【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

708話 警戒に値するぜ

 俺たちミリオンズは”黒狼団”の馬車に追いついた。
 まずは俺が1人で馬車の前に立ちはだかる。

「よう。俺たちから逃げられるとでも思ったか?」

 迫りくる馬車を前に悠々と構えつつ、俺はそう言い放った。

「なっ! もう追手が……」

「もう終わりだぁ……」

「落ち着け! たった1人だろうが! 構わず進めぇ!!」

 賊たちは焦った顔をするが、リーダーの男だけは冷静だった。
 すぐさま指示を出し、馬たちに鞭を打つ。
 だが……。

「”でかくてビッグな大風呂敷”! -ジャンボジャンボクロス-」

 俺は魔道具を発動した。
 俺の前に現れた巨大な風呂敷が、賊の馬車を包み込む。
 この風呂敷は、折りたたむと手のひらサイズになるが、魔力を込めて開くと数メートルを超えるサイズになるのだ。

 バランスを崩した馬車は、そのまま失速する。
 そして、この魔道具の効力は、ただ大きくなるだけではない。

 ギャギャギャビギャーン!
 風呂敷がどんどん縮んでいく。
 馬車、それを引いていた馬、そして賊の内の1人を包み込み、拘束した。

「なんだこりゃ! 出せやコラ!」

 風呂敷の中から、そんな声が聞こえてくる。
 単純に、大きな風呂敷に包まれるというだけでもそれなりの物理的な拘束力がある。
 掛け布団を数枚自分の上に置かれてしまったような状況を想像してもらえれば、わかりやすいだろう。

 その上、ジェイネフェリアによって改良されたこの魔道具には、魔力や闘気を減衰させる効果もある。
 完璧な拘束にはほど遠いものの、戦闘時の妨害としては十分な効力だ。

「やっぱタダモノじゃねーな、お前ら。あの一瞬で馬車から脱出する反応の早さはよ。警戒に値するぜ」

 俺はそう言う。
 不意打ちで拘束できたのは、5人以上いる賊たちの中で1人だけだ。
 この賊たちは、ネルエラ陛下や誓約の五騎士にも認知されている大型の盗賊団だ。
 簡単にはいかないとは思っていたが、これほどとはな。

「あいつは位置が悪かったな……」

「それにしても、変な風呂敷だな……。魔道具の一種か?」

 風呂敷を躱した賊たちがそう言う。
 余裕を持って戦況を掴もうとしている。
 やはりさすがだ。
 多対1では、俺でも厳しいかもしれない。
 だが、もちろんそんな縛りプレイをする気はない。

「「!」」

 賊たちが俺の横に視線を向ける。
 みんなが追いついてきたようだ。
 街道沿いにある岩山に、ミリオンズの面々が立っている。

 ニムは、一番低いところでロックアーマーを発動させている。
 既に臨戦態勢だ。

 ミティはその少し上で賊たちを睨んでいる。
 戦闘意欲は十分。
 普段の彼女は可愛いが、戦意をむき出しにした彼女は迫力満点だ。

 アイリスは、中ほどで悠然と構え、戦闘に備えている。
 近接戦闘においてミリオンズ内でも最強クラスの彼女だが、その速度があれば中衛からでも自在に戦局に対応できる。
 頼りになる存在だ。

 ユナは後方で弓と火魔法の攻撃準備を行っている。
 ミリオンズ内において、遠距離攻撃のエキスパートは彼女だな。

 そしてマリアは、空を飛んで戦局を伺っている。
 ミリオンズで自在に空を飛べるのは、マリアだけだ。
 俺も重力魔法である程度は滞空できるし、モニカも脚力を活かした二段ジャンプができる。
 だが、さすがにハーピィのマリアほどの自由度はない。
 彼女なら、戦局が複雑に絡み合っても、自在に対応してくれるだろう。
 格闘術による近接戦闘と火魔法による遠距離攻撃に加え、治療魔法も使える彼女の存在は大きい。

 そして、モニカ、サリエ、リーゼロッテ、蓮華、ティーナ、ドラちゃん、キリヤ、レインもそれぞれ戦闘準備を整えている。
 これだけの戦力があれば、賊などは一網打尽にできるだろう。
 ミティが口を開く。

「なんですコイツら? 本当にこれがあの”黒狼団”ですか。もろそうです!」

 確かに、陛下たちが警戒するほどの強さは感じないな。
 だが、金貨10000枚を王宮から盗み出したのは事実なのだ。
 気は抜けない。

「1、2、3……。全部で13人と1匹? これって、もしかして……」

「噂のミリオンズって奴らか? 正メンバーは10人と聞いているが……。騎士爵としての配下の奴らも連れてきやがったか」

 詳しいな。
 ミリオンズの構成員は、賊の言う通り10人だ。
 俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム。
 ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテ、蓮華である。

 さらに、ティーナとドラちゃんも人外構成員として連れ回すことがある。
 キリヤはミリオンズではないが、ハイブリッジ騎士爵家の配下としてはトップの実力を持つ。

 レインはミリオンズでもないし、配下の中でも戦闘能力がトップクラスというほどではなかった。
 だが、先日通常の加護を付与されたことで、彼女の能力は飛躍的に向上した。
 ミリオンズへの正式登録も考えている。

「俺たちのことを知っているか。だが、1つだけ間違いがあるぞ」

「あぁん!?」

「俺は騎士爵ではなく、男爵だ。さっき陛下から授かったばかりだけどな」

「なっ! 男爵だと……!? 平民から成り上がったばかりの新貴族が、このわずかな期間で男爵位にまで……?」

 リーダー格の男が驚愕の表情を浮かべる。
 本当に詳しいな。
 さては、俺のファンだな?
 ……ま、冗談はさておき。

「お前らは運が悪い。今日ここで、お前たちは捕らえられる。そして、俺たちは王都へ凱旋する! お前たちの悪行もここまでだ!!」

「なっ! てめぇふざけたことを!! ぶっ殺す!!!」

 リーダー格の男が激高し、剣を抜き放つ。
 他の賊たちも武器を構えた。
 さあ、戦闘の時間だ。

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