【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
754話 返還金
『闇蛇団』の掃討作戦を成功させた俺は、宿屋の自室でゆっくりしている。
ノノンへの援助や一般参加者の取り調べも重要だが、今はそれ以上に優先したい事柄がある。
俺はソファから立ち上がり、自室から出る。
向かう先はリビング……ではない。
ミティやアイリスに割り当てられた部屋……でもない。
俺が向かったのは、ネスターとシェリーに割り当てられている部屋だった。
「お邪魔するぞ」
ノックをしてドアを開けると、そこにはネスターとシェリーがいた。
「おお! タカシ殿!」
「お疲れさまです。タカシさん」
2人は笑顔で出迎えてくれる。
彼らは奴隷だが、俺よりも年上だ。
そして、奴隷になる前もDランク上位の冒険者として活躍していた。
何が言いたいのかと言えば、忠義度がやや上がりづらい要素が揃っていたということだ。
彼らと同時期に購入した奴隷は、彼らの他に4人。
クリスティ、ハンナ、ニルス、リンだ。
その全員が既に加護(小)の条件を満たしている。
一方で、ネスターとシェリーはまだ条件を満たしていない。
「いったいどうしたんだい? 今は非番の時間では?」
ネスターが不思議そうに尋ねてくる。
「うむ。2人に伝えておきたいことがあってな」
「伝えておきたいことか。なんだ?」
「お前たちが奴隷に堕ちるきっかけとなった、賠償金の支払いについてだ。『闇蛇団』の奴らがあのときに漏らしていた通り、やはり奴らが暗躍していたようだ」
ネスターとシェリーは、冒険者としての依頼をこなす際に、誤って高価な品を破損させてしまった。
その賠償として奴隷に堕ちたわけだが、それがそもそも『闇蛇団』が仕組んだことだった。
「その件か。過ぎたことは仕方がないな。俺たちの認識が甘かったのも事実だ」
「うん。それに、そのおかげでタカシさんに買われて、こうして素晴らしい待遇で働かせてもらっているんだ。結果オーライだよ」
「そういうものなのか? まぁ、前向きに考えればそうなるか……」
俺は腕を組んで首を傾げる。
「それで、俺たちに何を伝えたいんだい? 『闇蛇団』の罪を立証するための証言をしろとか?」
「それもいずれは頼むかもしれない。だが、今回俺が来たのは、その賠償金の件さ」
「ほう」
「ネスターとシェリーが奴隷に堕とされたのは半ば仕組まれたことで、奴らは賠償金と保険金を二重取りしていた。その不法利得の一部が、返還される手筈になっている」
俺はそう説明する。
この国の法体制はなかなかにしっかりしており、このあたりも抜かりない。
「おお……。それは良かった。ハイブリッジ家のために役立ててほしい」
「まぁ、今のタカシさんからすれば大したことない額かもしれないけど……」
2人がそう言う。
奴隷が得る金は、基本的には主人のものになる。
この様子だと、今回の返還金も同じだと思っているようだ。
「いや、その金は2人のものだぞ?」
「え? だが、俺たちは奴隷で……」
「だから、そもそも奴隷に堕ちるきっかけとなった金の動きに問題があったという話なんだ。だから、返還金は2人のものさ」
論理的に考えれば当然の帰結だし、王国法の隅にはそのような取り決めもあるらしい。
だが、一般民衆がこういった法理論をどこまで理解しているかは怪しい。
実際、冒険者の中では思慮深く物知りな方の2人でも、知らなかったようだ。
「そ、そうだったのか……」
「さすがはタカシさんだね。そんなことまで知っていて、しかも私たちに知らせてくれるなんて……」
ネスターとシェリーが感心してくれている。
主人の中には、こうした無知に漬け込む奴も一定数はいるだろう。
だが、俺はそんな真似はしない。
「それじゃあ、ありがたく受け取っておこうか」
「うん。そのお金で、警備に役立つ魔道具でも買おうか。これからも警備兵として頑張れそうだよ」
シェリーがそんなことを言い出す。
「おいおい。警備に必要なものは俺が出すぞ? 今使っている武具だって、ミティの協力の元で用意したものだし……。魔道具なら、ラーグの街に帰った後にジェイネフェリアに言って作らせればいい」
ジェイネフェリアはハイブリッジ家の御用達魔導技師だ。
かなりの腕を持っており、言えばいろんなものを作ってくれる。
性格的には結構ちゃっかりしているので、遠慮なく必要経費を請求してくるタイプだ。
彼は中性的な少年である。
加護(小)を付与できていない男たちの中では、比較的忠義度が高い方だ。
いずれは条件を満たすだろう。
「タカシ殿……。あれほど優れた武具を貸してくれただけじゃなく、魔道具まで……?」
「す、すごい……。太っ腹だ……」
ネスターとシェリーが感心してくれている。
だが、言うほどか?
仕事に必要なものを雇用主が用意するのは、当然じゃないか?
