【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
785話 盗賊団の調査報告書
盗賊の面々に話を聞いた翌日になった。
俺は再び、レティシア中隊長を訪ねていた。
「よう。レティシア」
「おはようございます。ハイブリッジ男爵」
レティシアが敬礼する。
相変わらず堅苦しいが、その敬礼は少しだけ崩れていた。
俺へ気を許してくれた……わけではなさそうだ。
むしろ逆。
俺への敬意が低下傾向なのを感じる。
これはマズイ。
「ほら、肩の力を抜けよ。酒でも飲もうぜ」
「結構ですっ! それで、昨日の取り調べはどうでしたか? 特に悪質な者、情状酌量の余地がある者、利用価値がある者などについて、ハイブリッジ男爵のご意見をお聞きしたいのですが……」
さっそく尋問結果について聞かれた。
少し焦っているようだ。
イリーナがいない今、この件の最終責任者はレティシアだからな。
ネルエラ陛下や他の”誓約の五騎士”から失望されないように、ベストを尽くす必要があるのだろう。
「書面にまとめてある。この報告書を見てくれ」
そう言って、まとめた資料を渡す。
レティシアは書類に目を通していく。
表情が段々と険しくなっていった。
読み進めていくうちに、顔が真っ赤になっていく。
「な、なんですかこれはっ!? ふざけているのですかっ!」
バンッと机を叩きながら立ち上がるレティシア。
あまりの剣幕に、通りすがりのメイドがビクっと反応していた。
「あ~、落ち着け。座れって。別にふざているわけではないぞ」
「これが落ち着いていられますかっ! こんなものが通ると思っているんですかっ! バカにしているのですかっ!!」
「まぁ、そう怒るなって。俺の意見をありのまま記載してあるだけだ。嘘偽りはない。平民から男爵に成り上がった俺の能力を疑うのか?」
「くぅ……」
悔しげに唇を噛み締め、ゆっくりと着席するレティシア。
彼女はまだ知らないが、俺には加護付与というチート能力がある。
その副次的な恩恵により、各人から俺に対する忠義度を測ることが可能だ。
これにより、俺に対して過度の敵意を抱いている者は察知できる。
また、数日前にアビーたちに施したように、魔力を用いた真偽判定の技術もある。
盗賊の面々は、アビーたちのような素人とは異なり魔法抵抗力がそこそこある者が多かった。
そのため精度100パーセントとまでは言えないが、それでも並の尋問官では得られない程度には正確な供述を引き出すことが可能だ。
「そ、それにしたって、この内容は……」
レティシアが目の前の書類に視線を落とす。
そこにはこう書かれている。
『特に悪質な者……0人。殺人や放火の罪は確認できず。誘拐や人身売買の罪はあるが、闇の瘴気の影響を考慮する必要あり。適切に罪を償わせれば、極刑には及ばないと考えられる。ただし、被害者への補填は別途必要――』
『利用価値がある者……全員。幹部クラス以上は固有の技能を持っており、死罪や無期懲役で失うには惜しい人材である。適切な監視と管理の元、働かせるべきである。末端メンバーはさしたる技能はもっていないものの、身体能力はしっかりしている。犯罪奴隷として鉱山で働かせるべし』
『特記事項……キサラという女は、盗賊として経験豊富である。蛇の道は蛇。今後の盗賊狩りに活かせられると思われる。ハイブリッジ男爵家にて引き取ることを強く希望する』
『特記事項……トパーズという女は、闇カジノにて案内人を務めていた。そのノウハウを何らかの形で活かせると思われる。ハイブリッジ男爵家にて引き取ることを強く希望する』
俺が書いた内容だが、概ね間違っていないと思う。
まぁ、あくまで一意見なので、最終的にはサザリアナ王国の法律で処理されるだろう。
「こ、こんな意見……。ハイブリッジ男爵は、悪を断罪するおつもりがないので? これでは盗賊団を無罪放免にしろと言っているようなものではありませんかっ!」
「いやいや、さすがに無罪放免とは違うだろ」
要するに、犯罪奴隷として酷使してやれと書いてあるのだ。
別に、俺は死刑廃止論者ではない。
日本にいたときは、酷いニュースを見る度に内心で『こんなやつ、さっさと死刑にしろよ』と思っていた。
ただ、この世界は地球とは事情が異なる。
奴隷契約を結ぶ首輪という便利な魔道具があるこの世界では、死刑や懲役という刑罰を採用する利点が極端に薄いのだ。
