【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
833話 灰狼団とラフィーナ
タカシたち一行が王都を出発した頃――
「へへへ。この村は占拠させてもらったぜ」
「ちんけな村だな。おら、有り金をよこしな!」
「ひいぃっ! ど、どうか命だけはお助けください」
盗賊たちに脅され、村長が怯えた声を出す。
ここは王都とラーグの街の間あたりにある山村である。
防衛力はあまりないので、盗賊に狙われるとこの通り簡単に占拠されてしまう。
ただ、実際に襲われたことはここ10年以上なかった。
こんな辺鄙な村を襲ったところで、大した利益にならないからだ。
「ど、どうしてこんなことに……」
「お爺様……。こ、怖いです……」
村長の孫娘が、祖父にしがみついて震えている。
彼女の名前はラフィーナ。
かつてこの村に通りがかったタカシに憧れを抱いている6歳の少女だ。
「ちっ! やっぱり、大した金はないみたいだな」
「金目のモンも少ねぇ。山菜とか魔物の肉程度だ」
「仕方ない。騎士団や冒険者からの追跡は厳しくなるが、その辺の女でもさらって奴隷商に売り飛ばすぞ」
「おい、そこの娘を捕らえろ」
盗賊たちがラフィーナを捕まえようと動き出す。
「ひっ!? こ、来ないで!」
ラフィーナは恐怖で動けない。
そこへ、一人の男が割って入った。
「待て、お前ら」
「なぜ止めるんです? リーダー」
盗賊の男はそう言って首を傾げる。
「最優先の目的を忘れるな。金品はともかく、奴隷なんざ抱えていたら動きにくなるだろうが」
「へ、へい……。それもそうですね」
男はあっさりと引き下がった。
とりあえず、この場でラフィーナがさらわれるということはないようだ。
だが、それはそれで不穏でもある。
彼らの目的は別にあるということなのだから。
「俺たち『灰狼団』は、『黒狼団』の兄貴たちに恩がある。情報によれば、兄貴たちを連れたハイブリッジ男爵がこの村を通るはずなんだ」
「へい! そこを俺たちが襲撃して、兄貴たちを解放するってことですよね!」
「男爵だか何だか知らねぇが、上手く奇襲してやれば問題ないだろう」
「へへへ。腕が鳴るぜぇ~」
男たちはそんなことを言い合う。
果たして、彼らの作戦は成功するのだろうか。
タカシたち一行の到着まで、あと数日というところであった。
*****
「ふぅ……。王都を出発して早くも数日か……」
俺は馬車の中で呟いた。
「はい。そろそろ中継の村が見えてくる頃かと……」
御者席にいるヴィルナが答える。
彼女は御者の能力を持つ上、戦闘能力もそれなりに高く、しかも兎獣人として聴覚に優れており索敵能力が高い。
こうして街から街へ移動する際には、彼女は重宝している。
純粋な戦闘能力だけならキリヤやクリスティ、冒険者としての見識や経験ならばネスターやシェリーに分があるので、そのあたりは一長一短といった感じだ。
「中継の村か。確か、俺がゴブリンジェネラルを討伐した村だな」
あっさりと討伐して、村長やベアトリクスにドヤ顔を披露したことがある。
それに、村人たちも喜んでくれていた。
そうそう、あの村にはラフィーナという将来有望そうな幼女がいたんだよな。
「早く着いてほしいものだ」
俺はそう呟く。
馬車の上でただ座っているだけというのは、退屈だ。
まぁ、のんびりと景色を楽しみながら愛する妻や子どもたちと触れ合っているだけでも楽しいのだが、それでも何か刺激が欲しいと思う時もある。
転移魔法で帰れば早いのだが、俺1人で先に帰るのもちょっとな。
なら全員で転移すればと考えるところだが、あまり大人数を送るとなるとMPの消費が激しい。
この大人数を転移魔法で送るのは現実的ではない。
重力魔法や魔法の絨毯で先行するのも、似たようなものだな。
結局のところ、男爵家の当主である俺が一行から離れて単独行動をするわけにはいかないのだ。
「お前たちも暇じゃないか?」
「ううん、大丈夫なのです。モニカさんに教わったレシピを、頭の中で再現しているのです」
俺の問いにそう答えたのは、料理人のゼラだ。
彼女は料理を第一に生きているらしく、男爵である俺と話しても緊張する素振りを一切見せない。
まぁ、あまり畏まれても困るので、別にいいのだが。
「あ、あたしも問題ありません。こうして風景を見るだけでも、新たな刺激がありますので」
こちらはハーピィの少女レネだ。
少し緊張している様子ではあるが、それほどでもないな。
なかなかに肝っ玉が座っている。
ハガ王国からサザリアナ王国の王都に単独で観光に向かうぐらいだし、精神力は強そうだ。
「ふむ。ま、何かあれば遠慮なく言ってくれ」
俺は2人にそう言う。
ゼラはモニカと、レネはマリアと仲がいい。
その一方で、俺とはさほど交流していない。
それはそれで構わないのだが、せっかくなのでワンチャンの加護付与を狙っていきたいと考えている。
妻の友人なので、あまり下心丸出しにしないように注意する必要はあるが。
「あ、見えてきましたよ!」
ヴィルナが声を上げる。
確かに前方に小さな村の影が見えた。
「よし。さっそく――ん?」
「みんな。気付いてる?」
「くんくん……。この匂いは……」
モニカとニムが反応した。
兎獣人として聴覚に優れるモニカと、犬獣人として嗅覚に優れるニムは、ちょっとした異変に気付くのも早い。
「ああ……。どうやら、また厄介ごとらしいな」
