【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

875話 魔法の絨毯で空を飛ぶ全裸七人衆

 俺たちが温泉でゆっくりしていたところ、少し離れたところから話し声が聞こえてきた。

「ふむ……」

「どうかしたのか? タカシ親分」

 キサラが尋ねてくる。
 俺は聴覚強化のスキルを持っているので、離れたところ会話も聞こえる。
 だが、キサラはそうではないようだ。
 身体能力や知覚能力にそこそこ優れている彼女ですらそうなのだから、非戦闘員のトパーズやノノンはなおさらだな。
 みんな、のほほんと湯船に浸かっている。

「どうやら、来客らしい。たくさんの男たちがこの温泉に向かってきている」

 ブギー頭領、ジョー副頭領、それに主任採掘師コンビやその他の一般鉱夫たちの気配を感じる。
 ケフィは……いないようだな。
 この温泉はまだ開発中で男湯と女湯に分けられていないしな。

 元Eランク冒険者の少女ケフィに、荒ぶる鉱夫たちと混浴させることは酷か。
 彼女にも温泉を満喫してもらえるよう、開発を今後も進めてもらう必要がある。
 ――いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

「は、早く出ましょうよ」

「そ、そうだぜ! オレは男共と風呂に入る趣味はねぇ!」

「騎士様ぁ……」

 トパーズ、キサラ、ノノンが慌てる。
 確かに、このままではマズイ。
 彼女たちの裸体が、男共の前に晒されることになる。

「ま、間に合うでしょうかぁ?」

「急いで着替えようよっ!」

「…………(こくこく)」

 リン、マリア、ロロも慌てている。
 そうこうしている内に、どんどん近づいてくる男たちの足音。
 着替えている時間などない。

「ここは俺に任せておけ。――【クロック・アップ】!!」

 俺は新しく覚えた時魔法を発動する。
 自らの時の流れを加速し、超速で移動できるようになる魔法だ。
 こんなこともあろうかと、イリーナから教えてもらっていて良かったぜ。

「はっ! とうっ! ――そして【レビテーション】!」

 俺は脱衣場からみんなの着替えを素早く回収し、アイテムボックスに収納する。
 そして湯船に戻り、魔法の絨毯にみんなを乗せて露天風呂の上空へと飛び上がった。

「ハッハ! 相変わらずいい眺めだぜ!」

「おぼろげにタカシ殿の気配を感じた気がしましたが……。気のせいだったようですね」

「ひゃっはー! 俺が一番乗りだぜ!」

「ひーはー! なんの、俺だぁ!!」

 俺たちと入れ替わるように、男共が温泉に入ってきた。
 間一髪だった。
 危ない危ない。

「…………あの」

「しっ!」

 何かを言おうとしたトパーズに、俺は人差し指を唇に当てて黙らせる。
 ここは温泉の上空。
 黙っていればまず存在に気付かれることはないはずだが、声を出せばその限りではない。

(静かにするんだ。このまま高度を上げて、ゆっくりとこの場を後にする)

 俺は小声で指示を出す。

(わ、分かりました)

 トパーズは素直に従ってくれた。
 他のみんなも俺の指示に従い、無言である。
 しばらくして、温泉から無事に離れることができた。

「ここまで来ればもう安全だ。すまなかったな、温泉を中断させてしまって」

「そ、それはいいんだけどよぉ……。タカシ親分……」

 キサラを始め、みんながモジモジしている。

「どうした?」

「着替えを……出してくれよぉ……」

「ああっ! しまった!! すまない! すっかり忘れていた!」

 俺は慌ててアイテムボックスを開き、みんなの着替えを手渡す。
 俺、マリア、リン、ロロ、ノノン、トパーズ、キサラ……。
 今の俺たちは、全員が全裸だ。
 魔法の絨毯で空を飛ぶ全裸七人衆。
 誰かに目撃されたらマズイところだったぜ。

 ちなみにだが、全裸でも特に寒くはない。
 魔法の絨毯には、風の遮断機能や気温の調整機能があるからだ。

「ありがとうございますぅ」

「助かります」

「さすがはタカシお兄ちゃんだねっ! マリアはこのままでもいいけど……」

「…………(ぎょっ)」

 リンとノノンが服を受け取り、着始める。
 そんな中、マリアがとんでもないことを言い出し、ロロが目を見開いて驚いていた。
 マリアもすっかり上級者になってしまったな……。
 バルダインにバレたら、殴り飛ばされるかもしれない。

「よし、みんな着終わったな」

「いえ……。あの……男爵様……?」

「どうした?」

「……が、ないようなのですけど……」

「え? なんだって?」

 よく聞こえなかった。
 何かがないようだ。

「その……パンツです。女性用の下着なんですけど……。なぜか、私のだけなくて……」

「じ、実はオレのもないんだ。タカシ親分のアイテムボックスに残ってないか?」

 トパーズとキサラが言う。
 ああ、パンツか。
 彼女たちのパンツは、入浴前の段階で俺が失敬していた。

 先ほど回収した着替えと同じアイテムボックスに入れていたわけだが、その中でも収納先は少し異なる。
 ちゃんと、パンツはパンツでアイテムボックスの中に入れたまま確保している。

「ないぞ」

「え?」

「ないと言っている。俺のアイテムボックスには、お前たちのパンツなど入っていない」

「で、でも……」

 トパーズが抗議の視線を向けてくる。
 彼女は結構羞恥心が強いタイプのようだし、ノーパンは気が引けるのだろう。

 ついでに言えば、リン、ロロ、ノノンもノーパンだな。
 ファイティングドッグとの戦いなどでお漏らしをした彼女たちのパンツは回収済みである。

「なにせ急いでいたからな。脱衣場の中に落としてきたのかもしれん。もしくは、お前たちが着替える時に風に飛ばされて落としたんじゃないか?」

「いやいや、この魔法の絨毯には風を遮断する機能があるじゃねぇか。タカシ親分、ちゃんとアイテムボックスの中を確認してくれよ」

 キサラが食い下がる。
 元盗賊のくせに、パンツぐらいで騒ぎやがって……。

「いいじゃないか、パンツの一枚や二枚。何なら、俺が今後買ってきてやるよ」

「そういう問題じゃねぇだろ!?」

「うぅ……。すぅすぅします……」

 キサラとトパーズが騒ぐが、俺は無視することにした。
 ふふふ……。
 男爵家の当主である俺にかかれば、配下のパンツをこうして好き放題に手に入れることができるというわけだ。
 貴族になって本当に良かった。
 俺は満足げに微笑みつつ、森の上空を進んでいったのだった。

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