【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

838話 復興手伝いと宴会準備

 村人たちの視線が俺に集まっている。
 彼らからの感謝は心地良いものだったが、一つだけ訂正したいことがある。

「1か月半前、俺はこの村に立ち寄った。その時点の俺は、みんなが知っている通り『騎士爵』だった!」

 俺はそこで一旦言葉を区切る。
 村人たちは『何を当たり前のことを言っているんだ?』というような表情をしている。

「しかし、今は違う。今の俺は、ハイブリッジ『騎士爵』ではない! 俺は――タカシ=ハイブリッジ『男爵』だ!」

 高らかに宣言する。
 俺の名乗りを聞いた村人たちは、一瞬ポカンとした表情を浮かべていた。

「えっと、どういう意味でしょうか? ダンシャク……?」

 村長が困惑顔で尋ねる。

「そのままの意味だよ。陛下に俺の活躍が認められてね。騎士爵から男爵に爵位が上がったのさ」

「ダンシャク……男爵!? ほ、本当でございますか!?」

 村長が目を丸くする。

「ああ、嘘じゃない。この俺が言うんだ。間違いない」

 俺は力強く断言した。

「そ、それは何よりでございます!」

「すげー!」

「さすがはハイブリッジ騎士爵……いや、ハイブリッジ男爵だ!」

 村人たちが次々に歓声を上げる。

「ひゃああ……」

 ラフィーナに至っては、あまりの衝撃に口をポカンと開けっ放しにしている。
 幼女なのに、男爵の偉さが分かるのか?
 やはり結構な有望株である。

(忠義度は……。おおっ! あとほんの少しで条件を満たすじゃないか!)

 この村には、限られた時間しか滞在していない。
 ラーグの街から王都に行く途中に一泊二日。
 そして今回、王都からラーグの街に帰る途中に一泊するために立ち寄った感じである。

(この一泊の間に、条件を満たせれば言うことなしだな……)

 もしそうなれば……。
 一泊二日を二回。
 つまり、四日間での加護(小)の付与となる。

 歴代でもトップクラスに早い。
 その要因として大きいのは、ラフィーナの属性だろう。
 俺より遥かに年下で、俺と異なる性別。
 そしてもちろん、要職などには就いていない。

(まぁ、結構大きな事件があったからなぁ……)

 行き道では、この村の近郊にゴブリンジェネラルが率いるゴブリンの群れが発生していた。
 そして今回の帰り道では、盗賊団が村を占拠したのだ。
 それらをごくあっさりと解決した俺に対して、忠義を感じることは不思議ではないかもしれない。

(あとは……『会えない時間が想いをはぐくむ』という要素もあるか?)

 俺とラフィーナの交流時間は、現状で通算3日である。
 だが、前回滞在したのは9月上旬で、今は10月末頃だ。
 1か月半ほどが経過している。

 前回の時点で、ラフィーナは俺へ憧れの感情を抱いてくれている様子だった。
 仮にあのままもう一泊した場合、次の日の忠義度はどうなっていたか?
 おそらくだが、今回よりも低かったのではないだろうか。
 まぁ、全て推測だが。

「よし。では予定通り、この村で一泊させてもらうぞ。みんな、休憩の準備をしてくれ」

 俺はミリオンズや配下の者たちに、そう指示を出す。
 村は盗賊たちによって少し荒らされていた。
 これぐらいなら自力での復興も可能だろうが、せっかくだし少し手伝ってやるか。

「よっと……。この崩れた瓦礫は向こうに運べばいいのか?」

「ああっ! そ、そんなハイブリッジ男爵様! 私どもでやりますから!」

「遠慮するなって。困ったときはお互いさまだからな」

 俺は笑顔で言う。
 この村に泊まるのは、主に休憩のためだ。
 警護のために付いてきている一般兵などは結構披露しているだろう。

 しかし、俺は大丈夫。
 チートの恩恵を多大に受けており、体力には自信がある。
 先ほど大魔法を使ったのでこれ以上のMP消費は避けたいし、長時間馬車に揺られた精神的な気疲れはあるが。
 軽い復興作業ぐらいなら、むしろ適度な気分転換になる。

「私も手伝います! むんっ!」

「ボクはケガ人を治療しようかな」

 ミティとアイリスも手伝ってくれる。
 彼女たちも『体力強化』のスキルを取得しているし、かなり動ける方だ。

「私は宴会料理の方を手伝おうっと。ゼラちゃん、いっしょに行こうよ」

「了解なのです、モニカちゃん。間近で宴会料理を学ばせてもらうのです」

 今夜は、村で宴会を開いてくれる予定だ。
 モニカとゼラは、その手伝いをするらしい。
 その他の面々も、体力のある者は村の作業を手伝っている。
 チートの関係で、上位の身分の者たちが主に動いているな。
 自分で始めたことながら、これでは――

「ふぇええ……。偉い人ばっかり働いているよう……。マリア様まで……」

「くっ……。多少の疲れなど、関係ありません。ここが踏ん張りどころです!」

 レネとナオミがそんなことを言う。
 レネはただのハーピィの少女なので、馬車に揺られているだけでも疲れたことだろう。

 ナオミはレネに比べれば鍛えられているし、加護(小)の恩恵も受けている。
 だが、彼女にとってこれが始めての馬車の長旅だ。
 その上、ゼラやレネとは違って護衛兵としての任務に就いていた。
 彼女は疲労感を隠せていない。
 また、その他のハイブリッジ家関係者や一般兵、村人たちも落ち着かない様子を見せている。

「すまんすまん。俺が動いてしまったせいで、不要な気を遣わせてしまったな」

「いえ! ずっと警戒して進んでいたので疲れていますが、ハイブリッジ様を働かせて休むわけにはいきません!」

 ナオミは、やる気に満ちた表情を見せる。
 が、やはり疲労感は出ている。
 俺やサリエの治療魔法を使えば多少の疲労を取り除くことはできるのだが、完璧ではない。
 疲労からの回復には、やはり休憩が大切だ。

「心意気だけ貰っておこう。――他の者も聞け! 負傷している者、疲労している者は、遠慮なく休むがいい」

「でも……」

「これは当主としての命令だ。ゆっくり休め」

「……はい」

 ナオミがしょんぼりする。
 やる気を見せたところに休めと言われては、そうなるか。

「安心しろ。領地に帰ったら、嫌でも働いてもらうからな。期待しているぞ、ナオミちゃん」

「――は、はいっ! 頑張ります!!」

 俺の言葉を聞いて、ナオミは嬉しそうに笑みを浮かべたのだった。

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