【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

878話 良い子だ

 俺はブギー頭領たちと合流した。
 俺が領主であることを知った串焼き屋の店長は、驚きすぎて言葉を失ってしまった。
 今は、なんとか立ち直って串焼きの納入作業を進めているところだ

「よっと……。ここでいいのか? 串焼きの納入場所は?」

「へ、へいっ! そこに置いてくだされば結構です!」

「分かった。では、後は任せるぞ。改めて、美味い串焼きをありがとう」

「は、はいぃっ! こちらこそ、ありがとうございましたぁぁっ!」

 串焼き屋のおっちゃんがとてもかしこまっている。
 俺としては、極端に身分をひけらかす気はないのだが……。
 まぁ、アランのように『神』呼ばわりしてきたり、地面に頭を擦り付けて拝んできたりしないだけマシか。

「ハッハ! ちょっと早いが、会食の準備を急いで進めるか!」

「そうですね。タカシ殿、少しだけお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」

「もちろんだ。早めに来てしまったのは俺の方だし」

 俺はブギー頭領たちの案内のもと、大会議室に入った。
 数時間前に会議を行なった場所と同じ部屋だが、レイアウトは少し変わっている。
 大きなテーブルにテーブルクロスが敷かれ、その上に豪華な食器類が並べられていた。

「ふふっ。どんなお料理が出てくるか、楽しみだねっ!」

「ああ。リンドウならではの食文化もあるようだしな」

 ラーグの街とリンドウの街。
 隣同士ではあるが、西の森を隔てており距離はそれなりにある。
 魔法の絨毯を使えばさほどの時間は掛からないが、徒歩なら数日以上掛かるぐらいの距離だ。

 ラーグの街や近隣の村からの移住者が多く、極端に文化が異なるわけではない。
 しかしそれでも、採れる食材や環境の違いから、多少の差異はあるようだ。
 そういった違いを楽しむのも、今回の視察の醍醐味かもしれないな。
 そんなことを考えながら待っていると、料理が運ばれてきた。

「わー、おいしそぉ……」

「見たこともないほどすごい料理です」

「…………(じゅるり)」

 リン、ノノン、ロロが目を輝かせている。

「ハッハ! さすがはジョーだぜ。これ全部、最高級の素材を使ってるんじゃねぇか?」

「その通りですよ。今回はタカシ殿が出席されるということですから、最高のものをと思いまして」

「相変わらず、仕事が丁寧だよなぁ! さすがは俺の右腕だ!!」

「恐縮です。これもタカシ殿のため、引いては頭領の夢のために必要なことですので」

 ブギー頭領とジョー副頭領は、笑顔でそんな会話をしている。
 どうやら、二人は相当に仲が良いらしい。
 まぁ、俺が関わるより前から二人でブギー盗掘団をまとめ上げていたわけだしな。

「ひゃっほぉ! こりゃ美味そうだ! タカシ親分、オレも食べていいんだよな!?」

「うむ。キサラもトパーズも、たくさん食べるといいぞ」

「っしゃぁ!! さっすがタカシ親分!!」

「ありがとうございます。男爵様には感謝するばかりです」

 キサラとトパーズが喜んでいる。
 普通は、奴隷に豪勢な料理を食べさせることはない。
 だが、ハイブリッジ男爵家の配下は例外だ。
 甘やかすことで忠義度を稼いでいく計画である。

「じゃあ早速――」

「待て、キサラ」

 料理に手を伸ばそうとしたキサラを止める。

「どうして止めるんだよ? まだ何かあんのか?」

「ああ。料理がまだ出揃っていない。会食の参加者が全員揃ったら俺が挨拶するから、その後だな」

「えぇ……。早く食いたいんだけどなぁ」

「我慢しろ。もう少しの辛抱だ」

「――いいや、我慢できないね!」

 キサラはそう言うなり、再び料理に手を伸ばす。
 さっき串焼きを食べたばかりだろうに。
 少しの我慢もできないなんて、子どもみたいな奴だ。

 やはり盗賊として好き勝手生きてきただけあって、欲望に忠実なのか?
 彼女が俺の妻であれば、これぐらいのワガママには目を瞑ろう。
 彼女が俺の一般配下であれば、ギリギリ許容できなくもないワガママだ。
 しかし、彼女は俺の奴隷――しかも犯罪奴隷である。
 このような暴走を見過ごしていては、ハイブリッジ男爵家全体が侮られることにも繋がりかねない。
 ここは――

「キサラ」

 俺は静かに、しかし有無を言わせない口調で言う。

「ひっ……」

 俺の雰囲気が変わったことに気づいたのだろう。
 キサラがピタリと手を止め、息を呑んだ。

「我慢しろ。いいな?」

「……はい」

「よし。良い子だ」

 俺は優しく微笑みかける。
 すると、キサラの顔が真っ赤に染まった。
 俺たちがそんなやり取りをしていると、3人の採掘場幹部たちが近づいてきた。

「ハッハ! あんなにジャジャ馬だった嬢ちゃんも、タカシの坊主の前だと形無しだな!」

「まったくです。ヤンチャ娘をここまで従順にするとは……。さすがはタカシ殿です」

 ブギー頭領とジョー副頭領がそんなことを言う。

「でも……私はまだ納得しきれません」

「ん? 何か不安でもあるのか? ケフィ」

「そっちの人は、まだ何か企んでいるんじゃないですか? こっちの脳筋みたいな人より、そっちの腹黒そうな人の方が危険だと思います!」

 ケフィはキッと睨むような視線で、トパーズを見たのだった。

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