(……いや、そうでもないか)
日本のブラック企業でも、備品を自腹で購入させるところはあった。
ひどいところだと、トイレの紙とか事務所の蛍光灯とか……。
ホワイトと言われている企業でも、ペンやメモ用紙ぐらいは自分で購入せざるを得ない雰囲気のところはいくらでもあるだろう。
(ふむ……。あとひと押しといったところだな)
俺はとある数値を確認しつつ、話を続けることにしたのだった。
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俺はソファから立ち上がり、自室から出る。
向かう先はリビング……ではない。
ミティやアイリスに割り当てられた部屋……でもない。
俺が向かったのは、ネスターとシェリーに割り当てられている部屋だった。
「お邪魔するぞ」
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「おお! タカシ殿!」
「お疲れさまです。タカシさん」
2人は笑顔で出迎えてくれる。
彼らは奴隷だが、俺よりも年上だ。
そして、奴隷になる前もDランク上位の冒険者として活躍していた。
何が言いたいのかと言えば、忠義度がやや上がりづらい要素が揃っていたということだ。
彼らと同時期に購入した奴隷は、彼らの他に4人。
クリスティ、ハンナ、ニルス、リンだ。
その全員が既に加護(小)の条件を満たしている。
一方で、ネスターとシェリーはまだ条件を満たしていない。
「いったいどうしたんだい? 今は非番の時間では?」
ネスターが不思議そうに尋ねてくる。
「うむ。2人に伝えておきたいことがあってな」
「伝えておきたいことか。なんだ?」
「お前たちが奴隷に堕ちるきっかけとなった、賠償金の支払いについてだ。『闇蛇団』の奴らがあのときに漏らしていた通り、やはり奴らが暗躍していたようだ」
ネスターとシェリーは、冒険者としての依頼をこなす際に、誤って高価な品を破損させてしまった。
その賠償として奴隷に堕ちたわけだが、それがそもそも『闇蛇団』が仕組んだことだった。
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「うん。それに、そのおかげでタカシさんに買われて、こうして素晴らしい待遇で働かせてもらっているんだ。結果オーライだよ」
「そういうものなのか? まぁ、前向きに考えればそうなるか……」
俺は腕を組んで首を傾げる。
「それで、俺たちに何を伝えたいんだい? 『闇蛇団』の罪を立証するための証言をしろとか?」
「それもいずれは頼むかもしれない。だが、今回俺が来たのは、その賠償金の件さ」
「ほう」
「ネスターとシェリーが奴隷に堕とされたのは半ば仕組まれたことで、奴らは賠償金と保険金を二重取りしていた。その不法利得の一部が、返還される手筈になっている」
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「おお……。それは良かった。ハイブリッジ家のために役立ててほしい」
「まぁ、今のタカシさんからすれば大したことない額かもしれないけど……」
2人がそう言う。
奴隷が得る金は、基本的には主人のものになる。
この様子だと、今回の返還金も同じだと思っているようだ。
「いや、その金は2人のものだぞ?」
「え? だが、俺たちは奴隷で……」
「だから、そもそも奴隷に堕ちるきっかけとなった金の動きに問題があったという話なんだ。だから、返還金は2人のものさ」
論理的に考えれば当然の帰結だし、王国法の隅にはそのような取り決めもあるらしい。
だが、一般民衆がこういった法理論をどこまで理解しているかは怪しい。
実際、冒険者の中では思慮深く物知りな方の2人でも、知らなかったようだ。
「そ、そうだったのか……」
「さすがはタカシさんだね。そんなことまで知っていて、しかも私たちに知らせてくれるなんて……」
ネスターとシェリーが感心してくれている。
主人の中には、こうした無知に漬け込む奴も一定数はいるだろう。
だが、俺はそんな真似はしない。
「それじゃあ、ありがたく受け取っておこうか」
「うん。そのお金で、警備に役立つ魔道具でも買おうか。これからも警備兵として頑張れそうだよ」
シェリーがそんなことを言い出す。
「おいおい。警備に必要なものは俺が出すぞ? 今使っている武具だって、ミティの協力の元で用意したものだし……。魔道具なら、ラーグの街に帰った後にジェイネフェリアに言って作らせればいい」
ジェイネフェリアはハイブリッジ家の御用達魔導技師だ。
かなりの腕を持っており、言えばいろんなものを作ってくれる。
性格的には結構ちゃっかりしているので、遠慮なく必要経費を請求してくるタイプだ。
彼は中性的な少年である。
加護(小)を付与できていない男たちの中では、比較的忠義度が高い方だ。
いずれは条件を満たすだろう。
「タカシ殿……。あれほど優れた武具を貸してくれただけじゃなく、魔道具まで……?」
「す、すごい……。太っ腹だ……」
ネスターとシェリーが感心してくれている。
だが、言うほどか?
仕事に必要なものを雇用主が用意するのは、当然じゃないか?
(……いや、そうでもないか)
日本のブラック企業でも、備品を自腹で購入させるところはあった。
ひどいところだと、トイレの紙とか事務所の蛍光灯とか……。
ホワイトと言われている企業でも、ペンやメモ用紙ぐらいは自分で購入せざるを得ない雰囲気のところはいくらでもあるだろう。
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