【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
847話 ビリオンズ
増築された屋敷を見て回っていた俺は、『ビリオンズ活動拠点』と書かれた垂れ幕を発見した。
「何だこれは?」
「ああ、それかい? それは――」
俺の問いに、トリスタが答えようとした時だった。
「ご主人が帰ってきたってのは本当か!」
ドタドタッ! という音と共に、1人の少女が駆け込んできた。
赤い短髪の美少女だ。
どことなく野性味を感じさせるが、その顔立ちは整っている。
特筆すべきはその鍛え抜かれた肢体だ。
俺たちミリオンズにも、身体能力が高いメンバーは存在する。
腕力ならミティ、脚力ならモニカ、体力ならニム、バランスならアイリスといったところだ。
だが、彼女たちの身体能力の高さはスキルや種族特性によるところも大きい。
純粋な筋肉量としては、この少女も負けていないだろう。
ムキムキマッチョというわけではないのだが、全身にしっかりと付いた筋肉が彼女の運動能力の高さを物語る。
「よう、クリスティ。元気だったか? 俺たちは無事に帰ってきたぞ」
「おお、無事でよかった! 久しぶりのご主人だぜ!!」
赤毛の少女は、ニカッと笑って言った。
そして、俺に抱き着いて頬ずりをする。
彼女は赤猫族の少女クリスティだ。
名目上の身分は奴隷だが、実際には俺の部下のような立ち位置になっている。
ハイブリッジ家の警備兵の中でも、最初期に雇用した『原初の六人』の一人だ。
筆頭警備兵キリヤに次ぐ主任警備兵である。
「クリスティ、また腕を上げたか? 筋肉が増えているようだが……」
俺は彼女の体に触れつつ、尋ねる。
「ひゃん!? そ、そんなところを触らないでくれよぉ……」
「おっと、すまない。つい、な」
筋肉量を確かめるつもりが、いつの間にか胸へ手を伸ばしてしまっていたようだ。
体が勝手に動いた。
俺は悪くない。
悪いのはこの手だ。
「もう……。ご主人は相変わらずだなぁ」
「ははは、悪いな」
俺は苦笑しつつ謝った。
「それで、話を戻したいんだが……」
「あん? 何の話をしていたんだよ?」
「この垂れ幕さ。『ビリオンズ活動拠点』と書いてある。何のことか分かるか?」
ビリオンズとかいう謎の組織(?)がどこかで活動する分には好きにしてくれたらいいが……。
ここはハイブリッジ男爵家本館の増築部分の1階にあるリビングだ。
元々のリビングを第一リビングとするなら、こちらは第二リビングといったところか。
どこの馬の骨とも分からない奴らの活動拠点にされるわけにはいかない。
「ああ、それか。それは、あたいが考案した冒険者クランの名前だよ」
「ほう……?」
どうやら、この垂れ幕はクリスティが命名したもののようだ。
しかし、ビリオンズときたか……。
俺たちミリオンズの親戚みたいな名前だな。
ミリオンは100万、ビリオンは10億を表す言葉だ。
単純に考えて、数字の大きいビリオンズの方が格上のような印象を受ける。
配下のクリスティが率いるパーティがビリオンズで、当主の俺が率いるパーティがミリオンズ。
少し序列に問題があるような気がする。
(いや、そうでもないのか?)
例えば、四天王という言葉がある。
新たに百天王という言葉を考えたとしよう。
四天王と百天王。
どちらの方が強そうだろうか?
