【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
799話 月が綺麗ですね
就寝前。
タカシと寝ぼけた花がイチャイチャしていたところ、月がそれを止めた。
「すまんすまん。ついな」
「まぁ、私もハイブリッジ男爵が同じテントに泊まることに異議はないわ」
「そうなのか?」
「ふん。当然でしょ? 別のテントで寝たら、ハイブリッジ男爵に何かあっても察知できない。万が一のことがあれば、あなたの奥方たちが黙っていない。私たちの責任問題になるもの」
月がそう言う。
雪月花の中で、金銭面でちゃっかりしているのは雪だが、こうした権利や義務関係できっちりしているのはパーティリーダーの月だ。
本来、タカシは勝手にこの場に来ただけであり、雪月花から救助要請を出したわけではない。
しかし現実的に考えて、この場で何らかの事情によりタカシが負傷すれば、その責任の一端は雪月花にも及ぶだろう。
「ただし! 私の寝込みを襲うような真似をしたら許さないわ!」
「ふふ~。花ちゃんはウェルカムだけどね~。――って、うそうそ~」
軽口を叩いた花だったが、月に睨まれたことにより慌てて撤回する。
花が求めているのは、食っちゃ寝の生活。
多くは望まず、できれば子どもも欲しいなと思っている程度だ。
それならば、こういった場で既成事実を作り、妾の立場に収まるのも悪い選択肢ではない。
一方、月が求めているのは、権力や名声だ。
当然、妾ではなく正式な妻となることを望んでいる。
こんな場所で事に及ぶなど、言語道断だ。
だから、彼女は本気でタカシを警戒していた。
「大丈夫だって。俺は大人しく寝るよ」
「どうだか」
「本当さ。それに、仮に誰か1人に手を出したら、残りの2人が怖いし」
雪月花は三姉妹。
タカシが誰かの寝込みを襲おうものなら、他の2人が黙っているとは考えにくい。
「ふん。まあいいわ。気を抜かないようにするし」
「はいはい。んじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ~」
タカシ、月、花がテント内で横になる。
雪はテント外で見張りだ。
ヤナギたちのパーティも、交代で見張りを行う様子だ。
「んふふ~。そんなにたくさん食べられないよ~。あふぅ……」
花はすぐに寝息を立て始めた。
何やら呑気な寝言までこぼしている。
その一方で、タカシと月はまだ起きている。
「……」
「……」
花の寝言も収まり。テント内に沈黙が流れる。
「……ねえ」
「ん?」
「あなた、どうして私たちを助けてくれたの?」
「そりゃあ、お前らはハイブリッジ男爵家の大切な御用達冒険者だからな」
「それだけじゃないでしょう? わざわざ、こんな場所まで来て……。人を使う立場の貴族家の当主が、一冒険者なんかのために駆け付けていたらキリがないわよ」
「…………」
タカシは少し考える。
月が言っていることは至極当然のことだったからだ。
貴族は、基本的に人を使う立場の者だ。
当主のピンチに配下が駆けつけることはあっても、その逆はまずない。
「率直に言おうか。俺はお前たちのことが気に入っているんだ」
「え? でも、私たちぐらいの冒険者は他にもいるでしょう?」
雪月花はCランクパーティ。
優秀ではあるが、飛び抜けて優秀というほどでもない。
ハイブリッジ男爵家の配下で言えば、『原初の六人』と同格か少し下ぐらいだ。
また、御用達冒険者という括りで見ても、他に有能な者はいる。
雪月花と同じくルクアージュからの付き合いである、Cランク冒険者トミーとその仲間たち。
ここ最近でメキメキ実力を上げている『紅蓮の刃』のアランとその仲間たちだ。
雪月花だけを極端に贔屓する理由はないように思えた。
「分かって言っているのか? お前たちには、他にはない魅力があるだろう?」
「……?」
「つまり……そうだな……。月が綺麗ですねとでも言っておくか。ここからは見えないけどな」
「っ!?」
タカシの言葉を受け、月が顔を真っ赤にする。
月が綺麗ですね。
ヤマト連邦に伝わる、婉曲的な愛の告白だ。
