【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
726話 闇蛇団
王都、一般街。
路地裏にひっそりと佇む酒場。
ここは、『闇蛇団』のアジトの1つ。
表向きは真っ当な酒場だが、その地下ではメンバーが酒を飲みながら情報を交換し合っていた。
「兄貴。マズイ情報が2つ入ってきました」
男が報告を始める。
「ほう。どんな情報だ?」
聞き返すのは、闇蛇団の幹部の男だ。
「1つ目は、1年以上前に奴隷に堕としてやった元冒険者のコンビです。あいつらを見かけたという情報があります」
「冒険者コンビ……? ああ、Cランク寸前にまでなったっていうあの連中か。依頼中の事故に見せかけて損害賠償を請求してやったのだったな」
「へい。多めに請求してやったのですが、クソ真面目に全額払いやがった奴らです。名前はネスターとシェリー。保険屋にも別口で請求したので、二重取りで儲けさせてもらいやした」
男がそう報告する。
ネスターとシェリーの認識では、あくまで自分たちの過失の責任を取っただけである。
しかし、実は影で闇蛇団が暗躍していたのだ。
「奴らは、確か自分から奴隷堕ちを承諾したのだったな……。それがどうしてこんなところにいるんだ? お前たちが何かヘマをしたんじゃないだろうな?」
「とんでもない! そんなことはありえません。肺の病を誘発する遅効性の毒を仕込んでやりましてね。ちゃんと発症してやした。処分に困った奴隷商人により、遠方か鉱山にでも送られるかと思っていたのですが……」
闇蛇団の詐欺行為に勘付かれてはいなかったが、いつ気づくとも限らない。
関係者の口は塞いでおくべきで、殺すのが確実である。
だが、さすがに死人が出れば騎士団や王家も本腰を入れて調査に乗り出す。
そうなると色々と面倒なことになってしまう。
そこで、多少手の込んだことをしたのだ。
黒狼団が主体となって行った王城の金貨窃盗事件にも関わっていない。
彼ら闇蛇団は、こういうコソコソした細工や配慮で生き延びてきたズル賢い組織だ。
「それはおかしい。肺の病を発症した奴らがなぜ王都にいる? 使い道などないだろう。奴らを購入したのは誰なんだ?」
「そ、それが……。購入したのは、例の『ハイブリッジ騎士爵』なのです。あ、いや、今は男爵になったらしいですが……」
「なにっ!? ハイブリッジだと!? あの”紅剣”か!!」
「へい……。しかも、結構な待遇を受けているらしいです。今回も、護衛として連れてきているとか」
「…………」
男は沈黙した。
彼の頭の中で様々な考えが巡る。
「……もし、このまま放置すれば俺たちの正体がバレてしまうかもしれねえな。だが、下手に手を出すとやぶ蛇になる可能性もある……。よし! とりあえず、放置しろ!」
「へ、ヘイッ!」
幹部の男の判断は概ね正解だ。
タカシは、ネスターやシェリーの被害事実に気づいていない。
下手に刺激しなければ、気づかないままでいてくれるだろう。
「それでだ。もう1つってのは何だ?」
「そっちは、さらにヤバい情報です。黒狼団や白狼団の殲滅に成功した王家は、さらに手を広げるべく他の盗賊集団や犯罪組織にも目を付け始めています」
「なにっ!? ま、まさか俺たち『闇蛇団』もターゲットになっているのか?」
「おそらく……」
闇蛇団は隠れて活動することで生き延びてきた組織だ。
騎士団と正面から戦闘にでもなれば、まず勝利することはできない。
「……ちぃ! 厄介なことになりやがったな。それで、動くのはどこの大隊だ? イリーナの隊か? ゴウセルの隊か? さすがに、魔導師団のコンラードは出て来ないと思うが……」
「それがですね。どうやら、ハイブリッジ男爵が動くらしく……」
「なっ!? まさかあいつが!? くそっ! さっさと自分の領地に帰りやがれ!! なんで王都に居座るんだよ!」
「わ、分かりません。ただ、奴本人の戦闘能力はもとより、妻や配下もとんでもない実力者揃いという話ですが……」
「そんなことは知ってるよ! ……俺はこのことをボスに報告してくる。お前は、下っ端連中にこのことを周知してろ!」
「へい!」
幹部と下っ端の男はそれぞれ、慌てて駆け出したのだった。
*****
王都、一般街。
先ほどとはまた別の酒場。
表向きは真っ当な酒場だが、その地下では違法なギャンブルが行われている。
そこに幹部の男が駆け込んできた。
「ボス! 早急に報告したいことが!」
「何だ? 騒々しい。客もいるんだぞ」
賭博場を取り仕切っている男がそう言いながら顔を上げる。
