【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

723話 謎の襲撃者

「じゃあ、元気でな。ベアトリクス、シュタイン」

 俺は、ルクアージュ行きの馬車に乗る2人に向かって手を振っていた。
 彼女たちに同行するのは、五十名ぐらいの部下や世話役だ。
 多いような少ないような、微妙なラインの人数である。

 『普段から交流のある陸続きの隣国への使節団』であれば、もう一回り少ない人数でもいいだろう。
 魔物や盗賊が出たとしても、ベアトリクスやシュタインがいれば軽く撃破できるからな。
 逆に『普段交流はないが、鎖国はされていない未知の島国への探検隊』であれば、ありったけの人員を連れて行くのも悪くない。
 海上の移動中や到着後に何があるかわからないからだ。
 『戦争状態にある敵国への侵攻部隊』であれば、万単位の兵を差し向けるのもなくはない。

 しかし、今回は『普段交流のない鎖国状態の島国への使節団』だ。
 あまり少ないとトラブルに対処できないし、多すぎると門前払いされるリスクが高まる。

「ああ。ハイブリッジも元気でな。あまり女遊びをしすぎぬように!」

「また会おう、我が盟友よ。先日の店は素晴らしかったな」

 2人も笑顔で答えてくれる。
 ちなみに、見送りには俺やコンラード第二王子など、限られた面々しか来ていない。
 俺が率いる隠密隊ほどではないが、ベアトリクスが率いる使節団も広く公言はしていないからだ。
 最後の挨拶を済ませ、ベアトリクスやシュタインたちは旅立っていった。


「……さて。一般街に潜む賊を捕らえるための作戦を練るか。場所は千に教えてもらったし……」

 俺はその場を離れ、歩きながら考え込む。

「ああ、いや。その前に当たっておきたい情報源が1つあったな。誓約の五騎士のイリーナに……」

「アタシを呼んだ?」

 突然声をかけられ、驚いて振り返る。
 すると、そこには見知った顔があった。

「よっす! 大活躍だったみたいね、タカシちゃん」

「……なんだ。イリーナか」

 そこにいたのは、誓約の五騎士の1人。
 少女騎士のイリーナだった。

「なんだって失礼ねー。せっかくいい話を持ってきたっていうのに!」

「いい話?」

「そそ。タカシちゃんは、ネルエラ陛下から新しい指示を受けたんだよね? その作戦遂行の人員についてなんだけど……」

「人員……? まさか、イリーナが手伝ってくれるのか? それならば百人力だ」

 誓約の五騎士は、サザリアナ王国における最高クラスの戦力だと聞いている。
 現時点の俺と同じか、もしかすると上かもしれない。
 俺はチートによって幅広い能力を伸ばしているので、総合的な能力としては負けるつもりはない。
 だが、戦闘においては、能力だけでなく経験や精神力の面も大きい。
 1対1なら、俺が負けてしまう相手もまだまだいるだろう。

「残念だけど、違うんだなぁ。アタシは別の仕事があるから。でも、安心して。タカシちゃんにとって嬉しい娘だと思うよ」

「嬉しい娘? どういうことだ?」

「それは、アタシと一緒に来てからのお楽しみ!」

 そう言うと、彼女は俺の手を取って走り出した。
 柔らかくも力強さを感じる彼女の手の感触が伝わってくる。

「お、おい。どこに行くんだよ!」

「いいからいいから。ついてきなって!」

 俺は彼女に引っ張られるようにして走った。
 そして彼女はとある場所で立ち止まった。

「ここが目的地だよ!」

「目的地って……。ここは……」

 そこは、騎士団の訓練場であった。
 訓練場の隅では、木剣を持った20人ほどの騎士たちが打ち合いをしている。
 全員がなかなかの腕前だ。
 豪槍くんや豪剣くんの姿もある。

「レティシアちゃん! 連れて来たよ~」

「お疲れ様です! イリーナ大隊長!!」

 イリーナに声をかけられた女性。
 彼女がレティシア中隊長だ。
 俺が王都に来てすぐの頃に、軽く稽古をつけてやったことがある。
 まだ20代の女性だが、実力はかなりのものだ。

「ふむ。手伝ってくれる者とはレティシアのことだったか」

 イリーナほどではないが、彼女も十分に強い。
 加護(小)を付与する前のキリヤよりも上だろう。
 王都の地理にも詳しいだろうし、彼女が手伝ってくれるのなら心強い。

「残念だけど、それも違うんだなぁ」

「え?」

 俺が疑問の声を漏らした瞬間であった。
 ヒュオッ!!
 風切り音とともに、俺の頭部に向けて木刀が振り下ろされた。

「なっ!?」

 俺は反射的に腰の木刀を抜き放ち、それを受け止めた。

「…………」

 襲撃者は覆面をかぶっており、表情は見えない。
 ただ、凄まじい戦意を持っていることだけはわかった。

(この気配は……! 間違いない! こいつは……!)

「へぇ! 今のを防ぐなんてやるじゃない!」

 イリーナの嬉しそうな声を聞きながら、俺は襲撃者と対峙する。
 カッ!
 カカカッ!!
 俺たちは激しくぶつかり合った。

「くっ!」

 相手の攻撃は鋭い。
 そして速い。
 一撃ごとに必殺の意思が込められている。
 だが、それでも俺の方が優勢だ。
 技量でいえば、俺が遥かに上だな。

「そこ!」

「ぐぅ!」

 俺の放った突きが、敵の腹に命中する。

「……ここまでだな」

 俺の言葉に、襲撃者が動きを止める。
 彼……いや彼女は肩で息をしている。
 そして、覆面を外し、素顔を晒す。

「はあ、はあ……。さすがですね。ハイブリッジ様」

 そこにいたのは、先日俺が指導をしてあげた騎士の1人。
 ナオミだった。

「どうしてこんなことを……。俺が嫌いだったのか?」

「いえ! そういうわけではありません! むしろ逆といいますか……」

「逆?」

「は、はい。アタシは、あなたのことが……」

「タカシちゃーん! ちょっといいかなー!」

 ナオミの告白を遮るように、イリーナが声をかけてきた。

「なんだ?」

「ナオミちゃんは、ここ最近でメキメキと腕を上げてねー。今じゃ、騎士見習いの中では上位の実力者に成長しているんだ。だから、タカシちゃんにお願いしたいのは、実戦訓練に付き合ってあげてほしいんだよね」

「実戦訓練?」

「うん。ほら、例の作戦があるでしょ? タカシちゃんは強いけど、王都の地理や事情にはまだ詳しくない。ナオミちゃんが案内役を務めることで、よりスムーズな任務遂行が可能になると思うんだよねぇ」

 確かに、彼女の申し出は非常にありがたい。
 向こうとしても実戦経験を積めるし、一石二鳥といったところか。

「……わかった。協力してもらおう」

「ありがとうございます! よろしくお願いします! ハイブリッジ様!」

 こうして俺は、騎士見習いの少女ナオミと行動をともにすることになった。
 今回の作戦は一般街に潜んでいる賊のあぶり出しと捕縛なので、あまり大人数で行動するのは得策ではない。
 俺とナオミ、そしてあと3人ぐらいが妥当かな。

 あとは、黒狼団への尋問もしておきたい。
 もちろん騎士団の面々によってあらかたの情報は引き出されているはずだが、生の情報を聞いておいて損はない。
 俺の場合は加護付与スキルの副次的な恩恵により、相手から自分への忠義度を確認できる。
 俺でこそ引き出せる情報というのもあるだろう。

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