【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

690話 タカシvsベアトリクス

 ベアトリクスとの決闘が始まろうとしている。
 俺と彼女は、向かい合い剣を構えて対峙していた。
 俺は大剣、彼女は双剣だ。

「それではこれより、ベアトリクス=サザリアナ=ルムガンドと、タカシ=ハイブリッジの模擬試合を開始するよ。使用武器は訓練用の木刀、魔法は殺傷能力の高いものは禁止とする。双方、それでいいかな?」

「はい」

「問題ない」

「よし! 始め!!」

「うおおぉぉぉ!! 覚悟しろ! 悪党がぁ!」

 イリーナの開始の合図と同時に、ベアトリクスが俺に向かって突っ込んできた。
 模擬試合とはいえ、開始早々いきなり斬りかかってくるとは予想外だったが、まあいいだろう。
 彼女の動きは悪くない。
 だが、そのスピードはまだまだ遅いな。

「ぬ!?」

 俺は木刀を構え、振り下ろされた彼女の木刀を受け止める。
 そしてそのまま押し返し、バランスを崩した彼女に足払いをかけた。

「ぐあっ!」

「まだだ」

 転倒した彼女に対し、容赦なく腹に蹴りを入れる。

「がはっ!」

 彼女は俺の蹴りを喰らい吹っ飛び、地面を転がる。
 だが、すぐに立ち上がった。
 そしてまた俺に襲い掛かってくる。
 さっきよりも明らかに速度が上がっていた。
 俺は難なくそれを受け止める。

「くぅ! はああああ!!!」

 今度は突きを繰り出してきた。
 中々良い攻撃だ。
 だが、やはりまだ甘いな。
 俺は彼女が突き出してきた木刀を弾き飛ばし、返す刃で胴を打った。

「ぐはっ!」

「終わりか?」

「ば、馬鹿にするな! これからだ!」

 彼女はそう言うと、またもや果敢に攻めてくる。

「せい!」

「ふん!」

「そこだ!」

「ほいっと」

 俺はベアトリクスの攻撃を軽くかわす。

「なにぃ!?」

「隙だらけだぞ」

「ごふぅ……」

「これで終わりか?」

「くっ……おのれぇ~!」

 その後も、何合か打ち合う。
 俺は彼女の攻撃を何度か受けていた。
 だが、それ以上に彼女のダメージの方が大きいだろう。
 このまま終わってくれればいいのだが……。

「我がこの程度で負けるか! ぬおおおおぉっ!!」

 ベアトリクスの闘気量が上がった。
 しまった。
 彼女の闘気は感情に左右されるのだったか。
 試合の中で感情が高ぶれば、それがそのまま戦闘能力の強化に繋がる。
 尻上がりタイプだな。
 序盤で優勢に試合を運んでいても、中盤以降にひっくり返される可能性がある。
 なかなか厄介な相手だ。

「くらえ! 【天剣絶刀】!!」

 ベアトリクスの木刀に光り輝くオーラが纏わりつく。
 ブーケトスの際にも見せていた、彼女の奥義の1つか。
 あの時は、威力を加減していた様子だったが、今は手加減なしのようだ。
 上段から繰り出された強烈な一撃が、俺を襲う。

「ぐっ! なかなかやるじゃないか」

「ははははははは! どうだ悪党め!」

 ベアトリクスの攻撃は激しさを増すばかりだ。
 このままではマズイかもしれない。
 現時点では俺が優勢だが、下手に彼女の感情を刺激すればさらに強くなってしまう。

「ちっ!」

 俺は一度、距離を取る。
 すると、ベアトリクスがニヤリと笑った。

「馬鹿め。この我を相手にその距離は悪手よ」

「……」

「奥義! 【サザンクロス】!!!」

 ベアトリクスは、両手に持った双剣を十字に交差させる。
 2本の木刀から放たれる光の奔流が俺を飲み込んだ。

「はははは! これで終わったな! エロ男め!」

 ベアトリクスの勝ち誇った声が響く。

「おいおい。勝ったと思うのはまだ早いんじゃないか?」

 俺はかろうじて立ちながら、そう言った。

「な、なんだと!? なぜ立ち上がれる? 確かに直撃させたはず……」

「ああ。ダメージは大きかったぞ」

 チートの恩恵を多大に受けている俺は、攻撃力だけではなく防御力も抜群だ。
 闘気や魔力で身体を強化しているからな。
 だから、ベアトリクスの奥義である『サザンクロス』を食らっても、致命傷を負うことはないのだ。

「ははっ! ベアトリクス、大技を使って疲れたんじゃないのか?」

 感情によって増幅する彼女の闘気量だが、今は少し落ち着いている。
 大技を使って消耗したのもあるだろうし、俺にダメージを与えてスッキリしたのもあるだろう。

「ぐぬっ! だが、消耗しているのは貴様も同じだろうが!!」

「そうだな。しかし、お前と違って俺はまだまだ余裕がある」

「なにぃ!?」

「こういうことさ。……【ヒール】」

 俺の身体全体が淡い緑色の光に包まれる。
 同時に受けたダメージが回復していく。

「そ、それは! 治療魔法か!」

「ああ。そうだ」

「おのれ! 卑怯だぞ! 正々堂々と戦わんか!」

「いやいや、模擬試合とはいえ実戦を想定しての決闘だろ? 殺傷能力の高い攻撃魔法以外は、使用が許可されている。なら、使えるものは何でも使わないとな」

「ぐっ! ……この悪党めぇ!!」

 ベアトリクスが悔しげな目で俺を睨む。
 あまり挑発しすぎると、また彼女の闘気が増してしまう。
 適当に褒めておくか。

「それにしても驚いたぜ。まさか、これほどの強さとはな。正直、想像以上だよ」

「ふん。当然だ。我は王族として、強さに拘ってきたのだからな! 物心がついた頃から、一日とて鍛錬を欠かしたことはない!」

「ほう、素晴らしいことだ。しかし、それでもこの俺には届かなかったな。悪いが、俺も負けるわけにはいかないんでね」

「くっ! 調子に乗るなよ! 我にはまだ奥の手がある!!」

 ベアトリクスが叫ぶ。
 まだ、何かあるというのか?
 俺は警戒して身構えた。

「精霊纏装。モデル:サン……」

 バチっ!
 バチバチっ!
 彼女の闘気と魔力が変質していく。
 そのときだった。

「【王の裁き】(キング・ジャッジメント)」

 突然、上空に現れた巨大な雷撃がベアトリクスに降り注いだ。

「ぐああぁっ!!」

 彼女は悲鳴を上げて倒れた。
 そして、そのまま動かなくなる。

「今の雷撃は……」

 俺は魔法の発動者を探る。
 雷魔法と言えばモニカだが、今の攻撃は明らかに彼女のものではない。
 ということは……。

「……ネルエラ陛下。どういうおつもりです?」

 俺は、観客席にいるネルエラ陛下に向けてそう問うたのだった。
 俺とベアトリクスの真剣勝負を邪魔するとは、何を考えているのか。
 いくら陛下でも、その答え次第では……。

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