「それどころじゃありやせん! ”紅剣”が動き出しました!」
「ふん……。そんなことか」
「そんなことって……」
組織の危機だと思って報告に来たというのに、ボスは落ち着いている。
それは頼もしくもあったが、同時に不気味でもあった。
「奴らがどう動いてくるか、お前には分かるか?」
「いえ……」
「俺たちの不法行為を見つけて、そこから芋づる式に摘発するつもりなのだろう。だが、そんなことはさせない。逆に、先手を打ってやる」
「先手を? どうやってですか? 俺らにできることなんて……」
「あるさ。一時的に活動を縮小すればいい。奴は領地持ちの貴族だ。いつまでも王都にいるわけじゃない。奴がいなくなった後で活動を再開するのだ。そうすりゃ何の問題もない」
実際には、タカシが闇蛇団の摘発に失敗すれば、次は誓約の五騎士あたりに引き継がれるだろう。
だが、彼らは彼らで別の仕事もあり忙しい。
苛烈な取り締まりも、そこまで長続きはしないはずだ。
「そ、そりゃあ、理屈ではそうだと思いますが……」
「それにだ。奴らは勘違いしているが、そもそも俺たちは悪事を働いてはいない。正当な権利に基づいて商売をしているだけだ。それを邪魔しようとする奴らこそが悪なのだ」
「……」
闇蛇団の表向きの活動スタンスはその通りである。
組織として生き抜くために、グレーゾーンの行為ばかりを行っている。
ネスターやシェリーの件は明確に違法だが、あれはボスの指示ではなく、一幹部とその部下たちの小遣い稼ぎのための暴走に過ぎない。
それに、バレないための配慮と工作も行き届いている。
「なあに、お前たちの小遣い稼ぎを咎めるつもりはねえよ。だが、それを一時的に抑えろと言っているんだ。ハイブリッジに嗅ぎつけられる前にな」
「……ヘイ。しかし、こちらの賭博場は開いたままなのですか?」
「おうとも。さすがに全てを閉鎖したら、干上がっちまうからな」
「もしハイブリッジが乗り込んできたら……」
幹部の男が懸念の声を上げる。
「ギャンブル自体は違法でも何でもないんだ。歓迎してやるさ。この俺、ギャンブル王ロッシュ様がな。ヒャハハッ!!」
ボスの男はそう不敵に笑ったのだった。
路地裏にひっそりと佇む酒場。
ここは、『闇蛇団』のアジトの1つ。
表向きは真っ当な酒場だが、その地下ではメンバーが酒を飲みながら情報を交換し合っていた。
「兄貴。マズイ情報が2つ入ってきました」
男が報告を始める。
「ほう。どんな情報だ?」
聞き返すのは、闇蛇団の幹部の男だ。
「1つ目は、1年以上前に奴隷に堕としてやった元冒険者のコンビです。あいつらを見かけたという情報があります」
「冒険者コンビ……? ああ、Cランク寸前にまでなったっていうあの連中か。依頼中の事故に見せかけて損害賠償を請求してやったのだったな」
「へい。多めに請求してやったのですが、クソ真面目に全額払いやがった奴らです。名前はネスターとシェリー。保険屋にも別口で請求したので、二重取りで儲けさせてもらいやした」
男がそう報告する。
ネスターとシェリーの認識では、あくまで自分たちの過失の責任を取っただけである。
しかし、実は影で闇蛇団が暗躍していたのだ。
「奴らは、確か自分から奴隷堕ちを承諾したのだったな……。それがどうしてこんなところにいるんだ? お前たちが何かヘマをしたんじゃないだろうな?」
「とんでもない! そんなことはありえません。肺の病を誘発する遅効性の毒を仕込んでやりましてね。ちゃんと発症してやした。処分に困った奴隷商人により、遠方か鉱山にでも送られるかと思っていたのですが……」
闇蛇団の詐欺行為に勘付かれてはいなかったが、いつ気づくとも限らない。
関係者の口は塞いでおくべきで、殺すのが確実である。
だが、さすがに死人が出れば騎士団や王家も本腰を入れて調査に乗り出す。
そうなると色々と面倒なことになってしまう。
そこで、多少手の込んだことをしたのだ。
黒狼団が主体となって行った王城の金貨窃盗事件にも関わっていない。
彼ら闇蛇団は、こういうコソコソした細工や配慮で生き延びてきたズル賢い組織だ。
「それはおかしい。肺の病を発症した奴らがなぜ王都にいる? 使い道などないだろう。奴らを購入したのは誰なんだ?」
「そ、それが……。購入したのは、例の『ハイブリッジ騎士爵』なのです。あ、いや、今は男爵になったらしいですが……」
「なにっ!? ハイブリッジだと!? あの”紅剣”か!!」
「へい……。しかも、結構な待遇を受けているらしいです。今回も、護衛として連れてきているとか」
