【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
586話 ニルスと兄の模擬試合
さらに数日が経過した。
ハイブリッジ家で研究された最新の農業改革について、この村に適用できる部分はどんどん取り入れていった。
ニルスとハンナの手伝いにより、畑の整備もひと通り完了した。
同行していたユナ、蓮華、トミーや雪月花たちは、基本的にはゆっくりしている。
別にサボっているわけではなく、もともと道中の護衛としてのみ同行していた。
村に着いてからは、しなければならない仕事は特にない。
依頼主のタカシとしても、遠方の村への観光も兼ねた護衛依頼をしている認識である。
彼女たちがゆっくりしていることにまったく問題はない。
とはいえ、トミーや月などは、暇つぶしも兼ねて近隣の魔物を狩っている様子ではあったが。
ここらの魔物は瘴気に汚染されており、食用には適さない。
狩っても村の食料事情が直接的に改善するわけではない。
ただ、近隣の安全性が少しでも向上することは、村人たちにとってもありがたいことであった。
「さて……。畑の整備はひと段落したし、今日は何をするか……」
ニルスがそう呟く。
そろそろ帰ってもいいのだが、彼らの主から許可された滞在日数まではもう少し残っている。
なので、まだこの村に居座るつもりなのだが……。
「ニルス。今日は、約束していた通り稽古を付けてやろう。俺からのせめてものお礼だ」
「そうだな……。じゃあ、お願いするよ。兄さん」
ニルスがそう返答する。
彼の兄は、この村でもトップクラスの戦闘能力の持ち主だ。
ニルスは兄に格闘術を教えてもらうのが好きであり、昔はよく一緒に鍛錬をしていた。
「…………」
ニルスと兄のやり取りを見て、ハンナは少し複雑な表情を浮かべていた。
同じ村で育ったハンナは、もちろんかつてのニルスたちの鍛錬もよく見ていた。
ニルスの実力は、彼の兄の足元にも及ばない。
稽古をしてもらうのはいいのだが、あまりコテンパンにやられる姿を見せるのはマズいだろう。
ハイブリッジ騎士爵家の名に傷が付くかもしれない。
まあ、ニルスはそもそも戦闘系の能力を買われて重用されているわけではないので、別に気にすることはないのかもしれないが……。
ハンナは複雑な気持ちを抱えつつも、ニルスに口出しすることはなかった。
せめて、何か問題が発生したら適切に対処しようと思い、2人に付いていくことにした。
「さあ。場所はここでいいだろう。昔みたいに、好きにかかってくるといい」
「分かった」
ニルスが返事をする。
そして、ニルスが構えを取った。
「では……、行くよっ!」
そう言った直後、ニルスが動いた。
「むっ!?」
兄が驚く。
一瞬のうちに、ニルスが間合いを詰めてきたからだ。
こんなに素早かっただろうか?
兄が疑問に思っている間にも、ニルスは動いている。
「ハアッ!!」
ニルスが兄に向かって拳を突き出す。
兄はそれに対応しきれていない。
「ぐふっ!」
ニルスの一撃を食らい、兄は吹き飛んだ。
彼が地面に仰向けに倒れ込む。
「え?」
ニルスが呆然とする。
目の前の光景が予想外だったのだ。
「ニ、ニルス……。いつの間にこれほどの力を……。今までは手を抜いていたのか?」
兄が起き上がりながら言う。
かつてのニルスは、決して弱いわけではなかった。
だが、自分とニルスの実力差はかなりあったはずだ。
それが、こうも簡単に負けてしまうとは。
「いや、もちろん手を抜いていたわけではないけど……」
ニルスは困惑気味だ。
昔は手も足も出なかった兄が、簡単に吹き飛んでいった。
「(体の調子がいいとは思っていたけど……。まさか、これほどとは……)」
今までは、確かな好調を感じつつも、半分ほどは気のせいだと思うようにしていた。
ハイブリッジ家という素晴らしい環境で働けるやりがいや、ハンナと結婚できたことによる多幸感から来る、勘違いだと思っていたのだ。
だが、かつては手も足も出なかった相手にこうして勝利を収めた以上、自身の好調について無視することはできない。
おそらく、自分が思っている以上に強くなっているのだろう。
「「「きゃあ~! すてき~!!」」」
黄色い歓声が上がる。
何事かと思いニルスと兄がそちらを見ると、村の若い女性たちが興奮した様子を見せていた。