俺は前方の村を見ながらそう言ったのだった。
「へへへ。この村は占拠させてもらったぜ」
「ちんけな村だな。おら、有り金をよこしな!」
「ひいぃっ! ど、どうか命だけはお助けください」
盗賊たちに脅され、村長が怯えた声を出す。
ここは王都とラーグの街の間あたりにある山村である。
防衛力はあまりないので、盗賊に狙われるとこの通り簡単に占拠されてしまう。
ただ、実際に襲われたことはここ10年以上なかった。
こんな辺鄙な村を襲ったところで、大した利益にならないからだ。
「ど、どうしてこんなことに……」
「お爺様……。こ、怖いです……」
村長の孫娘が、祖父にしがみついて震えている。
彼女の名前はラフィーナ。
かつてこの村に通りがかったタカシに憧れを抱いている6歳の少女だ。
「ちっ! やっぱり、大した金はないみたいだな」
「金目のモンも少ねぇ。山菜とか魔物の肉程度だ」
「仕方ない。騎士団や冒険者からの追跡は厳しくなるが、その辺の女でもさらって奴隷商に売り飛ばすぞ」
「おい、そこの娘を捕らえろ」
盗賊たちがラフィーナを捕まえようと動き出す。
「ひっ!? こ、来ないで!」
ラフィーナは恐怖で動けない。
そこへ、一人の男が割って入った。
「待て、お前ら」
「なぜ止めるんです? リーダー」
盗賊の男はそう言って首を傾げる。
「最優先の目的を忘れるな。金品はともかく、奴隷なんざ抱えていたら動きにくなるだろうが」
「へ、へい……。それもそうですね」
男はあっさりと引き下がった。
とりあえず、この場でラフィーナがさらわれるということはないようだ。
だが、それはそれで不穏でもある。
彼らの目的は別にあるということなのだから。
「俺たち『灰狼団』は、『黒狼団』の兄貴たちに恩がある。情報によれば、兄貴たちを連れたハイブリッジ男爵がこの村を通るはずなんだ」
「へい! そこを俺たちが襲撃して、兄貴たちを解放するってことですよね!」
「男爵だか何だか知らねぇが、上手く奇襲してやれば問題ないだろう」
「へへへ。腕が鳴るぜぇ~」
男たちはそんなことを言い合う。
果たして、彼らの作戦は成功するのだろうか。
タカシたち一行の到着まで、あと数日というところであった。
*****
「ふぅ……。王都を出発して早くも数日か……」
俺は馬車の中で呟いた。
「はい。そろそろ中継の村が見えてくる頃かと……」
御者席にいるヴィルナが答える。
彼女は御者の能力を持つ上、戦闘能力もそれなりに高く、しかも兎獣人として聴覚に優れており索敵能力が高い。
こうして街から街へ移動する際には、彼女は重宝している。
純粋な戦闘能力だけならキリヤやクリスティ、冒険者としての見識や経験ならばネスターやシェリーに分があるので、そのあたりは一長一短といった感じだ。
「中継の村か。確か、俺がゴブリンジェネラルを討伐した村だな」
あっさりと討伐して、村長やベアトリクスにドヤ顔を披露したことがある。
それに、村人たちも喜んでくれていた。
そうそう、あの村にはラフィーナという将来有望そうな幼女がいたんだよな。
「早く着いてほしいものだ」
俺はそう呟く。
馬車の上でただ座っているだけというのは、退屈だ。
まぁ、のんびりと景色を楽しみながら愛する妻や子どもたちと触れ合っているだけでも楽しいのだが、それでも何か刺激が欲しいと思う時もある。
転移魔法で帰れば早いのだが、俺1人で先に帰るのもちょっとな。
なら全員で転移すればと考えるところだが、あまり大人数を送るとなるとMPの消費が激しい。
この大人数を転移魔法で送るのは現実的ではない。
重力魔法や魔法の絨毯で先行するのも、似たようなものだな。
結局のところ、男爵家の当主である俺が一行から離れて単独行動をするわけにはいかないのだ。
「お前たちも暇じゃないか?」
「ううん、大丈夫なのです。モニカさんに教わったレシピを、頭の中で再現しているのです」
俺の問いにそう答えたのは、料理人のゼラだ。
彼女は料理を第一に生きているらしく、男爵である俺と話しても緊張する素振りを一切見せない。
まぁ、あまり畏まれても困るので、別にいいのだが。
「あ、あたしも問題ありません。こうして風景を見るだけでも、新たな刺激がありますので」
こちらはハーピィの少女レネだ。
少し緊張している様子ではあるが、それほどでもないな。
なかなかに肝っ玉が座っている。
ハガ王国からサザリアナ王国の王都に単独で観光に向かうぐらいだし、精神力は強そうだ。
「ふむ。ま、何かあれば遠慮なく言ってくれ」
俺は2人にそう言う。
ゼラはモニカと、レネはマリアと仲がいい。
その一方で、俺とはさほど交流していない。
それはそれで構わないのだが、せっかくなのでワンチャンの加護付与を狙っていきたいと考えている。
妻の友人なので、あまり下心丸出しにしないように注意する必要はあるが。
「あ、見えてきましたよ!」
ヴィルナが声を上げる。
確かに前方に小さな村の影が見えた。
「よし。さっそく――ん?」
「みんな。気付いてる?」
「くんくん……。この匂いは……」
モニカとニムが反応した。
兎獣人として聴覚に優れるモニカと、犬獣人として嗅覚に優れるニムは、ちょっとした異変に気付くのも早い。
「ああ……。どうやら、また厄介ごとらしいな」
俺は前方の村を見ながらそう言ったのだった。
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