数字としては百の方が多いのだが、四天王の方が少数精鋭っぽくて強い印象も受ける。
……まぁ、ネーミングなんてさほど重要ではないのだが。
「この垂れ幕に書かれている文字は、お前が書いたものなのか?」
「いや? これはロロが書いたやつだぜ。なかなかいい感じだろ?」
ロロ……孤児院から俺が登用した幼女だな。
登用時は6歳で、今は7歳になっているはずだ。
少し前に村で交流した幼女ラフィーナよりも少しだけ年上である。
ロロの字はなかなかにキレイだ。
こんな才能もあったとはな。
「まぁそうだが……。ところで、どういう意味なんだ?」
「えっ? 忘れたのかよ? ビリオンっていう言葉は、ご主人が教えてくれたんじゃねぇか」
クリスティが指摘する。
確かに、そんな話もしたな。
俺を超えるAランク冒険者になると意気込む彼女に対して、いろいろな話をしたのだ。
武闘の鍛錬方法、魔法のコツ、冒険者としての心構え、愛する妻たちとの夜の話など……。
その中で、ビリオンという言葉にも言及した。
「いや、もちろんビリオンという言葉自体は知っている。だが、なぜそれをパーティ名に採用したのかと思ってな」
「――ん? 何か勘違いしていないか? ご主人」
「勘違いだと?」
「ビリオンズはクラン名だぜ? あたいはあたいでパーティを組むこともあるかもしれねぇが、まだ保留中さ」
「ああ、そうか……」
冒険者ギルドには、クランという制度がある。
複数のパーティやソロ冒険者が一つのチームとなるものだ。
同じ目的を持った集団が協力し合うことで、より大きな成果を生み出すことができる。
その結び付きは、同一パーティ内での結束よりは弱く、ただの同業冒険者同士よりは強い。
自由を重要視する冒険者において広く活用されている制度ではないが、存在はもちろん知っていた。
「クランの参加パーティや参加者は誰だ? リーダーは?」
「ええと、ご主人たちミリオンズ、ソロのあたい、アランたち『紅蓮の刃』、トミーたち『緑の嵐』ってところだな。できれば『雪月花』にも入ってもらいたいけどよ」
「ふむ……」
「ちなみにリーダーはもちろんご主人だぜ? リーダーを差し置いて勝手に登録はできねぇから、アランやトミーたちに話を通した上で、こうして活動拠点を設置したまでで止めていたんだ」
ミリオンズがクランの代表的なパーティとなり、そのクラン名がビリオンズとなる。
なかなか悪くないセンスだと思う。
彼女は戦闘部族の生まれだ。
脳筋気味だと思っていたが、こうした根回しや事務処理能力もあったらしい。
「やるじゃないか! さすがだな」
「へへへ……」
俺はクリスティの頭を撫でる。
クリスティは気持ちよさそうに目を細めた。
「まっ、あたいにかかればこんなもんさ!」
「……実際に動き回っていたのは僕だけどね……」
ドヤ顔を披露するクリスティの陰で、トリスタがボソッと呟く。
「ああん? 何か言ったかよ?」
「な、なんでもないさ。いやぁ、ビリオンズの活躍が楽しみだなぁ」
トリスタが棒読み口調で言う。
彼も苦労しているんだな……。
ミリオンズが不在の時は、執事長セバスや文官トリスタが実質的なハイブリッジ家のトップだった。
そう思っていた。
しかし、戦闘能力で言えばクリスティがトップだったんだよな。
彼女が無闇に暴力を振るうとも思えないが、戦闘能力皆無のトリスタは気が気じゃなかっただろう。
彼の苦労に報いる必要がある。
休日増加の検討を加速させねばなるまい。
俺はそんなことを思ったのだった。
「何だこれは?」
「ああ、それかい? それは――」
俺の問いに、トリスタが答えようとした時だった。
「ご主人が帰ってきたってのは本当か!」
ドタドタッ! という音と共に、1人の少女が駆け込んできた。
赤い短髪の美少女だ。
どことなく野性味を感じさせるが、その顔立ちは整っている。
特筆すべきはその鍛え抜かれた肢体だ。
俺たちミリオンズにも、身体能力が高いメンバーは存在する。
腕力ならミティ、脚力ならモニカ、体力ならニム、バランスならアイリスといったところだ。
だが、彼女たちの身体能力の高さはスキルや種族特性によるところも大きい。
純粋な筋肉量としては、この少女も負けていないだろう。
ムキムキマッチョというわけではないのだが、全身にしっかりと付いた筋肉が彼女の運動能力の高さを物語る。
「よう、クリスティ。元気だったか? 俺たちは無事に帰ってきたぞ」
「おお、無事でよかった! 久しぶりのご主人だぜ!!」
赤毛の少女は、ニカッと笑って言った。
そして、俺に抱き着いて頬ずりをする。
彼女は赤猫族の少女クリスティだ。
名目上の身分は奴隷だが、実際には俺の部下のような立ち位置になっている。
ハイブリッジ家の警備兵の中でも、最初期に雇用した『原初の六人』の一人だ。
筆頭警備兵キリヤに次ぐ主任警備兵である。
「クリスティ、また腕を上げたか? 筋肉が増えているようだが……」
俺は彼女の体に触れつつ、尋ねる。
「ひゃん!? そ、そんなところを触らないでくれよぉ……」
「おっと、すまない。つい、な」
筋肉量を確かめるつもりが、いつの間にか胸へ手を伸ばしてしまっていたようだ。
体が勝手に動いた。
俺は悪くない。
悪いのはこの手だ。
「もう……。ご主人は相変わらずだなぁ」
「ははは、悪いな」
俺は苦笑しつつ謝った。
「それで、話を戻したいんだが……」
「あん? 何の話をしていたんだよ?」
「この垂れ幕さ。『ビリオンズ活動拠点』と書いてある。何のことか分かるか?」
ビリオンズとかいう謎の組織(?)がどこかで活動する分には好きにしてくれたらいいが……。
ここはハイブリッジ男爵家本館の増築部分の1階にあるリビングだ。
元々のリビングを第一リビングとするなら、こちらは第二リビングといったところか。
どこの馬の骨とも分からない奴らの活動拠点にされるわけにはいかない。
「ああ、それか。それは、あたいが考案した冒険者クランの名前だよ」
「ほう……?」
どうやら、この垂れ幕はクリスティが命名したもののようだ。
しかし、ビリオンズときたか……。
俺たちミリオンズの親戚みたいな名前だな。
ミリオンは100万、ビリオンは10億を表す言葉だ。
単純に考えて、数字の大きいビリオンズの方が格上のような印象を受ける。
配下のクリスティが率いるパーティがビリオンズで、当主の俺が率いるパーティがミリオンズ。
少し序列に問題があるような気がする。
(いや、そうでもないのか?)
