【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

803話 きれいに

 雪はタカシに抱きかかえられつつ、腹の中のものを垂れ流した。
 極限レベルの羞恥は感じたが、腹痛は収まった。
 タカシのおかげで、雪の体調はどうにか戻ったのだ。

「……あの、もう一つ……。お願いがあるんだけど……」

 雪がタカシに切り出す。
 その顔は羞恥で真っ赤に染まっているのだが、同時にどこか吹っ切れたようにも見える。

「なんだ? 遠慮なく言ってみろ」

 タカシが鷹揚に答える。
 彼はいつでも美少女に優しい。
 雪が言えば、大抵のことには応じるだろう。

「……うん。えっとね……。ボクのお尻をきれいにしてほしい……。うう、また恥ずかしいことを言っちゃった……。ごめんなさい……」

 雪は顔を赤らめながら、タカシを見上げる。
 彼女にとっては、非常に勇気を振り絞った発言であった。

 だが、必要なことでもある。
 液体状のものを垂れ流した彼女の尻は、それなりに汚れてしまっている。
 このままの状態で、ショーツやズボンを穿くわけにはいかない。
 しかし、なにせ急なことだったので、尻を拭くためのものが手近にはない。

「……むぅ。尻をきれいに、か。」

 タカシがなぜか難しい顔をする。
 女性の頼みであれば何でもホイホイ引き受ける彼にしては、かなり珍しい。

「……ダメ……?」

 雪の瞳がウルウルしている。
 普段はクールで無表情な、ボクっ娘。
 そんな彼女のお願いを受けては、タカシなどひとたまりもない。

「わかった。なかなかハードルが高いが……。何事も挑戦だな。任せておけ」

 タカシが了承する。
 尻をきれいにするだけのことなのに、なぜか決意に満ちた目をしている。

「……ありがとう。じゃあ、お願い……」

 雪はタカシの腕の中から離れ、立ち上がった。
 そして、尻をタカシの方に向け、軽く突き出した。

「……うう、恥ずかしい……」

 雪は耳まで赤くしている。
 タカシの顔を見ていられず、視線を下に向けた。

(これは、思ったよりキツイぞ……)

 タカシは内心冷や汗を流す。
 彼の前には、雪の小さな可愛らしいお尻があった。
 だが、そこには雪の懸念通り、彼女が出したもので少し汚れてしまっている。

「……早くしてよぉ……」

 雪が急かす。
 彼女としても、デリケートなところをタカシに晒した上に待たされるのは辛い。

「わかった。じゃあ――舐めるぞ」

 タカシは意を決して宣言する。
 そして、ゆっくりと顔を近づけていくが――

「え? 舐め――って、ええっ!? ちょ、ちょちょちょっと待って……!」

「ん?」

 ひどく狼狽している雪の様子に、タカシは疑問を抱く。
 何かおかしなことを言っただろうか。

「な、何も舐める必要はない。男爵さんの水魔法で洗い流してくれたらそれでいい……」

「ん? …………あ、ああー! そ、それもそうだな!!」

 タカシもやっと気づいたようだ。
 汚れた雪の尻。
 超上級プレイとしては、舐めてきれいにするのもありだろう。

 だが、普通に考えれば水で洗い流すだけで十分だ。
 水がなければ、紙で拭く。
 それもなければ、ボロ布だったり、最悪は乾燥した草とかも選択肢に入る。

「うう、焦ったよ……」

 雪が胸を撫で下ろす。
 彼女は今にも泣き出しそうなほど、不安げな顔をしていた。
 タカシがとんでもない変態行為をしでかそうとしていたのだから、無理もない。

「すまん。俺もどうかしていた」

 様々な意味でストライクゾーンの広いタカシだが、さすがにこういった方面は許容ギリギリといったところだ。
 生々しくない描写レベルであれば、マンガや動画で楽しんだこともある。
 だが、それでもメインは『羞恥に悶える女性の姿』である。
 汚物を自分で舐め取るというのは、彼としてもかなりギリギリの選択だった。
 普段は冷静な無口美少女の雪がお願いしていたからこそ、意を決することができたのだ。

(勘違いだったか……。危ない危ない)

 彼は胸を撫で下ろす。
 汚物を舐め取る――。
 単純に精神的に抵抗があっただけではなく、汚物の中の菌によって病が引き起こされるリスクもあった。
 いくら治療魔法の使い手の彼であっても、独力では対応できないものも多い。

(もしこれが原因で体調不良になったら、かなり説明しづらいところだった)

 この行為により彼が倒れてしまった場合、ミリオンズの面々には原因を打ち明ける必要があっただろう。
 特に、彼以上の治療魔法の使い手であるサリエや、同格のアイリス、マリア、リーゼロッテあたりの重要性は高い。

 しかし、いくら妻たちと良好な関係を築いているとはいえ、それほどの変態行為が判明すれば愛に亀裂が入っていた可能性もある。
 そうなれば、彼の使命である『世界滅亡の危機の回避』にも悪影響があっただろう。
 今回のタカシと雪のやり取りは、実は世界の命運を左右する可能性すらあった重要な局面だったのだ。

「……男爵さん、お願いします……」

 雪が再び尻を突き出す。
 タカシはその尻の前に立ち、魔法を発動した。

「任せておけ。――【ウォッシュレット】」

 タカシの手の中から細い水柱が飛び出し、その先端が雪の尻に触れる。
 そのまま水流が彼女の尻を洗浄していった。
 これは彼のオリジナル水魔法だ。
 とは言っても、直接的に人へ発動したのはこれが初めてである。

 普段は、ジェイネフェリアが作成した魔道具に対してこの魔法を込めている。
 使用者が魔道具に魔力を流すと、それに反応してあらかじめ込められていたこの『ウォッシュレット』の魔法が発動するようなイメージだ。
 この魔道具により、ハイブリッジ家のトイレ事情は大幅に快適になった。
 ラーグの街の屋敷に導入した際にはミリオンズやハイブリッジ家配下の面々でちょっとした騒ぎがあったのだが、今は置いておこう。

 彼は、雪の尻の汚れを順調に落としていったのだった。

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