【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
626話 ベアトリクスと千の来訪
ラスターレイン伯爵家とソーマ騎士爵家がラーグの街にやって来た。
遅れ気味だったことを指摘したところ、シュタインが口籠りつつ後方の馬車を見た。
馬車からは、2人の女性が降りてきている。
「ふん。噂には聞いていたが、大した発展ぶりではないか」
そう言うのは、ベアトリクス第三王女だ。
”剣姫”の二つ名を持つ彼女は、今日も美しい。
腰まで届く金髪を風に揺らし、鋭い瞳で周囲を睨め付けるように見ている。
「うふふ。さすがはタカシさんですわね。それでこそ、わたくしが認めた殿方ですわ」
続いて降りてきた女性が、俺に向かって微笑みかける。
千だ。
相変わらず、どこか艶っぽい笑みを浮かべている。
「ベアトリクスと千か……。予想外の組み合わせだな」
俺は思わずそう呟いた。
ベアトリクスはサザリアナ王国の第三王女だ。
かつてはアヴァロン迷宮の攻略の助力に来るなど、戦闘能力は確かである。
千は蓮華と同じくヤマト連邦の出身者だ。
故郷での権力闘争か何かのために、サザリアナ王国周辺でもいろいろと画策していた。
ハガ王国やディルム子爵領などで好き勝手していた彼女であるが、ラスターレイン伯爵領の一件ではそうはいかなかった。
俺たちミリオンズの活躍により、ついに無力化され捕らえられたのである。
伯爵家の面々に闇魔法を掛けた彼女は、本来であれば何年もの懲役刑を与えられてもおかしくなかった。
しかし、ヤマト連邦の情報や技術をあれこれ提供する代わりに、大幅に罪が減じられた。
確か、数週間ぐらいで釈放されるとか言っていた気もするが……。
記憶があやふやだ。
「千は、まだサザリアナ王国にいたんだな」
「ええ。ラスターレイン伯爵家に陥れられましたの」
千がそう言って、恨みがましい視線をリールバッハたちに向ける。
リールバッハは肩をすくめた。
「陥れたりはしておらぬ。地下牢からは、約束通りに1か月足らずで釈放したではないか」
「それは感謝しておりますけど……。街から出てはいけないなんて、聞いておりませんでした」
「聞かぬのが悪い。釈放は釈放でも、仮釈放なのでな。王国を乱そうとした者を、そうやすやすと放免するはずがなかろう」
なるほど?
リールバッハの言う事には一理なくもない。
半ば騙された千は可哀想だが、そもそもは彼女の悪事が発端だしな。
無闇に拷問されたり、劣悪な環境に押し込められているのならばまだしも、街内に軟禁される程度であれば甘んじて受け入れるべき範囲だろう。
「ふむ。千がまだサザリアナ王国に留まっている事情は分かったが、なぜここに?」
「それはもちろん、わたくしが頼み込んだからですわ」
「頼み込んだ? なぜ?」
「わたくしとタカシさんの仲ではございませんか。結婚の祝辞を述べさせて頂きたいのですわ」
そう言うと、千は俺に近づいてきて俺の手を取った。
「お、おう……。そういえば、ミティに例の薬をくれたお礼を言っていなかったな。おかげさまで、子宝に恵まれた。ありがとう」
「うふふ。とっておきの薬でしたが、お役に立てたようで何よりですわ。それでは、タカシさんの方からわたくしの解放を頼んでくださいませんこと?」
千が妖艶な笑みを浮かべながら、上目遣いに見つめてくる。
この感じ、どこか懐かしい。
いや、千とこんなやり取りをしたことはなかったはずだ。
懐かしいと感じるのはおかしいな。
「……千の解放か。ええと……」
ラスターレイン伯爵領にて罪を犯した千の身柄については、ラスターレイン伯爵家の預かりとなる。
俺がどうこう言うような問題ではない。
だが、俺とラスターレイン伯爵家は懇意の仲だ。
要望を口にすれば一考ぐらいはしてもらえるだろう。
とはいえ、軽率にそんなことを頼むべきか……。
俺はチラリとリールバッハを見る。
彼は小さくため息をついた。
「……うむ。そろそろ解放してやろうかと思っていたのだがな。そこに、王家から連絡が来たのだ。千の身柄を王都に連れてくるようにと」