タカシは日本で得た知識からそれを言ってみただけなのだが、どういうわけか月にもしっかりとその意味は伝わったようである。
「ば、馬鹿! ふざけたこと言って! 真面目に答えなさいよ!」
「冗談ではないさ。それでどうだ? まだ妻にできるかどうかは分からんが、お前と子どもの世話をするぐらいであれば確約できるぞ」
タカシはすでに多くの女性を囲っている。
加護付与スキルの恩恵を考えれば悪いことではない。
だが、それは逆に言えば、加護の付与の目処が立っていない女性を囲うことはできるだけ避けた方がいいということでもある。
月の現状で加護(微)に留まる。
順調に上がっているのでいずれは加護(小)にはなるだろう。
それは雪や花も同様だ。
妾として囲う程度であれば、加護(小)でも許容範囲である。
しかし、正式に妻として迎え入れ、ハイブリッジ男爵家の奥方として、あるいはミリオンズ構成員として世界滅亡の危機に立ち向かっていくには、やはり通常の加護の付与を狙いたいのがタカシの思いであった。
「……妻にできるかどうか分からないって? それはつまり、妾扱いってことでしょ?」
月の顔が強張る。
「まぁそうだな」
「……ここで頷ければ、私の人生も楽になるのでしょうね。現に、花と雪はもうそれほど拘っていないみたいだし」
「ん?」
「でも、私はまだ諦めきれないわ。私が求めるのは、ハイブリッジ男爵の妻の立ち位置よ。そこだけは譲れないわ」
「……そうか。今は確約できないが、いずれはそうなることもあるかもな」
タカシは言葉を濁す。
彼が妻を娶る基準の1つが、通常の加護の有無だ。
だが、それを直接伝えることは避けた。
『俺と結婚したければ、俺に忠誠を誓え』などと伝えれば、控えめに見てもヤバい奴だと思われること間違いなしである。
「ふふ。今はそれでも十分ということにしておきましょう」
「おっと」
月がタカシの頬にキスをした。
「これはプレゼントよ。女好きのハイブリッジ男爵へのね」
「ありがたく受け取っておこう」
タカシは月の唇の感触が残る頬を撫でながら笑った。
そして、月とタカシはそのまま眠りについたのだった。
タカシと寝ぼけた花がイチャイチャしていたところ、月がそれを止めた。
「すまんすまん。ついな」
「まぁ、私もハイブリッジ男爵が同じテントに泊まることに異議はないわ」
「そうなのか?」
「ふん。当然でしょ? 別のテントで寝たら、ハイブリッジ男爵に何かあっても察知できない。万が一のことがあれば、あなたの奥方たちが黙っていない。私たちの責任問題になるもの」
月がそう言う。
雪月花の中で、金銭面でちゃっかりしているのは雪だが、こうした権利や義務関係できっちりしているのはパーティリーダーの月だ。
本来、タカシは勝手にこの場に来ただけであり、雪月花から救助要請を出したわけではない。
しかし現実的に考えて、この場で何らかの事情によりタカシが負傷すれば、その責任の一端は雪月花にも及ぶだろう。
「ただし! 私の寝込みを襲うような真似をしたら許さないわ!」
「ふふ~。花ちゃんはウェルカムだけどね~。――って、うそうそ~」
軽口を叩いた花だったが、月に睨まれたことにより慌てて撤回する。
花が求めているのは、食っちゃ寝の生活。
多くは望まず、できれば子どもも欲しいなと思っている程度だ。
それならば、こういった場で既成事実を作り、妾の立場に収まるのも悪い選択肢ではない。
一方、月が求めているのは、権力や名声だ。
当然、妾ではなく正式な妻となることを望んでいる。
こんな場所で事に及ぶなど、言語道断だ。
だから、彼女は本気でタカシを警戒していた。
「大丈夫だって。俺は大人しく寝るよ」
「どうだか」
「本当さ。それに、仮に誰か1人に手を出したら、残りの2人が怖いし」
雪月花は三姉妹。
タカシが誰かの寝込みを襲おうものなら、他の2人が黙っているとは考えにくい。
「ふん。まあいいわ。気を抜かないようにするし」
「はいはい。んじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ~」
タカシ、月、花がテント内で横になる。
雪はテント外で見張りだ。
