【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
831話 思い出のキス
騎士見習いのルシエラがハイブリッジ男爵家への登用を願い出てきたが、今回は断ることにした。
「わ、分かりました。しかし、最後に一度だけお願いします」
そう言って、ルシエラは真剣な表情で俺を見つめてくる。
「最後って……。ああ、ひょっとして模擬試合か?」
「はい」
「うーん。それなら別に構わないが」
「ありがとうございます」
お礼を言いつつ、嬉しそうな顔をするルシエラ。
ここで実力を見せれば、起死回生の登用もワンチャンあると思っているのかもしれない。
「あ、それならば俺もお願いします」
「俺も最後に……」
「私も稽古を付けていただきたいです」
豪槍くん、一般騎士、少女騎士たちがルシエラにつられるようにして口を開く。
俺もずいぶんと慕われたものだ。
まぁ、イリーナ大隊長は『誓約の五騎士』を兼任していて忙しく、レティシアは中隊長となって日が浅いようだったからな。
この訓練場を拠点にしている彼らは、王都騎士団の中でもやや指導者に恵まれない立場にあったのだろう。
俺としては断る理由もないので、順番に相手していくことにした。
そして――
「うぐっ……。つ、強すぎる……」
「信じられん……。小隊長殿を含め20人近くいた我々を、こうもあっさりと……」
「こ、これがハイブリッジ卿の真の実力……」
「もしや、今まではあれでも手加減されておられたのか……」
「手も足も出ませんでしたわ……」
小隊長、一般騎士、少女騎士たちが訓練場に倒れ伏している。
俺が彼らを同時に相手取り、あっさりと撃破したのだ。
この王都に来た時点で、俺はチートの恩恵を多大に受けておりかなりの実力を持っていた。
そして、王都騎士団で彼らに混ざって稽古をしてきた。
スキル込みでは俺の足元にも及ばない彼らではあるが、基礎はしっかりできている。
むしろ、スキル頼みの俺なんかよりも基礎だけならば上だと言っていい。
そんな彼らとの鍛錬を通じて、俺の剣術の実力も向上した。
それらの鍛錬に加えて、黒狼団・白狼団・闇蛇団あたりの掃討作戦を頑張ったこともあり、レベルが上がりスキルを新たに伸ばしている。
俺の総合的な実力は、王都に来てからの数か月でまた一回り向上したわけだ。
「ふむ……。やはり、王都騎士団のみんなは基礎がしっかりしている。良い動きだったぞ。俺も見習うところがある」
「そ、そうでしょうか? ハイブリッジ卿は俺たちよりも遥かに上の実力をお持ちだと思うのですが……」
「いや、俺は冒険者として我流でやってきたからな。お前たちの動きは勉強になった。また機会があれば、一緒に鍛錬したいものだ」
「は、はい! 是非とも!」
「俺もご一緒させて下さい!」
「私も!」
俺の言葉に、彼らは一様に目を輝かせて答える。
どうやら、かなりやる気に火がついたようだ。
これなら、きっと今後も王都騎士団の訓練を頑張れるだろう。
俺が満足げにうんうんとうなずくと、ルシエラが恐る恐るといった様子で声をかけてきた。
「あの……、ハイブリッジ卿。私はどうでしたでしょうか?」
「そうだなぁ……。君は特に筋がいいと感じたぞ。このまま鍛えていけば、将来はかなり有望なんじゃないか?」
「ほ、本当ですか!? やったぁ!!」
ルシエラが両手を上げて、嬉しそうにぴょんと跳ねる。
そんな彼女を、他の騎士たちが羨ましそうに見つめている。
1人だけ贔屓するようで、すまないな。
だが、イリーナ、レティシア、ナオミの3人がいないこの場において、忠義度が一番高いのはルシエラなんだ。
特定人物を贔屓せずに満遍なく忠義度を稼いでいくのも一つの選択肢ではある。
しかしどちらかと言えば『もう少しで加護付与の条件を満たす』という者の忠義度を優先して稼いでいく方が良いように思えるのだ。
まぁ、どちらにせよ今回の滞在中は無理だろうが。
次に王都に来る頃までお預けだな。
「あ、あの!」
「どうした?」
「貴方様に1つだけお願いがあるのです。聞いていただけませんでしょうか?」
ルシエラが真剣な顔で言う。
「お願いか……。内容によるが、とりあえず言ってみてくれ」
ハイブリッジ男爵家への登用が不可だということは先ほど伝えたばかりだ。
願いというのは、他の内容だろう。
「わ、私に……。ルシエラにキスをしてほしいのです」
「…………」
「どうかお願いします。私に貴方様の思い出を……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
思っていた方向性と違ったので、思わずストップをかける。
「キスだと?」
「はい」
「ど、どうしてそういう話になるんだ」
俺の問いに、ルシエラは顔を赤らめつつ答えた。
「その、私は貴方様に懸想しているのです」
「む……」
懸想……けそう?
