【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
789話 行かないでください
ノノン宅を訪問している。
彼女の父親の欠損している右足と左手の治療を試みた。
俺、サリエ、アイリス、マリア、リーゼロッテ。
5人の合同魔法『リザレクション・ヒール』を行使した結果、彼の足は以前よりも若干だが盛り上がった。
元々は太ももや二の腕の中ほどまで欠損していたのだが、それぞれ膝や肘方向に10から20センチほど伸びた感じだな。
膝や肘そのものも生成されている。
「どうだ?」
「は、はい。痛みが完全になくなりました。ありがとうございます!」
まず、痛みはなくなったと。
一般的に、四肢などを欠損してしまった者が苦しむ痛みには2種類ある。
1つは、いわゆる幻肢痛。
例えば太ももから先の右足を失った者は、当然右足の指先の感覚はない。
しかしときに、なくなったはずの指先などの痛みを感じることがあるらしい。
詳しい原因はわかっておらず、主に身体というよりは心に原因があると推測されている。
もう1つは、単純に傷口の炎症などが原因の痛みだ。
現代日本では清潔な治療が可能だし、痛み止めも開発されているので、そこまで深刻な状態には陥らない。
だが、この世界は別だ。
特にノノン一家の場合は経済的に困窮していたため、この世界基準においても衛生環境は良くなかったと思われる。
傷口に慢性的な痛みが発生していたようだ。
「痛みがなくなっただけでも、治療した甲斐はあったな。それで、他には?」
「ひ、膝と肘関節が元に戻っています! まだ上手くは動かせませんが、これならば以前よりも段違いに動きやすくなると思います!」
ノノンの父が興奮気味に話す。
「ふむ……。確かに、以前よりはスムーズに動けそうだな……。ちょっと試してみてくれ」
「はい!」
彼がぎこちない動きで膝と肘を動かす。
見るからに頼りない動きだが、これは久しぶりに動かす部位だから筋肉や神経などが緊張しているせいだろう。
治療魔法自体は成功と言ってよさそうだ。
「うん、問題なさそうだな。他に気になる点や、違和感を感じたりするところはあるか?」
「いえ、今のところは問題ないようです。本当に感謝いたします」
「そうか、なら良かった。念のため、しばらく様子を見ておけよ。俺たちももう少しの間は王都にいるからな」
俺は、今後の経過観察を約束する。
そのとき――
ぼふっ。
俺の背後に柔らかい衝撃があった。
振り返ると、ノノンが抱きついてきたようだ。
「姫様?」
ノノンは姫ではないが、彼女の心のケアのためロールプレイを続けている。
やめ時はいつにしようか……?
「あ、えっと……。お父さんを治療してくれて、ありがとうございました」
彼女は恥ずかしげに礼を言う。
「はっ! 姫様の父君がお困りであれば、それをお助けするのが我らの務めですよ」
「は、はい! 本当にありがとうございます」
「では、俺はこれで失礼させていただきますね」
彼女たち一家に切り出したい用件もあるのだが、もう少し経過を観察してからでもいいだろう。
今日のところは退散だ。
「あっ……」
俺が立ち去ろうとすると、ノノンは少し寂しそうな顔をした。
そして、俺の服の裾を掴む。
ん~、何この可愛い生き物……。
「どうかされましたか?」
「い、行かないでください。ずっとわたしのそばにいてください、騎士様……」
うっ!
何という上目遣いだ。
まだ少し幼いが、5年後……いや、3年後には間違いなく美少女になっているであろう顔立ちをしている。
そんな子が潤んだ瞳で見つめてくるのだ。
思わず抱きしめたくなる衝動を抑えつつ、理性を保つために心を無にする。
「申し訳ありませんが、そろそろ帰らなければならないのです。また、機会があればお会いしましょう」
「…………」
返事がない。
ただの屍のようだ。
まぁ、生きてるけどね。
こうなったら仕方ない。
後日切り出す予定だった用件を、さっそく提案してみるか。
俺はノノンの頭を優しく撫でながら、口を開く。
「姫様さえよろしければ、私の領地へ遊びに来てみてはいかがでしょうか? そして、ご興味がある分野の仕事を手伝っていただければと」
「領地ですか!?」
「はい。私は男爵なのですが、新興貴族の中では比較的大きな領土を有しておりまして、その関係で色々と仕事も多いのです。ですから、もしよろしければ何かお手伝いをしていただければと思っておりました」
「わ、わたしなんかでいいんですか?」
「もちろんですよ。むしろ、姫様にお願いしたいくらいです。もちろん、無理強いはできませんが……」
ノノンはまだ幼い。
幼女寄りの少女といったところだろうか。
だが、ギャンブルには天性の才能があるようだし、歌唱能力も高いと聞いたことがある。
現時点でも何かしらの役には立つ。
それに、加護付与の件もある。
「行きたい! ぜひ連れていって欲しいです!」
食い気味の即答だった。
よほど俺と離れるのが嫌なのか。
心のケアが目的とはいえ、騎士と姫様のロールプレイを引っ張りすぎたかもしれない。
だがまぁ、率直に言って慕ってくれるのは嬉しくも思う。
(そしてもちろん、ノノン1人を招待というわけにはいかない)
彼女の両親にも話をするべきだろう。
いっそ、家族ごと移住してもらうか。