「…………」
男は沈黙した。
彼の頭の中で様々な考えが巡る。
「……もし、このまま放置すれば俺たちの正体がバレてしまうかもしれねえな。だが、下手に手を出すとやぶ蛇になる可能性もある……。よし! とりあえず、放置しろ!」
「へ、ヘイッ!」
幹部の男の判断は概ね正解だ。
タカシは、ネスターやシェリーの被害事実に気づいていない。
下手に刺激しなければ、気づかないままでいてくれるだろう。
「それでだ。もう1つってのは何だ?」
「そっちは、さらにヤバい情報です。黒狼団や白狼団の殲滅に成功した王家は、さらに手を広げるべく他の盗賊集団や犯罪組織にも目を付け始めています」
「なにっ!? ま、まさか俺たち『闇蛇団』もターゲットになっているのか?」
「おそらく……」
闇蛇団は隠れて活動することで生き延びてきた組織だ。
騎士団と正面から戦闘にでもなれば、まず勝利することはできない。
「……ちぃ! 厄介なことになりやがったな。それで、動くのはどこの大隊だ? イリーナの隊か? ゴウセルの隊か? さすがに、魔導師団のコンラードは出て来ないと思うが……」
「それがですね。どうやら、ハイブリッジ男爵が動くらしく……」
「なっ!? まさかあいつが!? くそっ! さっさと自分の領地に帰りやがれ!! なんで王都に居座るんだよ!」
「わ、分かりません。ただ、奴本人の戦闘能力はもとより、妻や配下もとんでもない実力者揃いという話ですが……」
「そんなことは知ってるよ! ……俺はこのことをボスに報告してくる。お前は、下っ端連中にこのことを周知してろ!」
「へい!」
幹部と下っ端の男はそれぞれ、慌てて駆け出したのだった。
*****
王都、一般街。
先ほどとはまた別の酒場。
表向きは真っ当な酒場だが、その地下では違法なギャンブルが行われている。
そこに幹部の男が駆け込んできた。
「ボス! 早急に報告したいことが!」
「何だ? 騒々しい。客もいるんだぞ」
賭博場を取り仕切っている男がそう言いながら顔を上げる。
「それどころじゃありやせん! ”紅剣”が動き出しました!」
「ふん……。そんなことか」
「そんなことって……」
組織の危機だと思って報告に来たというのに、ボスは落ち着いている。
それは頼もしくもあったが、同時に不気味でもあった。
「奴らがどう動いてくるか、お前には分かるか?」
「いえ……」
「俺たちの不法行為を見つけて、そこから芋づる式に摘発するつもりなのだろう。だが、そんなことはさせない。逆に、先手を打ってやる」
「先手を? どうやってですか? 俺らにできることなんて……」
「あるさ。一時的に活動を縮小すればいい。奴は領地持ちの貴族だ。いつまでも王都にいるわけじゃない。奴がいなくなった後で活動を再開するのだ。そうすりゃ何の問題もない」
実際には、タカシが闇蛇団の摘発に失敗すれば、次は誓約の五騎士あたりに引き継がれるだろう。
だが、彼らは彼らで別の仕事もあり忙しい。
苛烈な取り締まりも、そこまで長続きはしないはずだ。
「そ、そりゃあ、理屈ではそうだと思いますが……」
「それにだ。奴らは勘違いしているが、そもそも俺たちは悪事を働いてはいない。正当な権利に基づいて商売をしているだけだ。それを邪魔しようとする奴らこそが悪なのだ」
「……」
闇蛇団の表向きの活動スタンスはその通りである。
組織として生き抜くために、グレーゾーンの行為ばかりを行っている。
ネスターやシェリーの件は明確に違法だが、あれはボスの指示ではなく、一幹部とその部下たちの小遣い稼ぎのための暴走に過ぎない。
それに、バレないための配慮と工作も行き届いている。
「なあに、お前たちの小遣い稼ぎを咎めるつもりはねえよ。だが、それを一時的に抑えろと言っているんだ。ハイブリッジに嗅ぎつけられる前にな」
「……ヘイ。しかし、こちらの賭博場は開いたままなのですか?」
「おうとも。さすがに全てを閉鎖したら、干上がっちまうからな」
「もしハイブリッジが乗り込んできたら……」
幹部の男が懸念の声を上げる。
「ギャンブル自体は違法でも何でもないんだ。歓迎してやるさ。この俺、ギャンブル王ロッシュ様がな。ヒャハハッ!!」
ボスの男はそう不敵に笑ったのだった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
20
-
-
32
-
-
239
-
-
59
-
-
353
-
-
149
-
-
23252
-
-
107
-
-
111
コメント