【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

718話 リジェネレーション

「…………」

 アックスの謎の攻撃により深手を負った俺は、その場に倒れ伏してしまった。

「ヒャハハァッ! やったぜ! ざまあみやがれ!!」

「すげえ! ”紅剣”を討った!」

「さすがアックスの兄貴!!」

 取り巻き連中が、歓声を上げている。

「騒ぐな子分共! こんなもんでやれてりゃ、平民から男爵なんて成り上がってねえ」

「……」

 俺は地面に倒れこんだまま、思考を整理する。
 少し油断したな……。
 今の攻撃はなんだ?
 音楽の演奏とともに攻撃を受けた。
 音魔法の一種か何かだろうか?

「ヒャハハッ! それじゃ、オレはこの辺で退散させてもらうぜ。おめーら、逃げるぞ!」

「「へいっ!」」

 アックスが取り巻きを連れて逃げ出す。
 引き際をわきまえているあたり、なかなかに有能そうだ。
 まあ、逃しはしないけどな。

 俺が受けた傷は、既に塞がりかけている。
 常時展開している上級治療魔法【リジェネレーション】により、一定時間ごとにHPが回復していくからだ。
 万が一戦闘不能レベルのダメージを受けても、相手の追撃が甘ければこれで復活できる。
 今回ぐらいの軽傷なら、【リジェネレーション】がなかったとしても問題なかったが。

「【ヒール】」

 俺は初級の治療魔法を発動する。
 能動的に発動し効力や治療部位を調整できる分、上級のリジェネレーションよりも初級のヒールの方が局所的な回復効率はいい。
 俺の腹部に光が溢れ、みるみるうちに怪我が癒えていく。
 よし、完治した。

「ふうっ……。少し驚かされたなぁ……」

 俺は立ち上がり、大きく伸びをする。
 世界は広い。
 油断大敵だということを改めて感じた。
 俺1人で乗り込むのは避けた方がよかったか。

 今回の作戦には、ミリオンズの他、ネスターやシェリーも参加している。
 みんなの力もちゃんと借りることにしよう。

 ま、それはそれとして、この場にいる奴らぐらいは掃討しておくか。
 やられたまま黙っていては、俺に男爵位を授けてくれたネルエラ陛下のメンツに関わる。

「…………」

 俺は逃げるアックスを見据える。
 既にここから20メートル以上離れた場所まで逃げているが、俺からは逃れられない。

「燃え爆ぜろ。フレア……」

 俺は魔力と闘気を高めていく。

「んん? 何かする気か? だが、ここまで逃げればそうそう手は出せねえだろ……」

 アックスがこちらの様子に気づいたようだ。
 逃げつつも、俺の動向から目を離さない。
 ますます、賊にしておくのはもったいない人材だ。
 しかしまあ、この程度の距離で少し油断しているのは減点だな。

「ドライブ!!!」

 俺は爆速で移動する。
 あっという間にアックスに追いつく。
 たかが20メートルや30メートル程度、俺にとっては大した距離ではない。

「は!?」

 アックスが驚いている。
 その無防備な背中に、俺は回し蹴りを放つ。

「がはっ!!」

 強烈な一撃を受けたアックスは吹っ飛び、建物の壁に叩きつけられた。

「よし、次だ」

 俺は再びフレアドライブを発動し、今度はホプテンスに向かって突撃する。

「…………!!」

 ホプテンスは、突然現れた俺に面食らっているようだ。
 一瞬反応が遅れた彼の腹に拳を叩きこむ。

「ぐほっ!!」

 ホプテンスが悶絶して膝をつく。

「ふむ……。これ以上ダメージは無効化できないようだな」

 俺は冷静に分析する。
 最初は、攻撃されてもノーダメだったのだが……。
 どうも、あの謎の技は何らかの制限があるらしい。

「くっ! うおおおっ!!」

 ホプテンスは、必死の形相で斬りかかってくる。
 その剣筋は、なかなかに洗練されているように感じる。

「ふんぬぅ!」

 俺は剣を素手で受け止め、そのまま握りつぶした。
 バキィッ!

「なにっ!!?」

 剣を失ったことで、ホプテンスは呆然と立ち尽くす。

「これで終わりだっ!!」

 俺はトドメの回し蹴りを繰り出した。

「ぐああぁぁぁぁ!!」

 俺の右足は見事に命中。
 ホプテンスは吹っ飛んでいき、地面に転がった。

「ふう。この場にいる主だった奴らはこれで撃破したか」

「さすがだな。我が盟友よ。また実力を上げている」

 いつの間にか、俺の背後にはシュタインがいた。
 涼しい顔をしているが、これでも賊を10人以上撃破している。
 その中には、何とか団の頭領である大男も含まれており、騎士団員が捕縛していた。
 なかなかの手際である。

「おう、シュタインこそお疲れさん」

「なんのこれしき。私にかかれば造作もないことだ」

 実際のところ、彼の実力は相当に高い。
 俺と出会う前の時点で、武功を評価されて騎士爵を授かっていた。
 当時の冒険者としてのギルド貢献値は、1億6000万ガル。
 その実力を活かして、アヴァロン迷宮の攻略にも貢献した。

 さらに、俺がラーグの街で合同結婚式を開いた頃には加護(微)の対象者となっていた。
 加護(微)の恩恵は、全ステータスの1割上昇と、所持スキルの成長促進(微)だ。
 そこらの領民に対して発動してもイマイチ実感できない程度の強化量ではあるのだが、元々が優秀なシュタインであればその強化量も大きい。

「ふふふ。これが終わったら、また飲みに行くか?」

「名案だな。つい先日、この王都にいい店を見つけたんだ。美人が多いと評判でね」

「ほほう……。それは楽しみだな」

 俺とシュタインは、顔を見合わせて笑みを浮かべる。
 彼とは実力や爵位が近くて仲がいい。
 そしてそれ以上に、女好きという点で意気投合している。

 初対面で彼の領都リバーサイドに滞在していた間、アヴァロン迷宮の件でルクアージュに滞在していた間、合同結婚式でラーグの街に滞在してもらっていた間、そして今回俺の叙爵式で王都に滞在している間。
 それぞれ、時間を見つけて交友を深めている。
 帰り道にミティやミサに見つかって怒られるまでが様式美だ。

「とりあえず、賊どもを捕縛しておこう」

 次の場所に赴いてもいいのだが、あまり出しゃばりすぎるのもな。
 それに、ミティやアイリスたちがこちらに向かってきている気配を感じる。
 下手に動かない方がいいだろう。

(……おっ? おお! これは……)

 思わぬ朗報を見つけた。
 ミティたちが到着するまで、この情報を整理しておくことにしよう。

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