俺は2人に対する説得の文言を考えるのだった。
彼女の父親の欠損している右足と左手の治療を試みた。
俺、サリエ、アイリス、マリア、リーゼロッテ。
5人の合同魔法『リザレクション・ヒール』を行使した結果、彼の足は以前よりも若干だが盛り上がった。
元々は太ももや二の腕の中ほどまで欠損していたのだが、それぞれ膝や肘方向に10から20センチほど伸びた感じだな。
膝や肘そのものも生成されている。
「どうだ?」
「は、はい。痛みが完全になくなりました。ありがとうございます!」
まず、痛みはなくなったと。
一般的に、四肢などを欠損してしまった者が苦しむ痛みには2種類ある。
1つは、いわゆる幻肢痛。
例えば太ももから先の右足を失った者は、当然右足の指先の感覚はない。
しかしときに、なくなったはずの指先などの痛みを感じることがあるらしい。
詳しい原因はわかっておらず、主に身体というよりは心に原因があると推測されている。
もう1つは、単純に傷口の炎症などが原因の痛みだ。
現代日本では清潔な治療が可能だし、痛み止めも開発されているので、そこまで深刻な状態には陥らない。
だが、この世界は別だ。
特にノノン一家の場合は経済的に困窮していたため、この世界基準においても衛生環境は良くなかったと思われる。
傷口に慢性的な痛みが発生していたようだ。
「痛みがなくなっただけでも、治療した甲斐はあったな。それで、他には?」
「ひ、膝と肘関節が元に戻っています! まだ上手くは動かせませんが、これならば以前よりも段違いに動きやすくなると思います!」
ノノンの父が興奮気味に話す。
「ふむ……。確かに、以前よりはスムーズに動けそうだな……。ちょっと試してみてくれ」
「はい!」
彼がぎこちない動きで膝と肘を動かす。
見るからに頼りない動きだが、これは久しぶりに動かす部位だから筋肉や神経などが緊張しているせいだろう。
治療魔法自体は成功と言ってよさそうだ。
「うん、問題なさそうだな。他に気になる点や、違和感を感じたりするところはあるか?」
「いえ、今のところは問題ないようです。本当に感謝いたします」
「そうか、なら良かった。念のため、しばらく様子を見ておけよ。俺たちももう少しの間は王都にいるからな」
俺は、今後の経過観察を約束する。
そのとき――
ぼふっ。
俺の背後に柔らかい衝撃があった。
振り返ると、ノノンが抱きついてきたようだ。
「姫様?」
ノノンは姫ではないが、彼女の心のケアのためロールプレイを続けている。
やめ時はいつにしようか……?
「あ、えっと……。お父さんを治療してくれて、ありがとうございました」
彼女は恥ずかしげに礼を言う。
「はっ! 姫様の父君がお困りであれば、それをお助けするのが我らの務めですよ」
「は、はい! 本当にありがとうございます」
「では、俺はこれで失礼させていただきますね」
彼女たち一家に切り出したい用件もあるのだが、もう少し経過を観察してからでもいいだろう。
今日のところは退散だ。
「あっ……」
俺が立ち去ろうとすると、ノノンは少し寂しそうな顔をした。
そして、俺の服の裾を掴む。
ん~、何この可愛い生き物……。
「どうかされましたか?」
「い、行かないでください。ずっとわたしのそばにいてください、騎士様……」
うっ!
何という上目遣いだ。
まだ少し幼いが、5年後……いや、3年後には間違いなく美少女になっているであろう顔立ちをしている。
そんな子が潤んだ瞳で見つめてくるのだ。
思わず抱きしめたくなる衝動を抑えつつ、理性を保つために心を無にする。
「申し訳ありませんが、そろそろ帰らなければならないのです。また、機会があればお会いしましょう」
「…………」
返事がない。
ただの屍のようだ。
まぁ、生きてるけどね。
こうなったら仕方ない。
後日切り出す予定だった用件を、さっそく提案してみるか。
俺はノノンの頭を優しく撫でながら、口を開く。
「姫様さえよろしければ、私の領地へ遊びに来てみてはいかがでしょうか? そして、ご興味がある分野の仕事を手伝っていただければと」
「領地ですか!?」
「はい。私は男爵なのですが、新興貴族の中では比較的大きな領土を有しておりまして、その関係で色々と仕事も多いのです。ですから、もしよろしければ何かお手伝いをしていただければと思っておりました」
「わ、わたしなんかでいいんですか?」
「もちろんですよ。むしろ、姫様にお願いしたいくらいです。もちろん、無理強いはできませんが……」
ノノンはまだ幼い。
幼女寄りの少女といったところだろうか。
だが、ギャンブルには天性の才能があるようだし、歌唱能力も高いと聞いたことがある。
現時点でも何かしらの役には立つ。
それに、加護付与の件もある。
「行きたい! ぜひ連れていって欲しいです!」
食い気味の即答だった。
よほど俺と離れるのが嫌なのか。
心のケアが目的とはいえ、騎士と姫様のロールプレイを引っ張りすぎたかもしれない。
だがまぁ、率直に言って慕ってくれるのは嬉しくも思う。
(そしてもちろん、ノノン1人を招待というわけにはいかない)
彼女の両親にも話をするべきだろう。
いっそ、家族ごと移住してもらうか。
俺は2人に対する説得の文言を考えるのだった。
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