【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

732話 借金完済も夢じゃない!?

 引き続き、過去の話である。
 とは言っても、時は既に現在に迫りつつある。
 タカシが王都周辺にて『黒狼団』や『白狼団』を捕らえる少し前ぐらいの話だ。

 『闇蛇団』の男によって、闇カジノへと連れて行かれたノノン。
 だが、彼女の前に広がっていたのは想像を超えた光景であった。

「なに……これ……」

 思わず呆然と呟く。
 そこは薄暗い部屋であり、テーブルの上にはカードが置かれている。
 そして、ディーラーがカードをシャッフルしているところだった。

「おう。今、ちょうど始まったばかりみたいだな。まずは見学しつつ、ルールを説明してやろう」

「は、はい……」

 闇カジノでゲームを行うには、最低限のルールを知っておく必要がある。
 だが、ノノンは知らない。
 こういうことに無縁だったのだから当然だ。
 男は、そんな彼女に丁寧に説明を始めた。

「……と、こういうわけだ。理解したか?」

「はい、なんとか……。でも、わたしには難しそうです。やっぱり帰らせてください」

「おいおい、ここまで来てそりゃ無いだろ? 大丈夫だって。やってみろよ」

「ですが……」

「もし負けても、嬢ちゃんは痛くない。なぜなら、元々が降って湧いた金だからだ。そうだろう?」

「うっ……」

 そう言われてしまうと、ノノンとしては言い返せなくなる。
 今日持ってきたお金は、そもそもこの男から無償でもらったお金なのだ。
 ギャンブルに参加せずに帰るなら没収すると言われても、素直に渡すしかない。

 参加してもしなくてもお金がなくなってしまうなら、参加した方がいい。
 ひょっとすると勝てるかもしれないからだ。

「まぁ、心配すんな。客は皆、金を持っているヤツらだ。案外、嬢ちゃんみたいな子供でも簡単に儲かるかも知れねぇぞ?」

「……」

「さてと、今の勝負が一段落したようだな。そろそろ嬢ちゃんも参加するといい」

「え? で、でも……」

「心配いらない。ここは闇カジノだが、イカサマの類はしていない。純粋に実力と運だけの世界なんだ。むしろ、嬢ちゃんのような初心者の方が向いているかもしれん」

「……」

「ほれ、見てみろよ」

 男が指差す先を見ると、そこには大量の金貨の山があった。

「もし勝てれば、あの全てがお前のものになってもおかしくはないんだぜ?」

「……分かりました。やります」

「そうこなくちゃな!」

 こうして、ノノンは人生初のギャンブルに挑戦することになった。
 彼女は席に着き、ディーラーによってカードが配られるのを待つ。

 ちなみにこのカードは、地球で言うところのトランプに近いものだ。
 そして行っているゲームは、ポーカーに近しいものである。
 絵札の種類や枚数、カード自体の品質、ルールの差異などは当然存在するが、今は置いておこう。

「さぁ、始めようか。最初の手札を確認しろ」

「えっと、はい」

 男の指示に従い、ノノンは自分のカードを確認する。
 その様子を見ていた他の客が口を開く。

「おいおい、参加者以外が口出しするのはマナー違反だろ?」

「そうね。ズルいんじゃないの?」

「勘弁してくれよ。コイツは初心者なんだ。アドバイスぐらいいいじゃねえか」

 男がそう答える。

「なあ、ディーラーさんもいいだろ?」

「……他の方がよろしいのであれば……」

「ほら、カジノ側の人間もいいと言ってるし、いいじゃないか」

「仕方ねえな」

「ま、初心者だっていうのなら、カモらせてもらおうかしら」

 参加者の男女があっさりと引き下がる。
 本当に初心者なら、多少のアドバイスを受けたところで大して変わらない。
 下手にアドバイスを禁止すれば、せっかくのカモが別の場所に行ってしまう。
 だから彼らは、ノノンへのアドバイスを認めることにした。

「パス」

「コール」

「レイズ」

「……えっと、コールです」

 ノノンがチラリと男に視線を向けつつ、手番を終わらせた。

「よし、次は手札交換だ。その手札なら……」

「ええっと、これですよね?」

「ああ、それだ。それを場に出せば、また新しいのと交換できるぞ」

 ノノンはカードを2枚捨て、新たなカードをディーラーから受け取る。
 そして2回目の賭けを行い、各自が手札を公開する。

「ワン・ペア」

「スリーカードよ」

「くそっ! ブタだ!!」

「へへっ。今回は俺の勝ちだな。なんと、フルハウスだ!」

 ノノン以外の参加者が次々にハンドを公開していく。

「……」

「どうした嬢ちゃん。俺の手には勝てないだろ? 悔しかったら何か言ってみな!」

「……」

 ノノンは何も言わず、ただ自分の手札を見つめているだけだった。

「ははは! やっぱりまだ早かったか。悪いな。初心者にはまだ早いゲームだった」

 フルハウスの男が勝ち誇った表情でそう言う。
 しかし……。

「……フォーカードです」

「な、なに!?」

 ノノンの手札を見て、男は驚愕した。
 なぜなら、彼女の手元には同じ数字の4枚のカードがあったからだ。

「そ、そんなバカな……」

「今回の勝負はそちらのお客様の勝ちとなります。それでは、こちらがお客様への配当でございます」

 ディーラーがノノンの前に、大量のチップを置く。

「こ、これって……」

「ああ。全てお前のものだ。やるじゃねえか! お前には才能があるかもな。これなら、借金完済も夢じゃないぜ!」

「……は、はい。ありがとうございます!」

 ノノンは、自分が勝ったことを未だに信じられなかった。
 しかし、目の前にある大量の金貨を見ると、これが現実だと認識させられる。

(ひょっとすると、本当に借金を返せるかも……。そうしたら、お父さんもお母さんも喜んでくれるはず……)

 現実離れした額を一瞬で稼いだことにより、ノノンは正常な判断力を失っていく。
 その傍らでは、アドバイスをしていた『闇蛇団』の男、そして他の参加者たちまでもが不気味な笑みを浮かべている。
 だが、勝利の余韻に浸るノノンがそれに気付くことはなかった。

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