【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
884話 タカシ帰らず
チュンチュン。
小鳥がさえずる音で目が覚める。
「ん~……」
目を擦りながら上半身を起こす。
頭が重い。
二日酔いだろうか。
「痛ッ!」
突然、股間部に痛みを覚えた。
致命的な痛みではないが、無視できないレベルのものだ。
「なんだこれは? ……あ」
俺は自らの状況を確認するべく、周囲を見回す。
そして、思わず頭を抱えたのだった。
*****
時は遡る。
タカシがとある場所で目覚めるよりも、少し前のことだ。
ハイブリッジ男爵邸では、女性陣が慌ただしく駆け回っていた。
「た、タカシ様が昨晩帰られていないようです! それなのに寝入ってしまうなんて……、一生の不覚です!」
ミティが叫ぶ。
彼女はタカシの第一夫人だが、それと同時にタカシのことを仕え支えるべき主人としても見ている。
タカシの帰りが遅くなるときは、彼女はリビングや玄関先で出迎える習慣を持っていた。
しかしそんな彼女も、たまには寝落ちしてしまうこともある。
「落ち着きなよ、ミティ。子どもたちが泣いちゃう。多分だいじょうぶだって」
「そうそう。タカシのことだし、どうせ夜遊びでもしているんじゃないかな?」
アイリスとモニカが、慌てふためくミティを宥めている。
彼女たちもタカシのことは大切に思っているが、ミティほど心配性でもない。
一晩帰ってこないぐらいで動じることはなかった。
「すぴー、すぴー……。ふぇへへ、もう飲めませんよぉ……」
「zzz……。たくさん眠れて、幸せ~……」
「あー! ニムお姉ちゃんと花お姉ちゃん、こんなところにいたっ!」
マリアが空を飛び、声を上げる。
一晩の間に、ハイブリッジ男爵邸の庭に出来上がっていた無骨な土の塔。
その頂上付近で、ニムと花が気持ちよさそうに眠っていたのだ。
どうやら酔っ払って帰宅した後、自室には戻らず、ニムは土魔法を使って適当な塔を作ったようだ。
そして、そこで花と共に眠りについてしまったらしい。
「ふふん。まぁ、私はニムちゃんたちが帰ってきたことを知っていたわよ。タカシはともかく、三人は普通に心配だから」
「うう……。ご心配をお掛けしました。つい飲みすぎてしまって……」
そう言って、申し訳なさそうな顔をするサリエ。
彼女は治療魔法の使い手だ。
その気になれば、治療魔法でアルコールを分解することはできる。
だが、一定以上に酔っ払ってしまうと、それができなくなることはあり得る。
泥酔状態では魔力を上手く練ることができないというのもあるし、気分の良いほろ酔い状態では自らの酔いを覚ましたくなくなるという心理的な理由もあった。
「わたくしも、お酒は嫌いではありませんわ。タカシさんに、今度美味しいお酒を紹介していただきましょう」
「りーぜ殿、今はそんな場合ではないでござろう。たかし殿がいくら強くとも、泥酔状態であれば危険かもしれぬ」
リーゼロッテの言葉を、蓮華が嗜める。
「お館様がご不覚を取られる姿は想像できませんが……。しかし、酷い酔いと共に寒空の下で一夜を明かされた可能性はありますね。体調を崩されていないか、心配です。わたし、探してきます!」
レインが飛び出していく。
彼女はミリオンズの中で最も新入りだ。
タカシに心酔しているという点では、古株のミティと同じように見える。
だが、タカシの実力に対する二人の評価の方向性はやや異なっている。
ミティは最初期からタカシと行動を共にしてきた。
『困難にも堅実に取り組んでいく』『類まれな成長スピードを誇る』『いずれは歴史に名を残す傑物となるだけの器がある』など、彼女からタカシへの評価はかなり高い。
まさに心酔していると言ってもいいだろう。
だが、実力そのものを過大評価はしていない。
クイックマリモ戦、ガルハード杯、ラスターレイン伯爵家戦など、苦戦を強いられたことも多かった。
彼女はタカシのことを、『支えるべき伴侶にして主人』として見ている。
一方のレインはどうか?
