【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

645話 蓮華の術式纏装

 合同結婚式が終了し、数日が経過した。
 参加していた王侯貴族たちの多くは、既に帰路についている。
 ラスターレイン伯爵家、ディルム子爵家、ハルク男爵家なども街を出発済みだ。
 彼らには、今後の領地経営に色々と助言をいただいたりした。

 今回のイベントに参加していない貴族の中には、当初俺のことを快く思っていない者もいた。
 俺は加護付与スキルの副次的な恩恵により、そういった各人の心情をある程度把握できる。
 それにより、そういった者たちにも忠義度の値の増減を気にしつつ適切に接することで、心情を改善できた。
 今回の合同結婚式を通して、俺はサザリアナ王国内に確固たるポジションを築いたと言ってもいいだろう。

 後は、近々開かれる王都での叙爵式を無事に済ませられれば完璧だ。
 参加していた貴族やサリエが呟いていた通り、その場で俺が陞爵される可能性すらある。
 期待したい。

 なお、一部の参加者についてはまだラーグの街に滞在している。
 しばらく街を見て回るらしい。
 そして、ベアトリクス第三王女や千についても、まだこの街にいる。
 ベアトリクスの責任の元で千を王都へ連行する予定だったが、ハイブリッジ騎士爵領の想定以上の発展ぶりを見て、詳細な視察が必要と判断したらしい。
 街をあちこち回り、何やらメモを取っている様子だ。

 千の身柄は一時的にハイブリッジ家の預かりとなっている。
 意外にもミリオンズの面々と仲良くしているようだ。
 まあ、ミティたちが懐妊したのは彼女がもたらした秘薬の恩恵もあるだろうしな。

「さて……。出産や叙爵式が控えた今、あまり大きな仕事に取り組む気にはなれないが……」

 執務室で仕事をしていたのだが、区切りの良いところで手を止める。

「ご主人さま、お茶をお持ちしましたぁ」

「ありがとう、リン」

 俺は幼女メイドのリンからお茶を受け取る。
 彼女のメイド姿もずいぶんと板についてきたな。

「はいぃ。それと、蓮華さまがお呼びでございますぅ」

「蓮華が? 分かった」

 俺はお茶を飲み干し、庭に向かう。
 そこでは、剣の素振りで汗を流す蓮華の姿があった。

「お疲れさま」

「たかし殿。仕事中にすまぬでござるな」

 蓮華はミリオンズの構成員である。
 ただし、ラーグの街に滞在している間は、そもそもミリオンズの活動は縮小している。 
 俺は仕事で忙しいし、ミティ、アイリス、モニカは妊娠中だからだ。
 ニム、ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテ、蓮華にはそれぞれが思うように好きな仕事や活動を行ってもらっている。
 自身の活動について自由な選択肢を与えられたときに何をするかで、それぞれの性格が出る。

 最も活動熱心なのはニムで、農業改革の仕事を精力的にこなしてきた。
 ひと段落した今はニルスやハンナに引き継ぎ終えたようだが、その分魔物退治にも精を出している。

 サリエは内政や魔物退治への熱意はそこまででもない。
 しかし、治療回りはきちんと行ってくれている。
 俺が領主の仕事で忙しく、アイリスが妊娠中のため活動を縮小している今、治療回りの核はサリエだ。
 また、貴族間の付き合いというものにも気を使ってくれている。
 成り上がりの新興貴族である俺が他家から過度に疎まれたり敵視されたりしないのは、彼女による根回しのおかげでもある。

 ユナとマリアの活動はそこそこである。
 過度に労働嫌いというわけではないが、ニムほどの向上心やサリエほどの責任感があるわけでもない。
 仕事に対する熱意としては、俺ともっとも近いな。

 俺が当主でなければ、彼女たちぐらいの活動に抑えたいところだったのだが……。
 ハーレムの主として、みんなを養っていけるぐらいには働かないといけない。
 それに、世界滅亡の危機に立ち向かうためにもあまりぐうたらするのもマズい。
 加護を付与するためには、俺に対する忠義度が大切となる。
 加護が付与された俺の妻、パーティメンバー、配下たちがサボるのと、俺自身がサボるのでは意味合いがまったく異なってくるのだ。

 ミリオンズの中でもっともだらけているのはリーゼロッテだが、いざというときにはきちんと動いてくれる。
 十分に許容範囲だろう。
 そして、ミリオンズの中で最も新入りの蓮華は……。

「構わないさ。仕事もひと段落したところだったから。それより、何か用事か?」

「うむ。実はたかし殿にお願いがあってな」

「お願い? なんだ?」

「拙者に纏装術を教えていただきたい。共に鍛錬をしてほしいのでござるよ」

 纏装術。
 術式やその他の力を身に纏い、戦闘能力を一時的に増す技である。

「……俺がか? モニカやユナのほうが適任じゃないか?」

「もちろん、二人からも教わっておる。しかし、あの二人が扱う纏装術は、それぞれ雷と火。拙者が習得したいのは風の纏装術。分野が違うのでござるよ」

 モニカは術式纏装【雷天霹靂】を扱う。
 ユナは術式纏装の亜種である、火竜纏装【豪炎爆華】を扱う。

「まあ、そうだな。しかし、それなら俺も同じだろう? 俺が扱う纏装術も火属性だぞ?」

 ついでに言えば、マリアが使う纏装術も火属性だ。
 術式纏装【不滅之炎】である。

「承知しているでござる。ただ、たかし殿は風魔法も中級まで修めているでござろう? それも、魔力系のすきるも伸ばしているでござる」

 確かに、俺は風魔法の中級レベルまでは使える。
 今現在メインとしているのは火魔法であり、次点で水魔法だ。
 それに加え、風、土、雷、植物、重力など、幅広い魔法を強化して練習中なのだ。

 風魔法であればミティも使えるし、スキルレベルとしては俺よりも彼女の方が高い。
 しかし、彼女はMP強化や魔力強化のスキルを伸ばしていないため、自由自在に魔法を扱えるわけではない。
 その上妊娠中なので、長時間蓮華の鍛錬に付き合うわけにはいかない。

「ふむ……。火魔法の纏装術だけに拘る必要もないか……」

 せっかくいろいろな魔法を取得しているのだから、それを使わない手はない。

「そうでござる。それに、たかし殿は魔法使い系でござるからな。むしろ得意な分野でござろう? 剣を主体に戦う拙者よりも習得が早いやもしれぬ」

「なるほどな。よし! では、早速鍛錬を始めるか! どんな鍛錬をしようか?」

「うむ。実は目星は付けているでござる。一人ではやる勇気がなかったのでござるが、たかし殿といっしょであれば……」

 蓮華はそう言って、着物の帯を緩めた。
 いったい何が始まるんだ……?

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