【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

609話 土下座なんぞされても、何の意味もない

 数日が経過した。
 俺はリビングでのんびりしている。
 ミッションを達成して加護(微)を開放したことだし、ひとまず喫緊の課題はクリアしたと言っていい。

「それにしても……。みんな、順調にお腹が膨らんできているよなぁ~」

 ミティ、アイリス、モニカが妊娠中だ。
 それぞれ、臨月が近いようである。
 そろそろ出産予定日が近づいてきていて、皆で楽しみにしているところなのだ。

「もうすぐですね! ふふふ。私とタカシ様の愛の結晶です……!」

 ミティが幸せそうにお腹をさすっている。

「そうだねー。今からとても楽しみだよ。立派な神官に育てるぞっ」

 アイリスが嬉しそうに言った。

「私はどう育てようかなあ。料理人か、武闘家か……。雷魔法に適正があったら、魔法使いになってもらうのもいいかもねぇ~」

 モニカが楽しげに話す。
 少し気になるのは、ステータス操作によって得たスキルの才能が子どもに継承されるかという点だ。
 チートで得た力は遺伝子レベルでは影響がないかもしれないし、あるかもしれない。

 ま、いずれにせよ、モニカの兎獣人としての特性はある程度引き継がれるだろうが。
 それに、才能の有無に関係なく子どもは愛すべきものだ。
 愛しい妻たちとの大切な家族だからな。
 俺も早く赤ちゃんに会いたくなってきた。

「待ち切れないな……。あと2か月ほどだったか?」

 彼女たちが妊娠したと思われるのは、昨年の10月中旬から下旬あたりだと思われる。
 アヴァロン迷宮の攻略やファイヤードラゴン戦が片付き、ルクアージュでのんびりしているときだ。
 千からもらった『妊娠する確率を上げる秘薬』を使い、それぞれと毎晩のように楽しんだのだ。

 そしてラーグの街に帰還し、ハイブリッジ杯を開催したのが12月の下旬。
 妊娠して2か月ほどで初期症状が表れた形だ。
 それからユナ、マリア、サリエの親御さんへ結婚の挨拶回りを行っている内に3月になった。
 さらにレイン、ニルス、ハンナ、クリスティと親交を深めていき、今が6月の下旬である。

「そうだねー。ナックさんの見立てでは、8月の下旬くらいになるらしいけど」

 アイリスが答えてくれた。
 やはり、あと2か月ほどだ。
 妊娠したと思われる時期から、ちょうど10か月ほど。
 このあたりは地球の感覚と同じらしい。

「長いようで短い時間だったな……」

 俺もいよいよ父親となるのだ。
 俺が感慨に浸っていたその時、リビングのドアがノックされた。
 コンコン!

「おう。入ってくれ」

 俺はそう答える。
 屋敷内とはいえ、ここはリビングだ。
 さほど機密性の高い場所ではない。
 ミリオンズのみんなは自由に出入りしている。

 また、ハイブリッジ家の面々に対しても特に出入りを制限はしていない。
 キリヤ、トリスタ、クリスティ、花あたりは、遠慮なく好き勝手に出入りしている。
 レイン、リン、雪あたりは、やや遠慮がちな雰囲気で出入りするが、わざわざノックはしない。
 今回のノックの主は……。

「失礼します。お館様。またあの方がお見えになっておりますが……」

 執事のセバスだ。
 彼は普段から非常に丁寧な仕事をしている。

「またアランが来たのか……」

 俺はリビングの窓から、正門を見る。
 そこでは、1人の男が土下座をしていた。
 『紅蓮の刃』のリーダー、アランだ。

「ハイブリッジ騎士爵様! ……いや、我が神タカシ様よ! どうかお許しを!!」

 アランは、俺のいる本館に向かって頭を下げている。

「あの方ですか。確か、タカシ様に大変失礼なことをしたとか」

「そうだね。私もその場にいたけど、すごかったよ。水を頭からぶっかけたりとかさ」

 ミティの言葉に、モニカが同意して言う。

「まあ、なかなかのイキりっぷりだったな。しかし、Dランクに上がったばかりで虚勢を張ったんだろう。まだ若い奴らだからな」

 俺は苦笑しながら言った。

「それで、どう致しましょうか?」

 セバスがそう問い掛けてくる。

「どうしたも何もない。俺の答えは1つだ。『土下座なんぞされても、何の意味もない。さっさと帰れ』。そう言っておいてくれ」

 そもそも、俺はアランに謝って欲しいなどと思っていない。
 クリスティの話では、意外にいいところもある奴だ。
 それに、あいつも加護(微)の対象者になっていた。
 もともとは顔も知らないハイブリッジ騎士爵に尊敬の念を抱いていたようだが、そこに谷底から救出してやった恩が加わったような形だ。
 出会いは最悪だったとはいえ、今や俺に対して忠義を感じている者に、過度な謝罪を求めるつもりはない。

「かしこまりました。『土下座なんぞされても、何の意味もない。さっさと帰れ』でございますな。しかと伝えて参ります」

 セバスは恭しく一礼すると、颯爽と去って行った。

「「「…………」」」

 ミティ、アイリス、モニカが微妙な視線を俺に向ける。

「え? 何か変だったか?」

「……えっと。はい、その……」

「タカシって、ときどきすごく悪人っぽいよねー」

「ちょっとアラン君が可哀想だけど……。ま、これぐらいは罰として受けても仕方がないかな?」

 ミティ、アイリス、モニカが代わる代わるに口を開く。
 何の話だろう?
 俺なんかに土下座している暇があったら、ゆっくり休んだり、冒険者活動をしたりする方が有意義だと思うのだが。

 そんなことを考えている間に、セバスが正門のところへ行き、アランに言葉を伝えてくれたようだ。
 アランは悲壮な顔で項垂れた後、トボトボと帰っていった。
 その後ろ姿からは、深い絶望のオーラを感じる。

 何だろう?
 何か、重大な勘違いをされている気がしないでもない。
 明日以降にまた来たら、今度は直接会って話をしておくか。

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