【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

764話 飛竜・爆砕波

 少女騎士たちとの戦いも終わりを迎えている。
 ナオミ以外は、戦闘不能もしくは降参に追い込んだ。
 そしてナオミは木剣を失い、その後の武闘も俺には通じていない。

「ナオミちゃんは十分に戦ったよ。さぁ、わざわざ痛い目に遭う必要もあるまい。降参してくれ」

「いえ、まだですっ!!」

 ナオミはそう叫ぶ。
 そして、ジリジリと間合いを詰めてきた。
 次の瞬間――

「【飛竜の型】!!」

 ナオミが叫んだ。
 同時に全身にまとう闘気が膨れ上がっていく。

「【飛竜の型】とは珍しい技を使うな」

 俺は感心して呟いた。
 これは、闘気による身体強化系の技術の一つだ。
 ドラゴンやワイバーンなど、空を飛ぶ魔物と戦うときに有効な技らしい。
 機動力が向上する他、一撃の破壊力も増大するという。
 ただし、制御が難しいらしく、使いこなすためには相当の努力が必要なはずだ。

「ハイブリッジ様! これがアタシの全力ですっ! はあああぁっ!!」

 ナオミが闘気を練り上げる。
 そして――

「【飛竜・爆砕波】!!」

 彼女の両手から、強力な闘気弾が放たれた。

「むんっ!」

 俺はその攻撃に対し、同じく闘気弾を放つ。
 ドゴォッ!!
 強烈な衝撃音が響く。
 それぞれから放たれている闘気弾が拮抗していた。
 俺たちは闘気を放ち続ける。

「ぐぬぅ……」

「うぅ……」

 お互いに一歩も引かない。
 まさか、ナオミがこれほど強力な闘気弾を使えるとは……。
 予想外だ。

(俺は闘気弾があんまり得意じゃないんだよなぁ……)

 ステータス上の『闘気術』のレベルは4だ。
 かなりの闘気量を誇る。
 闘気による身体や武具の強化はお手の物だ。
 ただし、闘気を放出することはあまりしない。
 遠距離攻撃なら、火魔法や水魔法があるからだ。

「やるじゃないか、ナオミちゃん。この俺と互角とはな」

「はぁ、はぁ……。うあああぁっ!!!」

 俺の問いかけに、ナオミは答えない。
 無視しているのではなくて、単に答える余裕がなさそうだ。
 全力で闘気を放出しているため、消耗が激しいのだろう。
 このままだと闘気切れで倒れてしまいかねない。

(仕方がない。そろそろ終わらせるか)

 俺は右手の人差し指を立て、クイっと動かした。
 すると、闘気弾の均衡が崩れる。
 俺の闘気弾によって、ナオミの放った闘気弾が押し戻されていったのだ。

「あっ!?」

 驚きの声を上げるナオミ。
 だが、もう遅い。
 俺はナオミの闘気弾を打ち破って――

 ボンッ!
 不意に、俺の横顔に闘気弾が直撃した。
 威力はそれほどでもないが、突然の出来事で少し驚いたぞ。

「おっ!? なんだ?」

 俺は首を振って、横を見る。
 そこには、闘気弾を放ったと思われる少女騎士――ルシエラが立っていた。

「はぁっ、はぁっ……」

 荒い息を吐きながら、彼女は俺を見つめる。
 そして、力尽きたのかその場に倒れ込んだ。

(木剣を没収して終わりだと油断していたな……。確かに、武器を没収されたら失格とは言っていなかった)

 俺は苦笑する。
 一太刀……ではないが、これも一応は俺へ一撃当てたことになってしまうな。
 ルシエラへの褒美を考えないと――
 いや待て。
 今はそれどころじゃない。

「今ですっ! はあああぁっ!!!」

 ナオミが叫び声を上げ、闘気弾の出力をさらに上げる。
 それは俺の闘気弾を打ち破り、こちらへ向かってきた。

「おおおおおぉっ!?」

 余裕ぶっていたところに、ルシエラからの横槍。
 完全に虚を突かれた形となり、俺は慌てる。
 慌てて出力を増そうとしたが、間に合わない。

「ぎょえぇー! そ、そんなバカなーーーっ!!」

 闘気弾は俺へと着弾し、大爆発を起こす。

「ぐっはあああぁっ!!!」

 まともに食らった俺は吹き飛ばされ、地面を転がっていく。

「や、やった!! ハイブリッジ様に一撃を入れました!!!」

「「「おおおおぉっ!!!」」」

 少女騎士たちから歓声が上がる。
 これで、ナオミの実力が認められたことだろう。
 意図して一撃を受けたわけではないのだが、これはこれで結果オーライというやつだ。

「すごいわ、ナオミちゃん!」

「さすがですね」

「うん、ナオミちゃんは頑張っていたもんね」

 少女たちが口々にナオミを称える。

「えへへ……。これで、アタシもハイブリッジ様の……お側……に……」

 ナオミは照れ笑いを浮かべると、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。
 俺は慌てて彼女の元に駆け寄り、抱きかかえる。

「大丈夫か? ナオミちゃん?」

「あ、あれ……。ハイブリッジ様、どうして……」

 ナオミが不思議そうにつぶやく。
 まぁ、弾き飛ばしたはずの相手が、自分を抱き留めているのだから無理もない。

「ナオミちゃんの攻撃は素晴らしいものだった。だが、まだ技が未完成だったようだな。弾き飛ばされはしたが、ダメージ自体は軽微だった」

 物理的な攻撃の目的は、大きく2つある。
 1つは、弾き飛ばしたり体勢を崩させたりすることによって、相手の戦闘態勢を強制的にリセットさせることだ。
 剣やハンマーによる急所以外への攻撃、シールドバッシュ、風魔法の『エアバースト』などがこれに当たる。
 そしてもう1つが、相手の継戦能力を奪うことだ。
 剣やハンマーによる急所への攻撃、高火力の魔法攻撃などがこれに当たる。
 ナオミの『飛竜・爆砕波』は、もっぱら前者の目的に即したものとなっていた。

「うぅ……。そんなぁ……」

「落ち込む必要はない。ナオミちゃんは良く戦った。ハイブリッジ家に登用するにあたって、何の不満もないほどにな」

「そうですか? ふぇへへ、良かったぁ……」

 ナオミは安心したのか、微笑みながら意識を失ったのだった。

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