【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

728話 賭博場入り

「さあ、地下の賭博場に案内する気になったか?」

「チッ……。誰がてめぇなんかに……」

「じゃあいいさ。自分で探すから」

 千やキサラからの情報、そしてこのチンピラたちの反応からして、この酒場から地下へ下りる手段があるのはほぼ確実だ。
 どこかに隠された階段でもあるのだろう。
 後は探せばいいだけだ。

 俺は気配察知術レベル2、視力強化レベル1、聴覚強化レベル1など、探知系のスキルも持っている。
 頑張ればきっと見つかるさ。
 ミティ、ナオミ、ネスター、シェリーたちも手伝ってくれるだろうし。
 俺はそんなことを考えつつ、地下への階段を探し始める。

「おっ! ここから音が聞こえるな」

「なにっ! まさか、兄貴が……」

「兄貴?」

 俺が聞き返したときだった。
 バンッ!!
 床の一部が勢いよく開き、そこから大男が現れた。
 上半身裸で、筋肉隆々といった感じだ。

「ほう。地下への通路はそこにあったか。わざわざ教えてくれるとは、丁寧なことだ」

「……お前が招かれざる客か」

 大男は俺を睨みつける。

「そこを通らせてもらおう。それとも、力ずくで押しとおるか?」

 俺は一応、そう問い掛けた。

「兄貴! そんな野郎はぶち殺してください!」

「兄貴が来たならもう安心だ!」

 他のチンピラたちが叫ぶ。
 こいつはボスではなさそうだが、兄貴と慕われているからにはそれなりに強いのだろう。

「やるか? 俺としてはそれでも構わない」

 俺は戦闘態勢を整える。

「…………」

 大男は無言のまま、こちらを睨む。
 そして、口を開いた。

「いや、案内しよう」

「いいのか? 子分どもの手前、そんなに簡単に引き下がっちゃ格好が付かないだろ?」

「別に構わん。勝てない奴に勝負を挑むほど、俺は愚かじゃないつもりだ。自殺願望はない」

「ふーん。まあ、どっちでもいいけど」

「それに、金ぐらいは持っているんだろう?」

「ああ、この通りさ」

 俺は金貨100枚以上が入った袋を掲げて見せる。
 賭博場に潜入する以上、見せ金は必要だろうと思って用意しておいたのだ。

「わかった。こっちに付いてきてくれ」

 そう言って、大男が歩き出す。
 俺、ミティ、ナオミ、ネスター、シェリーはその後に続く。
 チンピラたちは、兄貴分が実力行使に出ると思っていたらしい。
 少し拍子抜けという顔をしていた。

「ミ……ベティ、少し暗いぞ。足元に気をつけてくれ」

「ありがとうございます! タカ……ターキース様!」

 俺とミティは、互いに偽名を使って声を掛け合う。

「ほら、ナオミちゃんも」

「あ、ありがとうございます。助かります」

 俺はミティとナオミに手を貸しつつ、階段を下りていく。
 え?
 ネスターとシェリーには手を貸さないのかって?

 ネスターは大事な配下ではあるが、男だ。
 男は自分で何とかしろ。
 生命の危機ならさすがに助けるが、足元が暗い程度で俺が手を貸すのもそれはそれでキモいだろ。

 一方のシェリーは女性なので俺が気を配ってもいいのだが、彼女にはネスターというお相手がいる。
 長年冒険者として活動を共にしてきたそうだし、お互いの身を案じて共に奴隷に堕ちたほどの仲だ。
 俺が入り込む余地はない。

「(ベティ、ターキース……。聞かない名だな……。こいつらはいったい何者なんだ?)」

 先導する大男が小声でそう呟いたのが聞こえた。
 俺たちが偽名を使っているのは、一応正体がバレないようにするためだ。
 まあ、こんなふうに正面から乗り込んでおいて今さら感はあるが。

「ここだ」

 しばらく階段を下りると、そこには大きな扉があった。
 大男がその前に立ち、ノックをする。

「俺だ。『蛇は闇夜に蠢く』」

 ギイィッ……。
 重厚な音を立てて、ドアが開かれる。
 大男が言った謎の文言は、符丁かな?
 厨二臭い合言葉だが、とやかくは言うまい。

「ほう……」

 地下室の内部を見て、俺は思わず声を上げた。
 そこはなかなかに広い部屋だった。
 天井からは小洒落たシャンデリアがぶら下がり、部屋の中央には高級そうなテーブルが置かれている。
 先客たちがギャンブルに興じている。

「赤の4だ」

「私は黒の7ね」

 ルーレット盤を囲んでいる男女もいれば……。

「おら、ストレートだ!」

「ぐっ! 俺はツーペアだ……」

 ポーカーに興じる男たちもいる。

「ようこそ。ここは我らの賭博場です」

 部屋に入ってきた俺たちに、一人の女性が話しかけてきた。
 20代前半くらいだろうか。
 かなりグラマーな体型の女性で、露出度の高い服を着ていた。

「あなたは?」

「申し遅れました。私はこの賭博場の案内人を務めさせていただいております、トパーズと申します」

「なるほど。では、早速案内してもらえるか?」

「かしこまりました。それではこちらへ……」

 案内人の女性に促され、俺、ミティ、ナオミ、ネスター、シェリーはカジノの中へと入っていく。

「お客様はどのようなゲームをお望みですか? ルーレット、スロット、ポーカー、ブラックジャック、バカラなど色々取り揃えてありますが」

 ポーカーやブラックジャックがあるのか。
 少し意外だな。
 この世界は娯楽分野が未発達だと思っていたが。
 さすがに王都ともなれば、それなりに娯楽があるらしい。

 まあ、厳密に言えば地球とは少しルールが異なるのだろうが。
 俺の異世界言語のスキルは、そのあたりをいい感じに翻訳してくれるのだ。

「そうだな……。まずは総支配人に会わせてもらえないか?」

 俺たちがここに乗り込んだのは、ギャンブルをするためではない。
 ボスを捕らえるためだ。
 もちろん実力行使で暴れてもいいのだが、現状では物証が足りない。
 この国において、賭博自体は違法じゃないからな。
 高額賭博か、あるいは詐欺とか恐喝の証拠を確保する必要がある。
 そのためには、ボスに接触するのがいいだろう。

「申し訳ございません。総支配人にお会いできるのは、限られた方のみとなっておりまして」

「そうなのか?」

「はい。こちらの場にて一定以上勝たれた場合にのみ、その権利が与えられます」

「ふむ。面白い趣向だな」

 俺は案内人の指差す方向に目を向ける。
 ルーレット、スロット、ポーカー、ブラックジャック、バカラなどに興じている者たちがいる。
 まずはギャンブルでこいつらを蹴散らし、荒稼ぎしてやることにするか。

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