死刑や懲役にすべき例外があるとすれば、『魔法抵抗力が高すぎて奴隷契約を結ばせることができない』とか『更生の可能性が極端に低い』とか『戦闘能力が高く、万が一逃げられた場合に再び甚大な被害が予想される』とか、そういった犯罪者だろうな。
今回捕らえた盗賊の面々は、そこそこ強いが『魔法抵抗力が高すぎて奴隷契約を結ばせることができない』や『戦闘能力が高く、万が一逃げられた場合に再び甚大な被害が予想される』というほどではない。
また、それぞれ好き勝手に犯罪を犯していた無法集団ではあるが、『更生の可能性が極端に低い』というほどでもない。
闇の瘴気の影響下においても、殺人や放火はしていないようだったしな。
一定程度の自制心や良心はあると見ていいだろう。
「まぁ、あくまで一意見だ。気に入らなければ却下してくれ」
「……今回の第一功労者であり、男爵家当主のご意見です。全面的な却下などは、まずあり得ないでしょう。ほぼ通ると思います。ですが、その後の処理でもまたハイブリッジ男爵に白羽の矢が立つかもしれませんよ」
「ん? どういうことだ?」
「つまり、犯罪奴隷に堕とした盗賊の面々を、ハイブリッジ男爵に引き取っていただくことになるかもしれないということです」
「それくらいなら問題ないさ。ハイブリッジ男爵領は人手不足だからな」
西の森の奥地にある鉱山の開発。
鉱山の一角にある古代遺跡の発掘調査。
鉱山周辺に街を作る計画。
その街とラーグの街を繋ぐ、安全な街道の開発。
ラーグの街そのものの発展。
周辺の畑の改良。
その他、ハイブリッジ男爵領内の辺境にある村々への支援。
未開拓地の開拓。
やるべきことは無数にある。
「わかりました。それでは、ハイブリッジ男爵のご意見を報告しておきましょう」
「よろしく頼む。盗賊どもの引き取りはいつ頃になりそうだろうか?」
「そうですね。お上がどのような判断を下されるかにもよりますが……。早ければ、数週間後。遅ければ数か月後といったところでしょう」
「そうか。わかった」
つまり、早ければ俺がヤマト連邦へ向かうためにラーグの街に戻るタイミングで、連れていけるわけだ。
遅ければ、ヤマト連邦の件が片付いてからになるだろう。
「よし。盗賊どもの件はこれでいいな? 次が最後の仕事だが――」
「はい。闇蛇団に囚われていた少女――ノノンさんのケアをお願いします」
レティシアは真剣な表情でそう言ったのだった。
俺は再び、レティシア中隊長を訪ねていた。
「よう。レティシア」
「おはようございます。ハイブリッジ男爵」
レティシアが敬礼する。
相変わらず堅苦しいが、その敬礼は少しだけ崩れていた。
俺へ気を許してくれた……わけではなさそうだ。
むしろ逆。
俺への敬意が低下傾向なのを感じる。
これはマズイ。
「ほら、肩の力を抜けよ。酒でも飲もうぜ」
「結構ですっ! それで、昨日の取り調べはどうでしたか? 特に悪質な者、情状酌量の余地がある者、利用価値がある者などについて、ハイブリッジ男爵のご意見をお聞きしたいのですが……」
さっそく尋問結果について聞かれた。
少し焦っているようだ。
イリーナがいない今、この件の最終責任者はレティシアだからな。
ネルエラ陛下や他の”誓約の五騎士”から失望されないように、ベストを尽くす必要があるのだろう。
「書面にまとめてある。この報告書を見てくれ」
そう言って、まとめた資料を渡す。
レティシアは書類に目を通していく。
表情が段々と険しくなっていった。
読み進めていくうちに、顔が真っ赤になっていく。
「な、なんですかこれはっ!? ふざけているのですかっ!」
バンッと机を叩きながら立ち上がるレティシア。
あまりの剣幕に、通りすがりのメイドがビクっと反応していた。
「あ~、落ち着け。座れって。別にふざているわけではないぞ」
「これが落ち着いていられますかっ! こんなものが通ると思っているんですかっ! バカにしているのですかっ!!」
「まぁ、そう怒るなって。俺の意見をありのまま記載してあるだけだ。嘘偽りはない。平民から男爵に成り上がった俺の能力を疑うのか?」
「くぅ……」
悔しげに唇を噛み締め、ゆっくりと着席するレティシア。
彼女はまだ知らないが、俺には加護付与というチート能力がある。
その副次的な恩恵により、各人から俺に対する忠義度を測ることが可能だ。
これにより、俺に対して過度の敵意を抱いている者は察知できる。
また、数日前にアビーたちに施したように、魔力を用いた真偽判定の技術もある。
盗賊の面々は、アビーたちのような素人とは異なり魔法抵抗力がそこそこある者が多かった。
