【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
747話 全員動くな!
「きゃああぁっ!」
「わあぁっ!?」
観客たちが騒ぎ出す。
中には慌てて逃げ出す者もいる。
そりゃそうだ。
賭博場中央の目立つ場所でミティとロッシュが勝負していて、それが終わったと思ったら、いきなりこんな状況になったのだから。
その元凶のミティはと言うと……。
「ハハッハハァーッ! いいザマです!!」
燃え盛るロッシュを見て高笑いしている。
どうやら完全にハイになっているようだ。
まあ、無理もない。
ロッシュやその前の五英傑との戦いで、散々セクハラ発現されてストレスが溜まっていたのだろう。
幼女扱いされたかと思えば、年増扱いもされた。
その上、総支配人のロッシュとの勝負ではボコボコにされ無一文にされてしまった。
(ミティは優しいが、結構沸点が低めなんだよなぁ……)
俺はそんなことを考えながらミティを見る。
ぶっちゃけ、彼女がこんな風に実力行使に出ることは想定外だった。
俺が彼女に指示したのは、あくまでも真っ向勝負だ。
このカジノのルールに従いつつも荒稼ぎして、『闇蛇団』を追い詰めるというものである。
ミティもそれは理解していたはずなのだが……。
(でも、結果的には良かったかな?)
五英傑、それに頭目のロッシュを引きずり出した時点で、こちらの目的は半ば達成されたと言える。
そこそこの地位にいるはずの案内人トパーズは、俺がアルハラでしっかり無力化しておいたしな。
後は、このまま流れで一網打尽にすればいいだけだ。
「【ウォーターボール】」
「え? 何だ?」
「水が……」
俺が生成した水の球が、火だるまになっていたロッシュを消火していく。
「ふぅ……。とりあえずこれで大丈夫だろ」
「……て、てめぇら、この俺にこんなことをしてタダじゃおかねぇぞ」
火傷を負ったロッシュが怒りの声を上げるが……。
「まだ事態を把握できていないのか。哀れな奴だな」
「あん? それはどういう……」
俺はロッシュを無視して、賭博場中央付近のテーブルの上に立つ。
そして、いまだ混乱気味の客や団員に告げる。
「全員動くな! 少しでも怪しい動きをした者は容赦なく攻撃する。……これは脅しじゃないからな?」
俺は右手を上に上げる。
すると、俺の背後に控えていたミティが、巨大なハンマーを担ぎ上げた。
アイテムバッグに収納していたものだ。
「ひぃっ!?」
「な、何だあのハンマーは!?」
「ヤバいって!」
ミティの姿を見た客たちから悲鳴が上がる。
彼女が担いでいるのは、彼女の身の丈ほどもある巨大すぎる金属製のハンマーだ。
もちろん、ただの鉄槌ではない。
一流の鍛冶師である彼女が作った『大戦槌ウリエル』という破壊力抜群の武器である。
「……さて、そろそろ本題に入ろうか。ここが『闇蛇団』の運営する違法カジノだということ、もはや言い逃れできんぞ。この場にいる者は全員、俺の名の元に捕縛させてもらう!」
罪状は、賭博法違反、脱税、詐欺、恐喝、不法建築などなど。
いくらでも挙げられる。
運営側の『闇蛇団』の面々の罪は重く、参加していただけの客は軽くなるだろう。
だが、逮捕自体は免れられない。
「ふざけんな! てめぇに何の権限があってそんなことをするんだ!」
「そうだそうだ!」
「証拠はあるのか!?」
「まさか、お前が見たっていうだけで証拠と言い張るつもりじゃねぇだろうな!」
「私のママは、有名貴族家の従者の妻の従姉妹なのよ! あんたの証言なんか、握りつぶせるんだから!」
一般客たちが騒ぎ立てる。
彼らの反応も当然だ。
こんな高レートの賭博場に出入りしているという時点で、彼らはそれなりの金持ちばかり。
犯罪者として簡単に検挙されるつもりなどないだろう。
中にはカモとして招き入れられた者もいるかもしれない。
だが、そういった者は短期間の内に有り金をむしり取られて、借金まで背負わされるという。
口を滑らせたトパーズの情報によれば、つい昨日も幼い少女が奴隷に堕とされたとか。
このカジノの常連となっている者は、一般参加者とはいえ、被害者というよりは犯罪者寄りだ。
「そうか……。あくまでシラを切る気なんだな」
「ふん! 俺たちは犯罪なんてやってない!」
「そうよ! 私たちが高レートで遊んでいたなんて証拠がどこにあるのかしら?」
「このカジノは合法的な営業をしているんだ! 文句があるなら、お上にでも訴えやがれ!!」
「見たところ、騎士団の小隊長あたりか? 正義感を持つのは結構だが、もっとやるべきことがあるだろう!」
一般客たちが叫ぶ。
……まあ、こうなるとは思っていた。
高レートで遊んでいただけの者たちは、罪の意識が軽いのだ。
まぁ、実際のところ運営側に比べればはるかに軽い罪なので、間違っているわけではないのだが。
それでも、逮捕自体はさせてもらうことになる。
「俺が小隊長だって? はっはっはっは!!」
「な、何がおかしい!!」
笑い声を上げた俺に対して、一般客の一人が食ってかかる。
「俺が誰なのか知らないのか?」
「小隊長の一人ひとりの顔を覚えているわけがないだろ!」
「だから、俺は小隊長なんかじゃないって」
王都騎士団の小隊長と言えば、Cランク冒険者くらいの戦闘能力を持つイメージだ。
俺の配下のナオン=ネリアは王都騎士団の元小隊長。
また、俺が王都に来てから鍛えてやった豪槍くんたちも小隊長だ。
弱くはないのだが、恐れおののくほど強くもない。
俺の実力はもっと上だ。
正体を教えてやることにしよう。
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