【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

790話 ”岩塊”のニッケス

 ノノンが俺と離れるのを寂しがっている。
 そこで俺は、彼女をハイブリッジ男爵領に招待することにした。

「ハ、ハイブリッジ様……。俺の娘をそこまで気にかけてくださるとは……。ありがたき幸せでございます」

「ですがノノンはまだ小さく……。ご迷惑をおかけするのではないかと、心配しております」

 ノノンの父と母がそれぞれ口にした。
 まぁ、心配するのも当然だ。
 ノノンはまだ少女と幼女の中間ぐらいの年頃。
 1人で他領へ行くなど、普通はありえないことだ。
 両親は気が気ではないだろう。

「一家でラーグの街へ移住してはどうだ? もちろん、すぐにとは言わん。俺たちが戻るのも、もう少し後だからな」

「有り難いお話です。しかし、なにせお金がないのです……」

 王都からラーグの街への引っ越し。
 必要なのは、まずは旅費。
 戦闘能力と足腰が十分な冒険者であれば、単身で歩いて移動することも可能だ。
 その場合、必要なのはせいぜい食費ぐらいだろう。

 だが、一般人が引っ越し荷物付きで移動しようとすれば、それなりに大変だ。
 馬車、御者、護衛などを用意する必要があるだろう。
 さらに、移動後には住む場所を確保する必要がある。
 引っ越し先ですぐに定職を得られるとも限らないし、当面の生活費もかかる。
 家族で荷物付きの引っ越しともなれば簡単には行うことができない。

「そんなことか。治療費も無料にしてやったことだし、ついでだ。引っ越し費用も出してやるよ」

 まぁ、チートの恩恵を受けまくっているハイブリッジ男爵家にとっては大した負担ではない。
 それぐらいは出してやってもいいだろう。
 特定の民ばかりを優遇しすぎると他との不和を招くので、ほどほどにする必要はあるが。

「な、なんと……。そのようなことをしていただいてもよろしいのでしょうか?」

「問題ない。俺としては、将来性豊かなノノンをスカウトできれば見返りは十分だ」

「おお、娘が役に立つとおっしゃっていただけるとは……」

 俺の言葉を聞いて、父親は感涙している。
 母親も娘の未来について明るい見通しが立ったことを喜ばしいと思っているのか、頬が緩んでいた。

「ただ、それだけじゃない」

「はい?」

「俺はお前のことも評価しているんだよ。俺の配下になれ。”岩塊”のニッケス」

「…………!」

 俺の提案を聞き、父親が目を丸くした。

「……その名で呼ばれるのは久しぶりです。懐かしく思いますね」

「そうか? 昔は結構有名だったそうじゃないか。Cランクパーティのリーダーだったとか」

「えぇ、その通りですよ。ですが、ケガで引退しております。ハイブリッジ様の治療により大幅に改善しましたが、以前のように戦えるとは……」

 ノノンの父――ニッケスがそう答える。
 以前の彼は、右足の太ももまでと左手の二の腕までが失われていた。
 その上、切断部が炎症を起こし慢性的な痛みが発生していた。
 今の彼は、俺たちの合同魔法により、膝と肘それぞれの関節あたりまで再生されている。
 また、炎症による痛みも収まった。

 戦闘能力という点において、以前より遥かにマシになったことは間違いないが、それでもまだ厳しいだろう。
 Dランク……いや、下手をすれば一般人よりも弱いかもな。
 筋肉もなまっているだろうし。

「その点は心配するな。また治療魔法をかけてやる。まぁ、いくらか日はおくがな」

 治療魔法による治療は、短期間に重ねがけしても効果は減衰していく。
 まったくの無意味というわけではないので、例えば生死の淵をさまよう重傷者に対してMPの許す限り治療魔法をかける意味はある。

 ただ、ニッケスの場合は傷口が完全に塞がり、感染症なども起きていない。
 戦闘能力を取り戻すという意味では早めに治療させたいところなのだが、生死という意味では優先度が落ちる。
 それに、今回発動した5人の合同魔法『リザレクション・ヒール』は消費MPが多すぎる。
 短期間にニッケスにばかりを優先するわけにはいかない。

「それに、俺の配下にはジェイネフェリアという優秀な魔導技師がいてな。おそらくだが、いい感じの義肢を作ってくれるはずだ」

 困ったときのジェイネフェリアだ。
 言えば何でも作ってくれる。
 代わりに素材や魔石などは要求されるが、ハイブリッジ男爵家ならば大抵のものは用意できる。

「そ、そこまでしていただけるとは……。しかし、どうお返しすればいいのか……」

「大げさに考えるな。お前の腕を見込んだのだ。配下として働いてほしいだけさ」

 強い者はいくらでも配下に欲しい。
 普通の貴族家なら、囲いすぎれば報酬を払いきれずに破綻してしまうだろう。
 だが、ハイブリッジ男爵家は違う。
 今後もチートを活かして成り上がっていくつもりだし、金に困ることはしばらくないと思う。

「私のような者を欲しがるとは、変わったお方ですね」

「変わっていることは自覚しているが、後悔はさせないつもりだ」

「……」

 父親は黙り込んだ。
 その表情からは、何を考えているか読み取れない。
 やがて、彼は口を開いた。

「いいでしょう。願ってもないことです。妻、そして娘のノノンとともに、ハイブリッジ様の傘下に入りましょう」

「助かるよ」

 こうして、俺は優秀な人材を手に入れることに成功した。
 これで、ますます領地を発展させることができる。
 俺は心の中でガッツポーズをするのだった。

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