いつの間にか野次馬として集まっていたようだ。
「ニルスさんって、あんなに強いんだ……」
「格好良いよね……。昔は平凡だと思っていたけど……」
「私、狙っちゃおうかな……。奴隷身分とはいえ、貴族様の配下なら優良物件だよね?」
彼女たちがそんなことを言っている。
ニルスの耳には届いているが、別にどうでもよかった。
彼が女性たちに目を向けることはなかった。
ニルスにとって大切なことは、ハンナを幸せにすること、ハイブリッジ家に尽くすこと、そして自分の生まれ故郷であるこの村の窮状を救うことだ。
3つ目については、当面の窮状は脱しつつある。
あとは、1つ目と2つ目の達成に向けて邁進するのみだ。
だが、ニルスに対して女性陣が色目を使っていることを許さない者がいた。
ハンナだ。
「ちょっと待った! ニルスは渡さないわよ!!」
彼女はそう言いつつ、彼女たちの前に立つ。
「ハンナちゃんか」
「ニルスさんと幼なじみなのは知っているけど……」
「それだけで大きい顔をしないでよ」
「平凡なあなたは、今のニルスさんに釣り合わないわよ。おとなしく身を引きなさい!」
女性陣が好き勝手なことを言う。
貴族のお気に入りとなっていること、畑の整備などで高い身体能力を見せてきたこと、村でもトップクラスの実力を持つ男を一蹴したことなどにより、彼女たちのニルスへの評価はうなぎ登りだ。
ただ、彼は近々この村を離れ貴族の元へ戻ってしまうという。
残り少ないチャンスをものにするべく、必死なのだ。
「言っても分からないようね……。なら、こっちにも考えがあるわ!」
ハンナがそう言う。
彼女の考えとは……。
ハイブリッジ家で研究された最新の農業改革について、この村に適用できる部分はどんどん取り入れていった。
ニルスとハンナの手伝いにより、畑の整備もひと通り完了した。
同行していたユナ、蓮華、トミーや雪月花たちは、基本的にはゆっくりしている。
別にサボっているわけではなく、もともと道中の護衛としてのみ同行していた。
村に着いてからは、しなければならない仕事は特にない。
依頼主のタカシとしても、遠方の村への観光も兼ねた護衛依頼をしている認識である。
彼女たちがゆっくりしていることにまったく問題はない。
とはいえ、トミーや月などは、暇つぶしも兼ねて近隣の魔物を狩っている様子ではあったが。
ここらの魔物は瘴気に汚染されており、食用には適さない。
狩っても村の食料事情が直接的に改善するわけではない。
ただ、近隣の安全性が少しでも向上することは、村人たちにとってもありがたいことであった。
「さて……。畑の整備はひと段落したし、今日は何をするか……」
ニルスがそう呟く。
そろそろ帰ってもいいのだが、彼らの主から許可された滞在日数まではもう少し残っている。
なので、まだこの村に居座るつもりなのだが……。
「ニルス。今日は、約束していた通り稽古を付けてやろう。俺からのせめてものお礼だ」
「そうだな……。じゃあ、お願いするよ。兄さん」
ニルスがそう返答する。
彼の兄は、この村でもトップクラスの戦闘能力の持ち主だ。
ニルスは兄に格闘術を教えてもらうのが好きであり、昔はよく一緒に鍛錬をしていた。
「…………」
ニルスと兄のやり取りを見て、ハンナは少し複雑な表情を浮かべていた。
同じ村で育ったハンナは、もちろんかつてのニルスたちの鍛錬もよく見ていた。
ニルスの実力は、彼の兄の足元にも及ばない。
稽古をしてもらうのはいいのだが、あまりコテンパンにやられる姿を見せるのはマズいだろう。
ハイブリッジ騎士爵家の名に傷が付くかもしれない。
まあ、ニルスはそもそも戦闘系の能力を買われて重用されているわけではないので、別に気にすることはないのかもしれないが……。
ハンナは複雑な気持ちを抱えつつも、ニルスに口出しすることはなかった。
せめて、何か問題が発生したら適切に対処しようと思い、2人に付いていくことにした。
「さあ。場所はここでいいだろう。昔みたいに、好きにかかってくるといい」
「分かった」
ニルスが返事をする。
そして、ニルスが構えを取った。
「では……、行くよっ!」
そう言った直後、ニルスが動いた。
「むっ!?」
兄が驚く。
一瞬のうちに、ニルスが間合いを詰めてきたからだ。
こんなに素早かっただろうか?
