【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

881話 ラーグの街の外壁修繕作業

「いくぞ! 【ロック・デ・ウォール】」

 ゴゴゴ……!
 俺の土魔法により、大地の一部がせり上がる。

「――わ、わたしもいきます! ――【ロック・デ・ウォール】!!」

 ゴゴゴゴゴ……!
 ニムの土魔法により、大地が隆起していく。
 俺がやった時よりも、明らかに早くそして広範囲だ。
 やはり、俺とは魔法の練度が違うよ。

「おぉ~」

「すげぇな……。一瞬で壁ができあがったぞ」

「さすがは、ニム様だ」

「領主様もすごいぞ!」

 周囲の一般労働者から感嘆の声が漏れる。
 俺たちは今、ラーグの街の外壁を修繕しているところだ。
 超一流の土魔法使いであるニムがメインとなり、地面の一部を隆起させて外壁を補強していく。
 俺はそれを補佐する。
 その他の一般労働者が、細部を仕上げていく感じだ。

「花ちゃんも手伝っちゃうよ~。これもタカシさんのためだもんね~」

「ありがとう。だが、本来の花の出番はもう少し後だ。外壁の修繕や補強作業にはほどほどでいいぞ」

「わかったよ~」

 花もしっかりと働いてくれている。
 彼女は労働嫌いだ。
 ここ最近は、ハイブリッジ男爵邸で食っちゃ寝の生活をしている。
 少し前までは王都へ同行して護衛任務をこなしてくれていたわけだし、晴れての長期休暇のようなイメージだな。

 え?
 怠惰に食っちゃ寝をしている者を叱らないのかって?
 ……まぁ、いいんじゃないかな。

 ミリオンズやハイブリッジ男爵家配下の者には勤勉な者が多い。
 もちろん勤勉な者と怠惰な者であれば、前者の方が重用に値する。
 だが、あまりにも全員が全員マジメに働きすぎると、それはそれで息苦しい職場になりそうだ。
 それに、ハイブリッジ男爵家関係者がフル稼働して領地を回すのが当たり前になると、いざという時に余裕がなくなる。
 働きアリの法則みたいな話で、余剰労働力はむしろあった方がいいだろう。

 花みたいな者がいてもいい。
 それに、彼女は意地でも部屋から出てこないわけではない。
 俺が頼めば、こうして働いてくれることもあるし。

「ふむ……。魔法で仕上げられるところは粗方終わったか」

「そ、そうですね。お疲れ様でした」

 俺とニムは土魔法の発動を切り上げる。
 魔法は便利だ。
 人手よりも高出力かつ広範囲で作業を進めることができる。

 ただ、どうしても細部の仕上げは荒くなりがちだ。
 最後は人手で仕上げる必要がある。
 それをしなくても応急措置としての外壁ぐらいの役割は果たせるが、風化による消耗は早まる。
 俺たちが不在の間に魔物や盗賊から街を守ってもらうためには、やはり細部を人手で仕上げる必要がある。

「ニム様の魔法は何度見てもすげぇぜ……!」

「領主様の魔法だって引けを取らねぇぜ。一体いくつの魔法を修めているってんだ?」

「大枠だけとは言え、人手でやるのと比べて効率が段違いすぎる……!」

「ぜぇ、ぜぇ……。お前ら、口を動かすより手を動かせ!」

「「へいっ!」」

 一般労働者たちは、汗水たらしながら働いている。
 彼らも仕事なのだから当然だ。
 土木工事における土魔法は、言わば大型機械のようなもの。
 とても便利なのだが、その分作業が早まり他の作業員の負担が増えてしまう。

「私も少しばかりお手伝いいたしましょう。――【エリアヒール】」

 サリエが治療魔法を使うと、周囲一帯の空気が清浄化されたように感じる。
 彼女は超一流の治療魔法使いだ。
 治療魔法は本来、外傷や病の治療を目的とする。
 だが、副次的な効果として体力の回復効果もある。
 彼女の治療魔法を受け、疲労困ぱいしていた労働者たちの顔に生気が戻る。

「こりゃあ……! 身体の芯まで癒されるようだぜ!」

「まるで、温泉に入った後のようだぜ!」

「ありがたい! まだまだ頑張って働けるぞ!」

「「「おおぉぉぉぉ!!!」」」

 サリエのおかげで、周囲の者たちの士気が高まる。
 元々彼らはやる気十分だったが、更に気合が入ったみたいだ。
 サリエは、本当に優秀な治療魔法使いだな。
 俺が求めていた以上の結果を出してくれる。

 ちなみに、リンドウの街の温泉はまだ一般に開放はしていない。
 だが、俺が少し前に入った感じでは問題なさそうな感じだった。
 ブギー頭領たちも入っていたし。

 というわけで、リンドウやラーグの住民限定でお試しの入浴会を行っている。
 この場にいる者たちの一部も、温泉を体験済みなようだ。
 あそこの温泉は湯量も豊富で、源泉かけ流しの露天風呂として十分に機能するだろう。
 完成次第、大々的に宣伝するつもりだ。
 『竜胆(りんどう)の温泉』と銘打って。

「た、タカシさん。わたしたちの土魔法の出番は終わりました。次は、”あれ”を植えましょう」

「了解だ。ええっと、これだな」

 俺はアイテムボックスから、とある苗木を取り出す。

「それは何ですか? 見たことのない木です」

「花ちゃんも知らないな~」

 サリエと花がそう言う。
 この二人は植物魔法使いであり、植物や木々の知識が豊富だ。
 特に花は冒険者として各地を回っていたし、ハイブリッジ領の農業改革にも参加していた。
 そんな彼女たちが知らないということは、この苗木は相当に珍しいものだということである。

「これは聖樹の苗木だ。王都の露店でニムが見つけてくれたんだよ」

「は、はい。何でも”ひみつのなえぎ”ということで、銅貨5枚で売っていました」

 俺とニムはそう説明する。

「秘密の苗木? 銅貨5枚なんて……怪しくありませんか?」

 サリエが疑っている。
 銅貨5枚は、日本円に換算すれば500円ぐらいだ。
 苗木が500円。
 ありふれた種の苗木ならば高めだが、希少な種の苗木ならばかなり安いと言っていいだろう。
 聖樹の苗木とうそぶく割にこの値付けなので、怪しさはある。

「でもでも~。変わった魔力を放っているのは感じるよ~。普通の苗木じゃないことは確かだよね~」

 花は興味津々といった様子だ。
 確かに、この苗からは何か不思議な力を感じる。

「まぁ、とりあえず植えてみればいいだろう。植物もしくは土魔法系統の魔力を与えれば急成長して、後は勝手に育ってくれるらしい」

「それはすごいですね……」

「本当かなぁ~」

 サリエは感心しているが、花は半信半疑の様子なのであった。

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