【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

677話 侮られる女たち 前編

 ミティは工事現場の荷運びの依頼を冒険者ギルドで受注した。
 受付でちょっとした問答はあったものの、ギルドカードを見せた途端にあっさりと受領された。

「さて……。工事現場とやらはここですか。……へえ……結構大きな建物ですね……」

 冒険者ギルドを出て、少し歩いたところにそれはあった。

「こんにちは。お手伝いに来たのですけど……」

「ああ? 何だお前? まだガキじゃねえか」

「お嬢ちゃんみたいな子供が来ちゃダメだよぉ。怪我しちまうぞ?」

 ミティの姿を見て、男二人が絡んでくる。

「私はこう見えても成人しています。それに、これでも一人前の冒険者です。正式に依頼を受注してきていますよ」

「ああん? ふざけんなよ! この仕事は大人の男向けのものだぜ!」

「そうだそうだ! お子様にはまだ早いんだよぉ!」

「そう言われましても……」

 ミティが困った顔をする。
 力が強いことは受注の条件に記載されていたが、年齢や性別は指定されていなかったはずだ。
 力自慢の自分なら、きっと貢献できる。
 そう確信してここに来たのだが。

「悪いことは言わねえ。ガキは帰りな」

「ママのおっぱいでもしゃぶってるんだなぁ!」

 男たちがそう言う。
 ミティはこれでも経産婦だ。
 しかし、そんなことを言っても信じてもらえないだろう。
 ドワーフである彼女の外見年齢は低い。

(タカシ様の名声を高めるために、少しでも依頼をこなしたかったのですが……。なかなか一筋縄ではいかないようですね……)

 彼女はそんなことを思いながら、どう対処すべきか思案していくのだった。




「おーい! たのもー!!!」

 アイリスがそう叫ぶ。
 ここは王都にて有名な道場だ。

「なんだぁ? こんな時期に女が来るとは、珍しいこともあるもんだな」

 中年太りをした男がそう言いつつ出てきた。

「ボクはアイリス。ここの代表と手合わせがしたい」

「代表? ひひ、師範は外出中だぜ」

「なんだ、残念……。腕試しをしたかったのになー」

 アイリスが肩を落とす。
 男はそんな彼女を興味深げに観察する。
 彼は彼女の体を上から下まで舐めるように見ていく。

「お前、強いのか?」

「うん。それなりにね」

「そうか……なら、俺が相手になってやるよ」

 男がニヤリと笑ってそう言う。

「えー……。おじさん、あんまり強そうじゃなさそうだけど、いいの?」

「嬢ちゃんを相手にするぐらいはできるさ。指導をしてあげようねぇ」

 言っていることは、親切な大人のように聞こえる。
 だが、男の目は嗜虐的な光を宿していた。

「じゃあ、お願いしようかなー」

 そんな男の様子を把握しているのかしていないのか、アイリスは気楽な感じでそう答えた。
 男とアイリスは道場内に入り、向き合う。

「お手柔らかにねー」

「おう。だが、なにせ格闘の勝負だからな。試合の最中に体に触れてしまっても、不可抗力だぜ?」

「分かってるってば。それぐらい、気にしないよ」

「ひひ。言質は取ったぜ。楽しませてくれよぉ!!」

 男は下卑た笑みを浮かべると、アイリスに向けて駆け出したのだった。




「さあ、料理コンテストが始まりました! お題は『未知の味』。食材はなんでもあり、制限時間内に斬新な料理を披露できるかがポイントとなります! 実況は私カエデが務めさせていただきます。解説は冒険者ギルド副ギルド長のベネッタさんです」

「よろしく頼む」

「はい。よろしくお願いします。では、まずは予選第の組み合わせを見ていきましょう!」

 カエデとベネッタが会場の一角に視線を移す。

「Aブロックには、あの『まんぷく亭』がいるね。ボフォイの街から遠征か。彼らはどんな料理を作るつもりなのかな」

「おそらく餅料理でしょうが……。果たしてどのような斬新な餅料理が飛び出すでしょうか!?」

 カエデとベネッタが、出場者の紹介を始める。
 審査員席に座るのは、街の有力者の面々だ。

「続いてBブロック! こちらには現在売り出し中の新人料理人、ゼラさんがいますね!」

「期待できそうだ。そして、Cブロックにも有名どころが集まっているようだね」

「はい。美食家冒険者パーティ『トリックルバード』などに期待できそうです。AブロックからCブロックは、いずれも楽しみな選手が揃っていますね!」

 カエデが元気よくそう言う。

「Dブロックは……。失礼ながら、少し見劣りしてしまうか?」

「そうですね。王宮の副料理長が急用で欠席になりましたから。代わりに飛び入り選手は来られましたが、さすがに副料理長と比べるのは酷でしょうし……」

「ああ。まあ、気楽にやってくれればいいさ。これはお祭りみたいなものだからね。……おや、その飛び入り選手だが、どこかで見た顔だな……」

「えっ? そうなんですか?」

「ああ。確か……。いや、うーん……。思い出せない……」

 冒険者ギルドの副ギルド長ベネッタが首を傾げる。
 飛び入り選手は、モニカだ。
 彼女は冒険者として特別表彰を受けているため、顔写真を見たことがあるのだろう。
 だが、一流冒険者としてのモニカと、今ここに料理人として参加しているモニカを結びつけられなかったらしい。

(うーん。斬新な料理かあ……。ここはひとつ、練習していた”あれ”を出してみようかな)

 モニカはそんなことを考えつつ、調理を始めたのだった。

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