楽に天に召されたのにね~」
興奮状態から覚めたフレンダは、いつも通りに戻る。
「まぁ、これでタカシちゃんからフレンダちゃんへの評価もうなぎのぼりだよね~」
彼女は、もはやタカシにメロメロであった。
ラスターレイン伯爵領で最初に見掛けたときには、さして興味を持てなかった。
そこそこ有望な新人らしいという程度の認識だ。
選別試験で、タカシのパーティメンバーであるアイリスに瞬殺されてしまってから、少し意識するようになった。
アヴァロン迷宮では、自分を含むBランク冒険者やラスターレイン伯爵家の面々を差し置いて、獅子奮迅の大活躍を見せたとも聞いている。
帰りの船では、リトルクラーケンとの戦いであられもない姿を晒してしまった。
そこで大きく意識するようになった。
「ダメ元で来てみて、正解だったよね~」
彼女は魅了魔法の使い手だ。
それと同時に、恋に恋する乙女でもある。
外見や戦闘能力だけなら、彼女のお眼鏡に叶う者は何人かいた。
しかし、『いざとなれば魅了魔法を使ってどうとでもなる』と考えてしまうと、途端に彼らへの興味を失ってしまうのだ。
もちろん魅了魔法の効力は永遠ではないし、そもそもフレンダが魅了魔法を日常生活では封印すればいいだけの話ではある。
だが、こういうのは気持ちの問題だ。
フレンダは、自分の魅了魔法が通じない相手を探していた。
彼女の第一目的は、魅了魔法が効かない素敵な男を探すこと。
そして第二の目的は、記憶を取り戻すことである。
自分がどこの国から来たのか、自分の家族がどこにいるのか、知りたい。
さらに言えば、どうやって魅了魔法やその他の戦闘技法を手に入れたかも思い出したいと思っている。
「あは~。あの子たちも、付き合わせちゃって悪かったかな~」
フレンダのパーティメンバーは二人いる。
Bランクのフレンダに対して、Cランクの二人だ。
ランクの高いリーダーがパーティを引っ張っていくのはよくあることである。
傍目には”取り巻き”にも見える。
実際、タカシも彼女たちのことを内心でそう呼んでいた。
しかし実態は、少しだけ異なる。
「フレンダちゃんの恩人だもんね~。これまでのお礼に、良い人を探してあげよっかな。タカシちゃん以外でだけど~」
フレンダの取り巻き二人。
その正体は、フレンダの恩人だ。
とある場所で倒れていたフレンダを、彼女たちが介抱してくれたのである。
当時の二人はDランク冒険者で、フレンダは行き倒れの無職。
親切な二人はフレンダの職を探したが、ひょんなことからフレンダに戦闘の才能があることが発覚。
そこからは三人でパーティを組むようになり、順調にランクを上げる。
そして、フレンダだけがBランクに昇格したこともあり、彼女がリーダーを務めるようになった。
元々年齢的にはフレンダが最年長だったため、特に問題なくこれまでやって来れた。
あとは、フレンダ以外の二人にも良い人が見つかれば、三人共がハイブリッジ男爵領に定住しても問題なさそうだ。
「あは~。とりあえず、ブラックタイガーをアイテムバッグに収納して~。タカシちゃん、驚いてくれるかな~?」
彼女は愛しのダーリンが喜ぶ顔を想像しながら、森の中を歩き始める。
左腕は折れているのだが、高ランク冒険者の彼女にとっては我慢できる程度の痛みでもある。
そんな彼女の様子を、物陰から伺っている怪しい者がいた。
(”魅了”のフレンダか……。やはり噂は真実……。我ら信徒でもないのに、どうやってあれほどの聖光を……?)
白ずくめの装束に全身を包んだ謎の人物が、訝しげな表情を浮かべる。
(新大陸の野蛮人どもめ……。神の御業を乱用する不届者に天誅を下したいところだが……。最優先事項を片付けてからだな。”勇者候補”タカシ……か)
その者は誰にも気付かれることなく、その場から消えたのであった。
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