そのため精度100パーセントとまでは言えないが、それでも並の尋問官では得られない程度には正確な供述を引き出すことが可能だ。
「そ、それにしたって、この内容は……」
レティシアが目の前の書類に視線を落とす。
そこにはこう書かれている。
『特に悪質な者……0人。殺人や放火の罪は確認できず。誘拐や人身売買の罪はあるが、闇の瘴気の影響を考慮する必要あり。適切に罪を償わせれば、極刑には及ばないと考えられる。ただし、被害者への補填は別途必要――』
『利用価値がある者……全員。幹部クラス以上は固有の技能を持っており、死罪や無期懲役で失うには惜しい人材である。適切な監視と管理の元、働かせるべきである。末端メンバーはさしたる技能はもっていないものの、身体能力はしっかりしている。犯罪奴隷として鉱山で働かせるべし』
『特記事項……キサラという女は、盗賊として経験豊富である。蛇の道は蛇。今後の盗賊狩りに活かせられると思われる。ハイブリッジ男爵家にて引き取ることを強く希望する』
『特記事項……トパーズという女は、闇カジノにて案内人を務めていた。そのノウハウを何らかの形で活かせると思われる。ハイブリッジ男爵家にて引き取ることを強く希望する』
俺が書いた内容だが、概ね間違っていないと思う。
まぁ、あくまで一意見なので、最終的にはサザリアナ王国の法律で処理されるだろう。
「こ、こんな意見……。ハイブリッジ男爵は、悪を断罪するおつもりがないので? これでは盗賊団を無罪放免にしろと言っているようなものではありませんかっ!」
「いやいや、さすがに無罪放免とは違うだろ」
要するに、犯罪奴隷として酷使してやれと書いてあるのだ。
別に、俺は死刑廃止論者ではない。
日本にいたときは、酷いニュースを見る度に内心で『こんなやつ、さっさと死刑にしろよ』と思っていた。
ただ、この世界は地球とは事情が異なる。
奴隷契約を結ぶ首輪という便利な魔道具があるこの世界では、死刑や懲役という刑罰を採用する利点が極端に薄いのだ。
死刑や懲役にすべき例外があるとすれば、『魔法抵抗力が高すぎて奴隷契約を結ばせることができない』とか『更生の可能性が極端に低い』とか『戦闘能力が高く、万が一逃げられた場合に再び甚大な被害が予想される』とか、そういった犯罪者だろうな。
今回捕らえた盗賊の面々は、そこそこ強いが『魔法抵抗力が高すぎて奴隷契約を結ばせることができない』や『戦闘能力が高く、万が一逃げられた場合に再び甚大な被害が予想される』というほどではない。
また、それぞれ好き勝手に犯罪を犯していた無法集団ではあるが、『更生の可能性が極端に低い』というほどでもない。
闇の瘴気の影響下においても、殺人や放火はしていないようだったしな。
一定程度の自制心や良心はあると見ていいだろう。
「まぁ、あくまで一意見だ。気に入らなければ却下してくれ」
「……今回の第一功労者であり、男爵家当主のご意見です。全面的な却下などは、まずあり得ないでしょう。ほぼ通ると思います。ですが、その後の処理でもまたハイブリッジ男爵に白羽の矢が立つかもしれませんよ」
「ん? どういうことだ?」
「つまり、犯罪奴隷に堕とした盗賊の面々を、ハイブリッジ男爵に引き取っていただくことになるかもしれないということです」
「それくらいなら問題ないさ。ハイブリッジ男爵領は人手不足だからな」
西の森の奥地にある鉱山の開発。
鉱山の一角にある古代遺跡の発掘調査。
鉱山周辺に街を作る計画。
その街とラーグの街を繋ぐ、安全な街道の開発。
ラーグの街そのものの発展。
周辺の畑の改良。
その他、ハイブリッジ男爵領内の辺境にある村々への支援。
未開拓地の開拓。
やるべきことは無数にある。
「わかりました。それでは、ハイブリッジ男爵のご意見を報告しておきましょう」
「よろしく頼む。盗賊どもの引き取りはいつ頃になりそうだろうか?」
「そうですね。お上がどのような判断を下されるかにもよりますが……。早ければ、数週間後。遅ければ数か月後といったところでしょう」
「そうか。わかった」
つまり、早ければ俺がヤマト連邦へ向かうためにラーグの街に戻るタイミングで、連れていけるわけだ。
遅ければ、ヤマト連邦の件が片付いてからになるだろう。
「よし。盗賊どもの件はこれでいいな? 次が最後の仕事だが――」
「はい。闇蛇団に囚われていた少女――ノノンさんのケアをお願いします」
レティシアは真剣な表情でそう言ったのだった。
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