「それで、我がラスターレイン伯爵領に赴いたのだ。聞けば、ハイブリッジ騎士爵家の合同結婚式に顔を出すという。ものはついでだ。この我も、ハイブリッジ騎士爵領の視察がてらこの街にやって来たというわけだ。光栄に思うがいいぞ!」
ベアトリクスが胸を張ってそう言った。
「何かと思えば、ただの物見遊山か」
「なっ!? 貴様! 誰に向かってその口を聞いている!!」
ベアトリクスが俺の言葉に激高する。
やべ。
また口が滑った。
せっかく来てくれた第三王女に、この口の聞き方はなかったな。
彼女の剣には闘気と魔力が集まり始めている。
それをとりなしたのは、リールバッハだった。
「落ち着き給え。ベアトリクス第三王女殿下よ。冒険者上がりの新貴族の言葉に一々激高していては、王族の器に疑問が呈されるかもしれぬぞ。エルネラ陛下も、そのあたりには寛容な方であろう?」
「ぐ……、しかしだな。リールバッハ殿」
ベアトリクスがそう言う。
王族ではあるが、第三王女に過ぎないベアトリクス。
伯爵家当主であるリールバッハ。
この2人の上下関係は微妙だ。
サリエに教わった上下関係では、第三王女の方が上だった気がする。
とはいえ、ベアトリクスも無闇に身分だけを振りかざすタイプではない。
伯爵家当主として魔法や統治能力に長けているリールバッハのことは一目置いており、その意見を無下にすることはできないようだ。
「まあ、良いではないか。この街の発展具合を見給え。ハイブリッジ騎士爵は、戦闘能力だけでなく内政の才能もあるらしい。サザリアナ王国のさらなる発展のために、欠かせない存在だ」
リールバッハがそう言うと、ベアトリクスは渋々とした様子で闘気と魔力を収めた。
「ふん……。確かに、その通りであるな。ここは素直に褒めておこう。よくやっているようだな、ハイブリッジ騎士爵よ」
ベアトリクスがそう言う。
彼女から初めて褒め言葉をもらった気がする。
関係を改善するために、ここは素直に受け取っておこう。
「ははっ! お褒めいただき、ありがたき幸せにございます!!」
俺は恭しく頭を下げた。
「…………貴様が丁寧に礼を言うと、逆にバカにされている気がしてくるな……」
ベアトリクスは微妙な声色でそう言ったのだった。
遅れ気味だったことを指摘したところ、シュタインが口籠りつつ後方の馬車を見た。
馬車からは、2人の女性が降りてきている。
「ふん。噂には聞いていたが、大した発展ぶりではないか」
そう言うのは、ベアトリクス第三王女だ。
”剣姫”の二つ名を持つ彼女は、今日も美しい。
腰まで届く金髪を風に揺らし、鋭い瞳で周囲を睨め付けるように見ている。
「うふふ。さすがはタカシさんですわね。それでこそ、わたくしが認めた殿方ですわ」
続いて降りてきた女性が、俺に向かって微笑みかける。
千だ。
相変わらず、どこか艶っぽい笑みを浮かべている。
「ベアトリクスと千か……。予想外の組み合わせだな」
俺は思わずそう呟いた。
ベアトリクスはサザリアナ王国の第三王女だ。
かつてはアヴァロン迷宮の攻略の助力に来るなど、戦闘能力は確かである。
千は蓮華と同じくヤマト連邦の出身者だ。
故郷での権力闘争か何かのために、サザリアナ王国周辺でもいろいろと画策していた。
ハガ王国やディルム子爵領などで好き勝手していた彼女であるが、ラスターレイン伯爵領の一件ではそうはいかなかった。
俺たちミリオンズの活躍により、ついに無力化され捕らえられたのである。
伯爵家の面々に闇魔法を掛けた彼女は、本来であれば何年もの懲役刑を与えられてもおかしくなかった。
しかし、ヤマト連邦の情報や技術をあれこれ提供する代わりに、大幅に罪が減じられた。
確か、数週間ぐらいで釈放されるとか言っていた気もするが……。
記憶があやふやだ。
「千は、まだサザリアナ王国にいたんだな」
「ええ。ラスターレイン伯爵家に陥れられましたの」
千がそう言って、恨みがましい視線をリールバッハたちに向ける。
リールバッハは肩をすくめた。
「陥れたりはしておらぬ。地下牢からは、約束通りに1か月足らずで釈放したではないか」
「それは感謝しておりますけど……。街から出てはいけないなんて、聞いておりませんでした」
「聞かぬのが悪い。釈放は釈放でも、仮釈放なのでな。王国を乱そうとした者を、そうやすやすと放免するはずがなかろう」
なるほど?