ヤナギたちのパーティも、交代で見張りを行う様子だ。
「んふふ~。そんなにたくさん食べられないよ~。あふぅ……」
花はすぐに寝息を立て始めた。
何やら呑気な寝言までこぼしている。
その一方で、タカシと月はまだ起きている。
「……」
「……」
花の寝言も収まり。テント内に沈黙が流れる。
「……ねえ」
「ん?」
「あなた、どうして私たちを助けてくれたの?」
「そりゃあ、お前らはハイブリッジ男爵家の大切な御用達冒険者だからな」
「それだけじゃないでしょう? わざわざ、こんな場所まで来て……。人を使う立場の貴族家の当主が、一冒険者なんかのために駆け付けていたらキリがないわよ」
「…………」
タカシは少し考える。
月が言っていることは至極当然のことだったからだ。
貴族は、基本的に人を使う立場の者だ。
当主のピンチに配下が駆けつけることはあっても、その逆はまずない。
「率直に言おうか。俺はお前たちのことが気に入っているんだ」
「え? でも、私たちぐらいの冒険者は他にもいるでしょう?」
雪月花はCランクパーティ。
優秀ではあるが、飛び抜けて優秀というほどでもない。
ハイブリッジ男爵家の配下で言えば、『原初の六人』と同格か少し下ぐらいだ。
また、御用達冒険者という括りで見ても、他に有能な者はいる。
雪月花と同じくルクアージュからの付き合いである、Cランク冒険者トミーとその仲間たち。
ここ最近でメキメキ実力を上げている『紅蓮の刃』のアランとその仲間たちだ。
雪月花だけを極端に贔屓する理由はないように思えた。
「分かって言っているのか? お前たちには、他にはない魅力があるだろう?」
「……?」
「つまり……そうだな……。月が綺麗ですねとでも言っておくか。ここからは見えないけどな」
「っ!?」
タカシの言葉を受け、月が顔を真っ赤にする。
月が綺麗ですね。
ヤマト連邦に伝わる、婉曲的な愛の告白だ。
タカシは日本で得た知識からそれを言ってみただけなのだが、どういうわけか月にもしっかりとその意味は伝わったようである。
「ば、馬鹿! ふざけたこと言って! 真面目に答えなさいよ!」
「冗談ではないさ。それでどうだ? まだ妻にできるかどうかは分からんが、お前と子どもの世話をするぐらいであれば確約できるぞ」
タカシはすでに多くの女性を囲っている。
加護付与スキルの恩恵を考えれば悪いことではない。
だが、それは逆に言えば、加護の付与の目処が立っていない女性を囲うことはできるだけ避けた方がいいということでもある。
月の現状で加護(微)に留まる。
順調に上がっているのでいずれは加護(小)にはなるだろう。
それは雪や花も同様だ。
妾として囲う程度であれば、加護(小)でも許容範囲である。
しかし、正式に妻として迎え入れ、ハイブリッジ男爵家の奥方として、あるいはミリオンズ構成員として世界滅亡の危機に立ち向かっていくには、やはり通常の加護の付与を狙いたいのがタカシの思いであった。
「……妻にできるかどうか分からないって? それはつまり、妾扱いってことでしょ?」
月の顔が強張る。
「まぁそうだな」
「……ここで頷ければ、私の人生も楽になるのでしょうね。現に、花と雪はもうそれほど拘っていないみたいだし」
「ん?」
「でも、私はまだ諦めきれないわ。私が求めるのは、ハイブリッジ男爵の妻の立ち位置よ。そこだけは譲れないわ」
「……そうか。今は確約できないが、いずれはそうなることもあるかもな」
タカシは言葉を濁す。
彼が妻を娶る基準の1つが、通常の加護の有無だ。
だが、それを直接伝えることは避けた。
『俺と結婚したければ、俺に忠誠を誓え』などと伝えれば、控えめに見てもヤバい奴だと思われること間違いなしである。
「ふふ。今はそれでも十分ということにしておきましょう」
「おっと」
月がタカシの頬にキスをした。
「これはプレゼントよ。女好きのハイブリッジ男爵へのね」
「ありがたく受け取っておこう」
タカシは月の唇の感触が残る頬を撫でながら笑った。
そして、月とタカシはそのまま眠りについたのだった。
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