彼女がタカシの元でメイドとして働き始めたのは、彼の冒険者活動が軌道に乗ってからの話だ。
その上、ミリオンズとして活動を共にし始めたのはごく最近である。
彼女が知っているタカシの姿は、『Bランク冒険者にして男爵家当主でもある常勝無敗の超人』といったものだ。
ミティとは異なり、彼女はタカシの実力そのものを信じ切っている。
タカシならどんな相手だろうと負けないと。
もちろん、彼女の視点も決して間違いとは言えない。
タカシが並み居る強敵を打ち破ってきたのは事実なのだから。
とはいえ、そんな彼でも泥酔状態で寒空の下に放置されれば体調を崩しかねない。
「あっ! 待ちなさい、レイン! 私も行きます!!」
レインに負けじと、ミティも駆け出す。
「ミティお姉ちゃん、レインお姉ちゃん。なんだか、西の門のあたりに人が集まっているみたいだよっ! そこにタカシお兄ちゃんがいるのかも!」
マリアが上空から叫ぶ。
「わかりました!」
「承知です!」
ミティとレインは、競い合うように街を駆けていく。
――西門を抜けた彼女たちが見たものは、たくさんの群衆であった。
彼らは一本の大樹を取り囲み、なにやら興味深そうに眺めている。
その視線の先にあるものは――
小鳥がさえずる音で目が覚める。
「ん~……」
目を擦りながら上半身を起こす。
頭が重い。
二日酔いだろうか。
「痛ッ!」
突然、股間部に痛みを覚えた。
致命的な痛みではないが、無視できないレベルのものだ。
「なんだこれは? ……あ」
俺は自らの状況を確認するべく、周囲を見回す。
そして、思わず頭を抱えたのだった。
*****
時は遡る。
タカシがとある場所で目覚めるよりも、少し前のことだ。
ハイブリッジ男爵邸では、女性陣が慌ただしく駆け回っていた。
「た、タカシ様が昨晩帰られていないようです! それなのに寝入ってしまうなんて……、一生の不覚です!」
ミティが叫ぶ。
彼女はタカシの第一夫人だが、それと同時にタカシのことを仕え支えるべき主人としても見ている。
タカシの帰りが遅くなるときは、彼女はリビングや玄関先で出迎える習慣を持っていた。
しかしそんな彼女も、たまには寝落ちしてしまうこともある。
「落ち着きなよ、ミティ。子どもたちが泣いちゃう。多分だいじょうぶだって」
「そうそう。タカシのことだし、どうせ夜遊びでもしているんじゃないかな?」
アイリスとモニカが、慌てふためくミティを宥めている。
彼女たちもタカシのことは大切に思っているが、ミティほど心配性でもない。
一晩帰ってこないぐらいで動じることはなかった。
「すぴー、すぴー……。ふぇへへ、もう飲めませんよぉ……」
「zzz……。たくさん眠れて、幸せ~……」
「あー! ニムお姉ちゃんと花お姉ちゃん、こんなところにいたっ!」
マリアが空を飛び、声を上げる。
一晩の間に、ハイブリッジ男爵邸の庭に出来上がっていた無骨な土の塔。
その頂上付近で、ニムと花が気持ちよさそうに眠っていたのだ。
どうやら酔っ払って帰宅した後、自室には戻らず、ニムは土魔法を使って適当な塔を作ったようだ。
そして、そこで花と共に眠りについてしまったらしい。
「ふふん。まぁ、私はニムちゃんたちが帰ってきたことを知っていたわよ。タカシはともかく、三人は普通に心配だから」
「うう……。ご心配をお掛けしました。つい飲みすぎてしまって……」
そう言って、申し訳なさそうな顔をするサリエ。
彼女は治療魔法の使い手だ。
その気になれば、治療魔法でアルコールを分解することはできる。
だが、一定以上に酔っ払ってしまうと、それができなくなることはあり得る。
泥酔状態では魔力を上手く練ることができないというのもあるし、気分の良いほろ酔い状態では自らの酔いを覚ましたくなくなるという心理的な理由もあった。
「わたくしも、お酒は嫌いではありませんわ。タカシさんに、今度美味しいお酒を紹介していただきましょう」
「りーぜ殿、今はそんな場合ではないでござろう。たかし殿がいくら強くとも、泥酔状態であれば危険かもしれぬ」
リーゼロッテの言葉を、蓮華が嗜める。
「お館様がご不覚を取られる姿は想像できませんが……。しかし、酷い酔いと共に寒空の下で一夜を明かされた可能性はありますね。体調を崩されていないか、心配です。わたし、探してきます!」
レインが飛び出していく。
彼女はミリオンズの中で最も新入りだ。
タカシに心酔しているという点では、古株のミティと同じように見える。
だが、タカシの実力に対する二人の評価の方向性はやや異なっている。
ミティは最初期からタカシと行動を共にしてきた。
『困難にも堅実に取り組んでいく』『類まれな成長スピードを誇る』『いずれは歴史に名を残す傑物となるだけの器がある』など、彼女からタカシへの評価はかなり高い。
まさに心酔していると言ってもいいだろう。
だが、実力そのものを過大評価はしていない。
クイックマリモ戦、ガルハード杯、ラスターレイン伯爵家戦など、苦戦を強いられたことも多かった。
彼女はタカシのことを、『支えるべき伴侶にして主人』として見ている。
一方のレインはどうか?
彼女がタカシの元でメイドとして働き始めたのは、彼の冒険者活動が軌道に乗ってからの話だ。
その上、ミリオンズとして活動を共にし始めたのはごく最近である。
彼女が知っているタカシの姿は、『Bランク冒険者にして男爵家当主でもある常勝無敗の超人』といったものだ。
ミティとは異なり、彼女はタカシの実力そのものを信じ切っている。
タカシならどんな相手だろうと負けないと。
もちろん、彼女の視点も決して間違いとは言えない。
タカシが並み居る強敵を打ち破ってきたのは事実なのだから。
とはいえ、そんな彼でも泥酔状態で寒空の下に放置されれば体調を崩しかねない。
「あっ! 待ちなさい、レイン! 私も行きます!!」
レインに負けじと、ミティも駆け出す。
「ミティお姉ちゃん、レインお姉ちゃん。なんだか、西の門のあたりに人が集まっているみたいだよっ! そこにタカシお兄ちゃんがいるのかも!」
マリアが上空から叫ぶ。
「わかりました!」
「承知です!」
ミティとレインは、競い合うように街を駆けていく。
――西門を抜けた彼女たちが見たものは、たくさんの群衆であった。
彼らは一本の大樹を取り囲み、なにやら興味深そうに眺めている。
その視線の先にあるものは――
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