【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

850話 ナオンとナオミ

 大型クラン『ビリオンズ』を結成してから数日後――。

「はぁっ! そこだ!!」

 俺は『北の練習場』にて、模擬戦を行っていた。
 対戦相手は、治安維持隊の隊長ナオンだ。

「くっ! まだです!!」

 ナオンは木剣で斬りかかってくるが、俺は難なく避ける。

「甘い!」

「ああっ!!」

 俺はナオンの木剣を弾き飛ばし、首元に切っ先を突き付けた。

「俺の勝ちだな」

「はい……」

 ナオンが悔しそうに俯いた。

「動きに無駄が多い。もっと相手の動きを見て、フェイントを織り交ぜろ」

「はい! ありがとうございます!!」

 ナオンは立ち上がり、頭を下げてくる。

「だが、腕は上がったんじゃないか? 元々強かったが、改めて基礎力を感じたぞ」

「本当ですか!?」

「ああ。ナオンの動きには、以前とは違う気迫のようなものを感じる」

「お褒めいただき光栄です!! 精進してまいります!」

 ナオンがやる気に満ちた目で言う。

「お前の直属の部下も徐々に力を付けてきている。悪くないぞ」

 俺は少し離れたところで倒れ込んでいる5人の男たちに視線を向ける。
 彼らは、ナオンが王都騎士団の小隊長だった頃からの部下だ。
 ナオンが職を辞してハイブリッジ家に仕えるにあたり、彼らも付いてきた感じだな。

 治安維持隊隊長のナオンに、その直属の部下5人。
 この少数精鋭により、ラーグの街の治安は保たれている。
 街の衛兵が酔っ払い同士のケンカとか食い逃げを取り締まる一方で、治安維持隊は重犯罪を取り締まっている感じだな。

「はっ! ありがたき幸せ」

 ナオンが部下たちに振り返る。

「皆、聞いたな? 閣下の期待にお応えするため、これより訓練を再開する!」

「「はい!」」

 5人が立ち上がる。
 やる気まんまんだな。
 俺には俺でやることがあるので、ずっと訓練に付き合えないのが残念だ。
 用事だけは済ませておこう。

「待ってくれ。訓練を再開する前に、お前たちに紹介したい人物がいる」

「紹介したい人物、ですか?」

「ああ。――ナオミちゃん、こっちへおいで」

「はい!」

 ナオミが、俺の影からひょっこりと姿を現した。
 そして、ナオンとナオミの視線が合う。

「「えっ!?」」

 2人は同時に驚きの声を上げた。

「ナオミ……貴様、なぜここにいる!」

「姉様……どうしてこちらに!?」

 2人が睨み合っている。
 あれ?
 なんでこんな険悪ムードなんだ?

 正義感が強く、真面目なナオン。
 素直でがんばり屋さんのナオミ。
 てっきり上手くやっていけると思っていたのだが。

「いったいどうしたんだ、2人とも。……ん? というか、今『姉様』って言ったか?」

 俺は首を傾げる。

「はい。アタシの名前はナオミ=ネリア。ナオン=ネリアは、アタシの姉です」

「誰が姉だ! 貴様のような不出来の妹を持った覚えはないわ!!」

 ナオミの言葉を聞いて、ナオンが激昂する。

「そ、そんな……酷い……。……ぐすっ」

 ナオミの目尻に涙が浮かぶ。
 そして、ナオミがその場に崩れ落ちた。

「ナオミ!?」

「……うぅ。……姉様に嫌われた……」

 ナオミが泣きじゃくる。

「くっ! …………ふん!!」

 ナオンは顔を背けた。
 ナオミから目を逸らし、地面を見つめている。
 その表情は、どこか悲しげだ。

「ナオミちゃん、大丈夫か? ……ほれ、ハンカチだ」

 俺はナオミにハンカチを差し出す。

「あ、ありがとうございます。……あの、これってもしかして、ハイブリッジ様のものではございませんでしょうか?」

「気にせず、好きに使ってくれ。何なら、そのままナオミちゃんにあげてもいいぞ?」

 俺は優しく微笑む。

「あ、ありがとうございます! 大切にします!」

 ナオミは嬉しそうに頬を緩ませた。
 よかった。
 ナオミも少し元気になったようだ。

「閣下! そやつを甘やかすのはお止めください!」

 ナオンが憤慨している。

「ナオン、あんまり大きな声を出すなよ。ナオミちゃんが怖がっているぞ?」

「くっ!」

 ナオンが悔しげに歯噛みする。

「それにしても、ナオミちゃんは妹なのか……」

 ナオンはナオミのことを『不出来』とか言っていたけど、全然そんなことはない。
 むしろ優秀な部類だ。

 ――いや、待てよ?
 今のナオミには加護(小)を付与済みだし、その少し前の時点でも加護(微)を付与していた。
 考えてみれば、俺はナオミの本来の実力をあまり知らないな。

 加護(微)なしの彼女の実力を見たのは……。
 初日に模擬試合ぐらいだろうか。
 あの時点では、王都騎士団の平均レベルというものを知らなかった。
 単純な俺は『若い女の子にしては強いなぁ』と思ったものだが、改めて考えるならばどういった評価が適正なのか……。

「私が多少大きな声を出したぐらいで怯えるようでは、騎士としては到底やっていけないでしょう!」

「ふむ。まぁ、一理あるが……。ナオンはどうしてナオミちゃんにそれほど厳しいのだ?」

「こやつは、昔から私の後ろを付いてきてばかりだったのです。木登りの練習をしたり、虫取り網を持って草原を走り回ったり、剣の素振りのマネごとをしたり……」

「それが鬱陶しかったと?」

「いえ、あくまで遊びとしては楽しかったですよ? ただ、剣の素振りが高じてこやつまで王都騎士団に志願するなどと言い出した時は驚きました」

「ほう」

「弱虫のこやつに、騎士など務まるはずがありません! しかし、騎士見習いとしての厳しい訓練にもこやつは一向に音を上げませんでした」

「いいことじゃないか」

「いいえ。愚直に鍛錬に励んだところで、いざ実戦になれば弱虫のこやつが戦えるはずがありません! だからこそ、これ以上私の背中を追えないようこの地にまでやって来たのです」

「なるほどな。ナオンの言い分は分かった」

 だが、『はいそうですか。じゃあナオミの登用は取り消すから、王都に帰るように』なんて口が裂けても言えない。
 ここは上手く場を収める必要がある。

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