どういう意味だったか。
――ああ、『恋い慕う』という意味だったような気がする。
つまり彼女は、俺に惚れているのだ。
「もちろん、今の私では貴方様のお傍にいる資格がないことは理解しています。ただ、今後も騎士として頑張っていくためにも、貴方様との確かな繋がりがほしいのです。私にとって、それは何よりの宝物になりますから……」
「そ、そうなのか……」
まさか、そんなことを言われるとは思わなかった。
しかしまぁ、キスぐらいなら構わないか?
「……あ、私のことはお気になさらず」
ミティもこう言ってくれている。
どことなく視線が不機嫌になっている気もするが……。
どうしよう?
いや、浮気は今さらか……。
世界滅亡の危機に立ち向かうために加護の対象者を増やしていく必要はあるし、ここは遠慮なく――
「いくぞ、ルシエラ」
「――んっ!」
俺は彼女の唇を奪った。
ルシエラの顔が真っ赤に染まり、目が潤んでいる。
少しだけ、ほんの一瞬だけ舌を入れたのだが、それでも彼女はびくりと身体を震わせた。
そして、俺から離れてぺたんと地面に座り込んでしまう。
「はぁはぁ……。ありがとうございます。これで、私は頑張れそうです」
「そうか……。なら良かった」
「はい。では、どうかお元気で」
ルシエラは立ち上がると、スカートの裾についた砂埃を払って笑顔で言った。
「ああ。ルシエラも元気でな。それにもちろん、他のみんなもだぞ」
「はい! これからも、王都騎士団一同頑張っていきます!」
「俺たちも、ハイブリッジ卿に負けないように鍛錬に励みます!」
「ははは……。あんまり無茶して体を壊さないようにな」
俺は最後に彼ら一人ひとりと挨拶を済ませ、訓練場を後にしたのだった。
「わ、分かりました。しかし、最後に一度だけお願いします」
そう言って、ルシエラは真剣な表情で俺を見つめてくる。
「最後って……。ああ、ひょっとして模擬試合か?」
「はい」
「うーん。それなら別に構わないが」
「ありがとうございます」
お礼を言いつつ、嬉しそうな顔をするルシエラ。
ここで実力を見せれば、起死回生の登用もワンチャンあると思っているのかもしれない。
「あ、それならば俺もお願いします」
「俺も最後に……」
「私も稽古を付けていただきたいです」
豪槍くん、一般騎士、少女騎士たちがルシエラにつられるようにして口を開く。
俺もずいぶんと慕われたものだ。
まぁ、イリーナ大隊長は『誓約の五騎士』を兼任していて忙しく、レティシアは中隊長となって日が浅いようだったからな。
この訓練場を拠点にしている彼らは、王都騎士団の中でもやや指導者に恵まれない立場にあったのだろう。
俺としては断る理由もないので、順番に相手していくことにした。
そして――
「うぐっ……。つ、強すぎる……」
「信じられん……。小隊長殿を含め20人近くいた我々を、こうもあっさりと……」
「こ、これがハイブリッジ卿の真の実力……」
「もしや、今まではあれでも手加減されておられたのか……」
「手も足も出ませんでしたわ……」
小隊長、一般騎士、少女騎士たちが訓練場に倒れ伏している。
俺が彼らを同時に相手取り、あっさりと撃破したのだ。
この王都に来た時点で、俺はチートの恩恵を多大に受けておりかなりの実力を持っていた。
そして、王都騎士団で彼らに混ざって稽古をしてきた。
スキル込みでは俺の足元にも及ばない彼らではあるが、基礎はしっかりできている。
むしろ、スキル頼みの俺なんかよりも基礎だけならば上だと言っていい。
そんな彼らとの鍛錬を通じて、俺の剣術の実力も向上した。
それらの鍛錬に加えて、黒狼団・白狼団・闇蛇団あたりの掃討作戦を頑張ったこともあり、レベルが上がりスキルを新たに伸ばしている。
俺の総合的な実力は、王都に来てからの数か月でまた一回り向上したわけだ。
「ふむ……。やはり、王都騎士団のみんなは基礎がしっかりしている。良い動きだったぞ。俺も見習うところがある」
「そ、そうでしょうか? ハイブリッジ卿は俺たちよりも遥かに上の実力をお持ちだと思うのですが……」
