【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

707話 黒狼団

 タカシたちが追跡している”黒狼団”の面々は、街道を馬車で走っていた。

「ひゃはは! チョロい仕事でよかったぜ! こんな大金が手に入るなんてよ!」

「ホントだよな! これでしばらくは遊んで暮らせるぜ!」

「王宮の警備も、大したことはなかったな!」

 男たちは、上機嫌でそう言い合う。
 彼らの目的は、王宮から盗み出した金貨10000枚で遊ぶことであった。

「これだけの金貨があれば、女を買い漁り放題だろ? 今から楽しみでしょうがねえな」

「そうだな! 数日もあれば、国を出られる。そうしたら、早速奴隷商に行くか!」

「ああ! そうしよそうしよ!」

 彼らはそう言って笑い合う。

「女と言えば、攫ってきたコイツはどうする?」

「ああ、人質になるかもしれないと連れてきたコイツか……」

「んーっ! んんーっ!!」

 賊に捕まった少女が、必死に叫ぶ。
 叙爵式に伴って金庫周りの警備が薄まる中、臨時で配置されていた騎士見習い。
 ナオミが賊に捕まってしまっていたのだ。

「うるせえな……。まあ、適当に売り払えばいいんじゃね?」

「いやいや、コイツはこれでも騎士の見習いか何かだろ? 足がつくじゃねえか」

「それは確かに」

「でもよう……。こいつ結構可愛い顔立ちをしているからな……。俺たちで楽しんでもいいんじゃね?」

「うむ……」

「ゲヘへへへ」

 男たちが下卑た視線をナオミに向ける。
 哀れな少女の運命はここに決まってしまった。
 不法者集団の慰み者になる運命だ。
 ……と思われたのだが……。

「バカ野郎! いつも言っていることを忘れたか!!」

 リーダーの男が一喝する。

「俺たち黒狼団は、”殺し”と”犯し”はしねぇ。それはこの世界で生きていくための掟だ。それを破れば、俺たちは破滅する」

「お、おう……」

「わ、わかったよ……」

 男たちが気圧されたように言う。

「そう気落ちするなよ。なあに、金ならたんまりあるんだ。今回のは大きな仕事だったからな。これを機に足を洗ってもいいんだぜ? 商売女は買い放題だし、奴隷を買うのもいい。故郷に想い人でもいるんなら、追手をまいたところで帰郷すればいい」

 リーダーが諭すように言った。

「そうだよな! 俺たちの未来は明るいぜ!」

「俺、無事に逃げ切れたら盗賊から足を洗うんだ……」

「俺はまだまだ続けるぜ! 金はいくらあっても困らねえからな!」

「ギャハハハハ!!」

 男たちはそう言って、笑い合っていたのだが……。
 その内の1人の顔色が、急速に青ざめ始めた。

「おい、どうしたんだよ?」

「……なんか変だ。嫌な予感がする……」

「はぁ!? 何を言ってるんだお前?」

「……俺には分かる。何かが来る……」

「だから、何が来ているっていうんだ?」

 仲間が怪しげなことを言い出したため、リーダーの男が苛立ったように問う。
 すると、彼はこう答える。

「……死神だ……」

「はぁ? お前は何を言っている?」

「……もうすぐ来る……逃げないと……」

 男はガタガタ震えながら、仲間たちにそう警告を発した。
 しかし、彼がそう言った直後。
 馬車の行く手を阻むように、1人の男が姿を現したのだった。


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 賊の捕縛に向けて、俺たちミリオンズで先行している。
 俺とマリアの重力魔法、ジェイネフェリアが作製した魔法の絨毯、そしてミティや蓮華の風魔法のおかげで、俺たちの移動速度は速い。
 そこらの馬車などとは比べ物にならない速度が出る。

 こうなると、万が一の事故が怖いようにも思える。
 日本の乗用車などとは違い、エアバックは付いていないからな。

 だが、過剰に心配する必要はないだろう。
 ミリオンズは身体能力や魔力に秀でた者ばかりだ。
 その頑丈さは折り紙付き。
 さらに、サリエ、俺、アイリス、マリア、リーゼロッテという治療魔法使いもいるし、ミティやティーナには回復ポーションも持たせている。
 凄まじい大事故が起きない限りは大丈夫だ。

「おっ! 馬車が見えてきたぞ。あれが目的の”黒狼団”の馬車かな?」

「そのみたいだね。もうそろそろ追いつくよ」

「追いついたら、まずどうするの? 私の雷魔法で先制攻撃しとく?」

 俺の言葉を受けて、アイリスとモニカがそう答える。

「いや、俺が行こう。雷魔法の影響で金貨が溶けたりしたら一大事だからな。他の魔法も同じだ。破損が怖い」

 雷魔法の電流や、火魔法の熱で溶けるリスクがある。
 土魔法や水魔法あたりでも、物理的な衝撃で破損するリスクは高い。
 俺たちミリオンズは一流の魔法使いが揃っているが、だからこそその威力には注意を払うべきだ。

「ふふん。それは確かにね」

「で、ではどうするのでしょうか?」

 ニムがそう問う。

「”これ”を使うのさ」

「あら? それは、わたくしの領地のアヴァロン迷宮で拾われた……」

「ああ。あの時点では使い道が思い浮かばなかったんだが、魔導技師のジェイネフェリアに見てもらってな。改造してもらったんだ」

 俺はそう言って、賊への先制攻撃の準備を進めていく。
 さあ、俺たちミリオンズの力を存分に味わうがいい。

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