例えば、四天王という言葉がある。
新たに百天王という言葉を考えたとしよう。
四天王と百天王。
どちらの方が強そうだろうか?
数字としては百の方が多いのだが、四天王の方が少数精鋭っぽくて強い印象も受ける。
……まぁ、ネーミングなんてさほど重要ではないのだが。
「この垂れ幕に書かれている文字は、お前が書いたものなのか?」
「いや? これはロロが書いたやつだぜ。なかなかいい感じだろ?」
ロロ……孤児院から俺が登用した幼女だな。
登用時は6歳で、今は7歳になっているはずだ。
少し前に村で交流した幼女ラフィーナよりも少しだけ年上である。
ロロの字はなかなかにキレイだ。
こんな才能もあったとはな。
「まぁそうだが……。ところで、どういう意味なんだ?」
「えっ? 忘れたのかよ? ビリオンっていう言葉は、ご主人が教えてくれたんじゃねぇか」
クリスティが指摘する。
確かに、そんな話もしたな。
俺を超えるAランク冒険者になると意気込む彼女に対して、いろいろな話をしたのだ。
武闘の鍛錬方法、魔法のコツ、冒険者としての心構え、愛する妻たちとの夜の話など……。
その中で、ビリオンという言葉にも言及した。
「いや、もちろんビリオンという言葉自体は知っている。だが、なぜそれをパーティ名に採用したのかと思ってな」
「――ん? 何か勘違いしていないか? ご主人」
「勘違いだと?」
「ビリオンズはクラン名だぜ? あたいはあたいでパーティを組むこともあるかもしれねぇが、まだ保留中さ」
「ああ、そうか……」
冒険者ギルドには、クランという制度がある。
複数のパーティやソロ冒険者が一つのチームとなるものだ。
同じ目的を持った集団が協力し合うことで、より大きな成果を生み出すことができる。
その結び付きは、同一パーティ内での結束よりは弱く、ただの同業冒険者同士よりは強い。
自由を重要視する冒険者において広く活用されている制度ではないが、存在はもちろん知っていた。
「クランの参加パーティや参加者は誰だ? リーダーは?」
「ええと、ご主人たちミリオンズ、ソロのあたい、アランたち『紅蓮の刃』、トミーたち『緑の嵐』ってところだな。できれば『雪月花』にも入ってもらいたいけどよ」
「ふむ……」
「ちなみにリーダーはもちろんご主人だぜ? リーダーを差し置いて勝手に登録はできねぇから、アランやトミーたちに話を通した上で、こうして活動拠点を設置したまでで止めていたんだ」
ミリオンズがクランの代表的なパーティとなり、そのクラン名がビリオンズとなる。
なかなか悪くないセンスだと思う。
彼女は戦闘部族の生まれだ。
脳筋気味だと思っていたが、こうした根回しや事務処理能力もあったらしい。
「やるじゃないか! さすがだな」
「へへへ……」
俺はクリスティの頭を撫でる。
クリスティは気持ちよさそうに目を細めた。
「まっ、あたいにかかればこんなもんさ!」
「……実際に動き回っていたのは僕だけどね……」
ドヤ顔を披露するクリスティの陰で、トリスタがボソッと呟く。
「ああん? 何か言ったかよ?」
「な、なんでもないさ。いやぁ、ビリオンズの活躍が楽しみだなぁ」
トリスタが棒読み口調で言う。
彼も苦労しているんだな……。
ミリオンズが不在の時は、執事長セバスや文官トリスタが実質的なハイブリッジ家のトップだった。
そう思っていた。
しかし、戦闘能力で言えばクリスティがトップだったんだよな。
彼女が無闇に暴力を振るうとも思えないが、戦闘能力皆無のトリスタは気が気じゃなかっただろう。
彼の苦労に報いる必要がある。
休日増加の検討を加速させねばなるまい。
俺はそんなことを思ったのだった。
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