兄が疑問に思っている間にも、ニルスは動いている。
「ハアッ!!」
ニルスが兄に向かって拳を突き出す。
兄はそれに対応しきれていない。
「ぐふっ!」
ニルスの一撃を食らい、兄は吹き飛んだ。
彼が地面に仰向けに倒れ込む。
「え?」
ニルスが呆然とする。
目の前の光景が予想外だったのだ。
「ニ、ニルス……。いつの間にこれほどの力を……。今までは手を抜いていたのか?」
兄が起き上がりながら言う。
かつてのニルスは、決して弱いわけではなかった。
だが、自分とニルスの実力差はかなりあったはずだ。
それが、こうも簡単に負けてしまうとは。
「いや、もちろん手を抜いていたわけではないけど……」
ニルスは困惑気味だ。
昔は手も足も出なかった兄が、簡単に吹き飛んでいった。
「(体の調子がいいとは思っていたけど……。まさか、これほどとは……)」
今までは、確かな好調を感じつつも、半分ほどは気のせいだと思うようにしていた。
ハイブリッジ家という素晴らしい環境で働けるやりがいや、ハンナと結婚できたことによる多幸感から来る、勘違いだと思っていたのだ。
だが、かつては手も足も出なかった相手にこうして勝利を収めた以上、自身の好調について無視することはできない。
おそらく、自分が思っている以上に強くなっているのだろう。
「「「きゃあ~! すてき~!!」」」
黄色い歓声が上がる。
何事かと思いニルスと兄がそちらを見ると、村の若い女性たちが興奮した様子を見せていた。
いつの間にか野次馬として集まっていたようだ。
「ニルスさんって、あんなに強いんだ……」
「格好良いよね……。昔は平凡だと思っていたけど……」
「私、狙っちゃおうかな……。奴隷身分とはいえ、貴族様の配下なら優良物件だよね?」
彼女たちがそんなことを言っている。
ニルスの耳には届いているが、別にどうでもよかった。
彼が女性たちに目を向けることはなかった。
ニルスにとって大切なことは、ハンナを幸せにすること、ハイブリッジ家に尽くすこと、そして自分の生まれ故郷であるこの村の窮状を救うことだ。
3つ目については、当面の窮状は脱しつつある。
あとは、1つ目と2つ目の達成に向けて邁進するのみだ。
だが、ニルスに対して女性陣が色目を使っていることを許さない者がいた。
ハンナだ。
「ちょっと待った! ニルスは渡さないわよ!!」
彼女はそう言いつつ、彼女たちの前に立つ。
「ハンナちゃんか」
「ニルスさんと幼なじみなのは知っているけど……」
「それだけで大きい顔をしないでよ」
「平凡なあなたは、今のニルスさんに釣り合わないわよ。おとなしく身を引きなさい!」
女性陣が好き勝手なことを言う。
貴族のお気に入りとなっていること、畑の整備などで高い身体能力を見せてきたこと、村でもトップクラスの実力を持つ男を一蹴したことなどにより、彼女たちのニルスへの評価はうなぎ登りだ。
ただ、彼は近々この村を離れ貴族の元へ戻ってしまうという。
残り少ないチャンスをものにするべく、必死なのだ。
「言っても分からないようね……。なら、こっちにも考えがあるわ!」
ハンナがそう言う。
彼女の考えとは……。
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