「いや、俺は冒険者として我流でやってきたからな。お前たちの動きは勉強になった。また機会があれば、一緒に鍛錬したいものだ」
「は、はい! 是非とも!」
「俺もご一緒させて下さい!」
「私も!」
俺の言葉に、彼らは一様に目を輝かせて答える。
どうやら、かなりやる気に火がついたようだ。
これなら、きっと今後も王都騎士団の訓練を頑張れるだろう。
俺が満足げにうんうんとうなずくと、ルシエラが恐る恐るといった様子で声をかけてきた。
「あの……、ハイブリッジ卿。私はどうでしたでしょうか?」
「そうだなぁ……。君は特に筋がいいと感じたぞ。このまま鍛えていけば、将来はかなり有望なんじゃないか?」
「ほ、本当ですか!? やったぁ!!」
ルシエラが両手を上げて、嬉しそうにぴょんと跳ねる。
そんな彼女を、他の騎士たちが羨ましそうに見つめている。
1人だけ贔屓するようで、すまないな。
だが、イリーナ、レティシア、ナオミの3人がいないこの場において、忠義度が一番高いのはルシエラなんだ。
特定人物を贔屓せずに満遍なく忠義度を稼いでいくのも一つの選択肢ではある。
しかしどちらかと言えば『もう少しで加護付与の条件を満たす』という者の忠義度を優先して稼いでいく方が良いように思えるのだ。
まぁ、どちらにせよ今回の滞在中は無理だろうが。
次に王都に来る頃までお預けだな。
「あ、あの!」
「どうした?」
「貴方様に1つだけお願いがあるのです。聞いていただけませんでしょうか?」
ルシエラが真剣な顔で言う。
「お願いか……。内容によるが、とりあえず言ってみてくれ」
ハイブリッジ男爵家への登用が不可だということは先ほど伝えたばかりだ。
願いというのは、他の内容だろう。
「わ、私に……。ルシエラにキスをしてほしいのです」
「…………」
「どうかお願いします。私に貴方様の思い出を……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
思っていた方向性と違ったので、思わずストップをかける。
「キスだと?」
「はい」
「ど、どうしてそういう話になるんだ」
俺の問いに、ルシエラは顔を赤らめつつ答えた。
「その、私は貴方様に懸想しているのです」
「む……」
懸想……けそう?
どういう意味だったか。
――ああ、『恋い慕う』という意味だったような気がする。
つまり彼女は、俺に惚れているのだ。
「もちろん、今の私では貴方様のお傍にいる資格がないことは理解しています。ただ、今後も騎士として頑張っていくためにも、貴方様との確かな繋がりがほしいのです。私にとって、それは何よりの宝物になりますから……」
「そ、そうなのか……」
まさか、そんなことを言われるとは思わなかった。
しかしまぁ、キスぐらいなら構わないか?
「……あ、私のことはお気になさらず」
ミティもこう言ってくれている。
どことなく視線が不機嫌になっている気もするが……。
どうしよう?
いや、浮気は今さらか……。
世界滅亡の危機に立ち向かうために加護の対象者を増やしていく必要はあるし、ここは遠慮なく――
「いくぞ、ルシエラ」
「――んっ!」
俺は彼女の唇を奪った。
ルシエラの顔が真っ赤に染まり、目が潤んでいる。
少しだけ、ほんの一瞬だけ舌を入れたのだが、それでも彼女はびくりと身体を震わせた。
そして、俺から離れてぺたんと地面に座り込んでしまう。
「はぁはぁ……。ありがとうございます。これで、私は頑張れそうです」
「そうか……。なら良かった」
「はい。では、どうかお元気で」
ルシエラは立ち上がると、スカートの裾についた砂埃を払って笑顔で言った。
「ああ。ルシエラも元気でな。それにもちろん、他のみんなもだぞ」
「はい! これからも、王都騎士団一同頑張っていきます!」
「俺たちも、ハイブリッジ卿に負けないように鍛錬に励みます!」
「ははは……。あんまり無茶して体を壊さないようにな」
俺は最後に彼ら一人ひとりと挨拶を済ませ、訓練場を後にしたのだった。
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