リールバッハの言う事には一理なくもない。
半ば騙された千は可哀想だが、そもそもは彼女の悪事が発端だしな。
無闇に拷問されたり、劣悪な環境に押し込められているのならばまだしも、街内に軟禁される程度であれば甘んじて受け入れるべき範囲だろう。
「ふむ。千がまだサザリアナ王国に留まっている事情は分かったが、なぜここに?」
「それはもちろん、わたくしが頼み込んだからですわ」
「頼み込んだ? なぜ?」
「わたくしとタカシさんの仲ではございませんか。結婚の祝辞を述べさせて頂きたいのですわ」
そう言うと、千は俺に近づいてきて俺の手を取った。
「お、おう……。そういえば、ミティに例の薬をくれたお礼を言っていなかったな。おかげさまで、子宝に恵まれた。ありがとう」
「うふふ。とっておきの薬でしたが、お役に立てたようで何よりですわ。それでは、タカシさんの方からわたくしの解放を頼んでくださいませんこと?」
千が妖艶な笑みを浮かべながら、上目遣いに見つめてくる。
この感じ、どこか懐かしい。
いや、千とこんなやり取りをしたことはなかったはずだ。
懐かしいと感じるのはおかしいな。
「……千の解放か。ええと……」
ラスターレイン伯爵領にて罪を犯した千の身柄については、ラスターレイン伯爵家の預かりとなる。
俺がどうこう言うような問題ではない。
だが、俺とラスターレイン伯爵家は懇意の仲だ。
要望を口にすれば一考ぐらいはしてもらえるだろう。
とはいえ、軽率にそんなことを頼むべきか……。
俺はチラリとリールバッハを見る。
彼は小さくため息をついた。
「……うむ。そろそろ解放してやろうかと思っていたのだがな。そこに、王家から連絡が来たのだ。千の身柄を王都に連れてくるようにと」
「それで、我がラスターレイン伯爵領に赴いたのだ。聞けば、ハイブリッジ騎士爵家の合同結婚式に顔を出すという。ものはついでだ。この我も、ハイブリッジ騎士爵領の視察がてらこの街にやって来たというわけだ。光栄に思うがいいぞ!」
ベアトリクスが胸を張ってそう言った。
「何かと思えば、ただの物見遊山か」
「なっ!? 貴様! 誰に向かってその口を聞いている!!」
ベアトリクスが俺の言葉に激高する。
やべ。
また口が滑った。
せっかく来てくれた第三王女に、この口の聞き方はなかったな。
彼女の剣には闘気と魔力が集まり始めている。
それをとりなしたのは、リールバッハだった。
「落ち着き給え。ベアトリクス第三王女殿下よ。冒険者上がりの新貴族の言葉に一々激高していては、王族の器に疑問が呈されるかもしれぬぞ。エルネラ陛下も、そのあたりには寛容な方であろう?」
「ぐ……、しかしだな。リールバッハ殿」
ベアトリクスがそう言う。
王族ではあるが、第三王女に過ぎないベアトリクス。
伯爵家当主であるリールバッハ。
この2人の上下関係は微妙だ。
サリエに教わった上下関係では、第三王女の方が上だった気がする。
とはいえ、ベアトリクスも無闇に身分だけを振りかざすタイプではない。
伯爵家当主として魔法や統治能力に長けているリールバッハのことは一目置いており、その意見を無下にすることはできないようだ。
「まあ、良いではないか。この街の発展具合を見給え。ハイブリッジ騎士爵は、戦闘能力だけでなく内政の才能もあるらしい。サザリアナ王国のさらなる発展のために、欠かせない存在だ」
リールバッハがそう言うと、ベアトリクスは渋々とした様子で闘気と魔力を収めた。
「ふん……。確かに、その通りであるな。ここは素直に褒めておこう。よくやっているようだな、ハイブリッジ騎士爵よ」
ベアトリクスがそう言う。
彼女から初めて褒め言葉をもらった気がする。
関係を改善するために、ここは素直に受け取っておこう。
「ははっ! お褒めいただき、ありがたき幸せにございます!!」
俺は恭しく頭を下げた。
「…………貴様が丁寧に礼を言うと、逆にバカにされている気がしてくるな……」
ベアトリクスは微妙な声色でそう言ったのだった。
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