【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

624話 ドレッドやディルム子爵の来訪

 数日が経過した。
 バルダインやナスタシアには、ハイブリッジ邸の離れに滞在してもらっている。
 彼らが訪れたことのある人族の街はゾルフ砦くらいだったそうで、なかなかに新鮮な滞在経験となっているようだ。

 合同結婚式まであと1週間ほど。
 当事者は、俺、ニム、ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテの6人。
 このうち、俺の親類はこの世界にいない。
 みんな内心では疑問に思っている様子だが、今のところ深くは突っ込んでこない。
 いずれ異世界人だと説明することもあるかもな。
 ニムは、ラーグの街内に両親と兄が在住しているので、遠路はるばる旅をしてもらう必要はない。
 残るは、ユナ、サリエ、リーゼロッテの関係者だ。

「おう、タカシ。2か月ぶりだな」

「…………元気そうで何よりだ」

 ドレッドとジークが馬車から降りつつ、そう言う。
 ユナの兄である彼らも、合同結婚式に参加するために来てくれたのだ。
 もちろん彼らの両親もいっしょである。

「久しぶり。そっちこそ元気そうだな」

 ユナは俺の転移魔法により定期的に里帰りしている。
 前回は、ドレッドの言う通り2か月ほど前だ。

 ユナの両親に、ドレッドとジーク。
 この4人には転移魔法のことを話しているので、俺の転移魔法で迎えに行っても問題はなかった。
 しかし、他にも同行者がいたため馬車で来てもらった。
 それは……。

「シトニちゃん。疲れはないか?」

「大丈夫です。ディカルさん。特にここ最近は調子がいいので」

 お互いを気遣いつつ馬車から降りてきたのは、ディカル=ディルム子爵とその妻シトニだ。
 シトニはユナの同郷者だ。
 かつて闇の瘴気に汚染されたディルム子爵がシトニを強引に手に入れようと画策し、騒動となった一件があった。
 ミリオンズの活躍もありその画策は阻止されたものの、聖魔法による浄化後に晴れて相思相愛の身となり、結婚に至ったのである。

 相変わらず仲がいい夫婦だ。
 2人とも俺の加護(微)の対象者になっているようだし、体の調子がいいのも頷ける。
 他にも、俺と関わりの深い者の多くが対象者となっている。

「……ここがドレッドさんが昔拠点にしていた街なんだ。興味深い……」

 クトナがドレッドの横に立ちながら呟く。
 彼女はシトニの妹だ。
 最近は、ドレッドやジークと共に『赤き大牙』の一員として冒険者活動を行っていると聞いている。

「おう、懐かしいな。ここで俺は強くなって、そしてタカシと出会ったんだな。あの頃のタカシはまだヒヨッコだったのに、いつの間にかBランク冒険者になって貴族になっちまうなんてよ。それに、8人もの女と結婚するとは」

「……私も早く結婚したい……」

「おう。ま、近いうちにな」

 ドレッドとクトナも、順調に進展しているようだ。
 クトナは寡黙な少女だが、ユナの情報によればドレッドとやりまくりな日々を送っているらしい。

「セバス。ディルム子爵一行を案内してさしあげろ」

「はっ。ただちに」

 俺の指示を受けて、執事長セバスが彼らをハイブリッジ邸の離れに案内する。
 合同結婚式まであと1週間ほどあるが、それまで不自由させないようにしないとな。
 俺が今後の予定に頭を悩ませていると、サリエが話しかけてきた。

「タカシさん。私の両親もそろそろ来る予定ですが」

「そうだったな。ハルク男爵のこともしっかりともてなさないと」

 ハイブリッジ騎士爵領とハルク男爵領は隣接している。
 領都から領都への移動にはそれなりの時間が掛かるものの、ハガ王国やディルム子爵領との距離感に比べると段違いに近い。

「もう少し遅めの出発でも問題はないと進言したのですが……。こちらの街の発展具合に興味があるとのことで、どうしても早めに行きたいと聞かなかったものですから」

 バルダインやディルム子爵が早めに到着しているのは、遠方の街からやって来ているからだ。
 予期せぬアクシデントに備えて余裕を持って出発し、その上で実際には特に問題が発生せず順調に到着した感じである。
 ハルク男爵の場合は移動距離が短い分、予期せぬアクシデントが発生するリスクは相対的に少ない。
 サリエの言う通り遅めの出発でもいいと思うが、街を見たいという要望があるのであれば拒否する選択肢はない。

「善政を敷いていると評判のハルク男爵に街を見られるのは緊張するな……」

 俺はそう呟く。
 ステータス操作によって得た俺の身体能力や魔法技術、加護付与スキルによって得た優秀な仲間たち、それらによって得た潤沢な資金。
 冒険者として名を上げた俺の元に集ってくれた有能な配下たち。
 さらには、現代日本のちょっとした知識チート。

 これらを活用して、ハイブリッジ騎士爵領は安定して発達し続けている。
 一般領民の忠義度も微増傾向なので、俺の独りよがりの自己満足ではないはず。
 客観的に見ても各種の施策は成功していると言っていいだろう。
 だが、それはそれとして、やはり偉大な先人に見られると思うと緊張する。

「大丈夫でしょう。父は確かに安定した統治を行っており、ネルエラ陛下からの覚えもめでたいです。しかし、ハイブリッジ騎士爵領の成長具合はそれと比較しても遜色ないはずです」

「そうかな?」

「ええ。むしろ、父もこの領地から学びたいと思っているはずですよ。それに私の見立てでは、王家からタカシさんに特別な報酬がある頃ではないかと考えています。急速に領地を発展させた者の陞爵は、過去にも前例があったはず……」

「ふむ。それは興味深い」

 陞爵。
 爵位が上がることだ。
 騎士爵の上は、男爵。
 さらにその上は、子爵だ。
 幅広い人々から忠義度を稼ぐために、社会的地位は高いほどいい。
 冒険者ランクもいずれAに上げたいと思っている。
 そんなことを考えていたら、街の東門の方からヒナがやって来た。

「お館様。ハルク男爵様一行が到着されたようです!」

「了解した。丁重にこちらまでお通ししてくれ。こちらも準備を進めておく」

「かしこまりました!」

 そう言って、ヒナはすぐに戻って行った。
 さて。
 引き続きしっかりと応対していかないとな。

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