【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

865話 リンドウ会議

 俺はヤックルという男を、『リンドウ』の治安維持隊隊長に任命した。
 ちなみにリンドウというのは、採掘場周辺に広がる街のことだ。
 ラーグの街に比べるとまだまだ小さいが、それでも少しずつ住民が増えてきた。

 最初は、俺たちが捕らえたブギー盗掘団にそのまま採掘を任せていた。
 その後トリスタなどの采配により、一般の鉱夫を追加した。
 『意外に悪くない労働環境だった』『いや、むしろ普通に街で働くよりも稼げる』などという口コミが広がり、腕力自慢の男たちが周辺の街からやって来るようになった。
 宿泊施設、道具屋、マッサージ屋、食堂などなど……。
 リンドウの施設はどんどん充実していっている。

 そして今回、黒狼団、白狼団、闇蛇団、灰狼団などといった無法者の鉱山奴隷たちを大量に追加した。
 領都であるラーグにはまだ及ばないものの、それなりの規模になってきたと言えるだろう。
 そろそろ治安の乱れが不安なところだった。
 ラーグの街の衛兵をシフト制で派遣してはいたが、どうしても限界があるからな。
 ヤックルが今後のリンドウの平和を守っていくことになる。

「さて。それでは、場所を移して話をしようか。とりあえず落ち着ける場所に案内してくれ。ヤックル、お前も来い」

「はい!」

「タカシ殿、こちらに部屋を取っております。ご案内します」

 俺たちは、ジョー副頭領の後について行く。
 群衆たちも、自然と道を開けるように左右に分かれた。

 案内されたのは、大きめの会議室のような部屋だ。
 中に入ると、既に数名の人間が席に座って待っていた。
 ブギー頭領、ジョー副頭領、ケフィ統括あたりに次ぐ、この採掘場の幹部クラスの面々だな。

 俺は上座に案内される。
 キサラとトパーズは、とりあえず俺の後方で待機だ。
 ちなみにマリア、リン、ロロ、ノノンは、会議には不参加でこの街を見て回っている。

「みんな、今日は集まってくれてありがとう。さっそくだが、報告を頼む」

「ハッハ! まずは採掘量の増減についてだが――」

 そこからは、ブギー頭領を始めとした幹部たちからの報告が続く。
 採掘量の増加傾向、予想外なトラブルの発生、周辺区域の開発状況など。
 一通り話を聞いて、俺は大きくうなずく。

「よし。それじゃあ、それぞれの対策を練ろう。まずは――」

 それから1時間ほどに渡って話し合いが行われた。
 採掘量を増やすための工夫や、新たな技術の導入、トラブルへの対処方法などだ。
 採掘場の未来を担う重要な案件だけに、みな真剣に取り組んでいるようだ。
 彼らは優秀なので、俺はかなりの権限を彼らに認めている。

 それなのに俺がわざわざやってきた理由は、大きく3つ。
 領主でしか判断できないような判断を行い許可を与えること。
 ちょっとした現代知識チートを活用して多少のアドバイスを行うこと。
 そして、実際に現場を視察して状況を確認することだ。

 なんでもかんでも俺が手を下すわけではないので、会議も極端に長引いたりはしない。
 一通りの議題を処理し、ヤックルの紹介も終えた。

「――よし。これで今日の議題は終了だな。明日以降も引き続き頼む」

「ハッハ! 任せておけ!」

「タカシ殿の援助のおかげで、ますます採掘が進むというものです」

「大頭領さまの采配があれば、このリンドウの発展は確約されたようなものです。私もがんばっていきます!」

 ブギー頭領、ジョー副頭領、ケフィ統括が口々に言う。

「おう。期待しているからな」

 俺がそう返すと、3人を始めとした幹部陣は笑顔を浮かべた。

「ところで、そっちの嬢ちゃんたちは一体誰なんだ? ただの見学か?」

「おっと……忘れるところだった。この2人は、それぞれ黒狼団と闇蛇団の構成員だった女たちだ」

「ふむ……。最近追加された、あの荒くれ者たちの仲間か」

「そうだ。先ほどの報告では、大きな問題はなく働いてくれているようだったな。この2人にも、今後はリンドウで働いてもらおうと思っている。――ほら、2人とも。自己紹介しろ」

 俺はキサラとトパーズを前に押し出した。
 すると渋々といった感じで前に出た。

「オレはキサラだ。タカシ親分の命令だから仕方なく働くが、オレはお前らの部下になんてなるつもりはないからな。そこをよく覚えておけよ!」

 ふんっと鼻息を荒くしながら、堂々と言い放つ。
 うーん……。
 まだまだ反抗的だな。
 俺は女に甘いから、厳しく指導するのは苦手なんだよなぁ……。

「私の名前はトパーズ。上司は男爵様です。それに、かつての上司であるロッシュ様もこちらで働いているはず……。いずれは私たち『旧・闇蛇団』の勢力がこの街を支配しますので、覚悟しておいてくださいな」

 にっこりと微笑みながら、朗々と語る。
 おおぅ。
 なんか凄いこと言ってるな……。

「おい、嬢ちゃんたち。それはどういう意味だ!?」

「はい? そのままの意味ですけど」

「あ、あなたねぇ!!」

 ケフィを始め、数人の幹部たちが激高して立ち上がった。
 あまり良くない雰囲気だ。

「やめろ、みんな」

「ぐっ……」

 俺は、今にも飛びかかりそうな勢いで立ち上がったケフィたちを制する。

「ケンカを売ってどうする。彼女たちは元盗賊なんだから、少々態度が悪いぐらいは許してやれ」

「し、しかし!」

「いいから座れ。これからは一緒に仕事をしていく仲間になるんだから、仲良くやっていこうぜ」

「……納得できません! いくら大頭領のご指示であっても、こんな人たちと……」

 ケフィを始め、他の幹部たちも不満げだ。
 まぁ、気持ちは分かる。
 というか、俺も計算外だった。
 キサラとトパーズが、まだこれほどの反抗心を持っていたとは……。

「なら、こうしよう。俺がこの2人を”説得”する。数時間後、生まれ変わった2人の様子を見て最終判断をしてくれ」

「……わかりました。タカシ殿がそこまで言うのであれば」

「ハッハ! 楽しみにしてるぞ!」

「大頭領のご命令なら、仕方ありませんね」

 幹部たちに見送られつつ、俺はトパーズとキサラを連れて、大会議室を後にしたのだった。

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